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魔王の娘 と 休戦締約と同盟条約
魔王の娘 と 休戦締約と同盟条約 22
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──ああ、そうか。
そもそもコノ者達は“結界の中では魔族は何も出来やしないと、思い込んでいる”んだった。
そう…、そう信じて疑っていないのだ。
そう信じて疑っていないのだった。
ソレが……、結界の中、結界の力が強く響く場所であっても、“さしたる影響を受けない者が居る”、ソノ存在を、まだ彼らも、人間というのは誰も知らないのだった。
「うっふふふ」
「なっ、なによ!」
エディリーンはついにこらえきれず笑ってしまった。
口元を優雅に押えるも、手を離して紅い双眸でゆらりと強気なグループを見たら、ソノ者達は萎縮した。
自身は魔素が強く、結界の中でも本当は少しの魔術や召喚は使える。
でも黙っていた。
「話すようなことではありませんわね」そう想っていたから。
「席に着け!
ホームルームを開始する!」
そんな時だった。
扉を開けて担任の男の先生が入って来た。
強気だったグループはソノ瞬間散り散りになって自分達の安全区域に逃げて行った。
担任の先生がエディーリンを睨む。
エディリーンは優雅に微笑んで見せた。
そう。
そもそもコノ者達は“結界の中では魔族は何も出来やしないと、思い込んでいる”んだった。
そう…、そう信じて疑っていないのだ。
そう信じて疑っていないのだった。
ソレが……、結界の中、結界の力が強く響く場所であっても、“さしたる影響を受けない者が居る”、ソノ存在を、まだ彼らも、人間というのは誰も知らないのだった。
エディリーンは魔素が強く、結界の中でも本当は少しの魔術や召喚は使える。
でも黙っていた。
「話すようなことではありませんわね」そう想っていたから。
でもソレをそもそも、人間という種族は知らなかった。
なんと滑稽なことだろう。
エディリーンが“ソノ気”になれば、コノ国一つ陥落させることくらい容易なのだった。
ソノ時だった。
机に座していたディプスクロスが「姫様」と呼んだ。
ソコでエディーリンの思考は正常に戻る。
──いけない、今、私は何を考えていた…?
私は、御父様の……、魔族達全員の願いとなった、人間と魔族の休戦締約と同盟条約実現の為に、コノ人間界にやってきたのだ。
御父様も仰っていたじゃない、全てを許せる寛大な心を持て、と。
私は今、……何を考えていた?
エディリーンは自身の心の中で絶句し、自身の、自身について深く落胆した。
──私は……
*
紅葉舞う美しい中庭で、エディリーンが昼食のパンを持ったまま、舞う紅葉をただただ見つめる。
「そう…、そんなことがありましたのね」
時は昼休み、食事の時間だった。
エディリーンの隣にはレイラが座しており、エディリーンは今朝起きたことと自身がしようとしたことの全てを、信じれる者に話した。
ディプスクロスがエディーリンのパンをつまみ、口に頬張る。
「エディー、│主《しゅ》は望んでいます。
コノ大陸──リ・テラの…、魔族と人間の平和を。
でも…」
レイラはそう言って、食堂の方へと目をやった。
「私達シスター科と違って、普通科の方々は主の御声を聴くことが出来ない。
主が心から魔族との平和を望んでいても、……彼らにとっては、まだ…」
エディリーンは視線を地面へと落とした。
レイラがエディーリンの背中に手を回す。
「とても、お辛い想いをされましたね、エディリーン」
レイラの言葉に、エディリーンはレイラの肩に頭を預けた。
「私は、とても情けないわ…。
人間と魔族の休戦締約と同盟条約、ソノ実現の為に送り出されたのに……、心の中で、争いのことを考えてしまった。
なんて、……情けない……」
今は兵士達はエディーリンの側ではなく、レイラの鶴の一声で少し離れたところに居た。
ソレにより、エディリーンのこの小声はレイラとディプスクロスにしか届くことがなかった。
風が靡く。
エディリーンの黒い髪とレイラの淡い金髪を風は靡いた。
「でも」
エディリーンは一度目を閉じて、そして開いて、レイラの肩から頭を起こし、立ち上がってレイラを見下ろした。
「落ち込んでいる場合ではありませんわね」
「ええ」
レイラがそうエディリーンの気持ちを言い、エディリーンが強く頷いた。
「もう二度と、同じことは考えない。
今考えるべきは、どう人間達との溝を埋めるかであって…──」
「シスター!」
そんな時だった。
食堂の方から少女達数人、ソレも今朝絡んで来た者達だった。
「大丈夫ですか⁈
お可哀想に!
魔族に虐められていましたのね!
私達、全て見ていましたわ!」
「「え?」」
レイラとエディリーンが同時に言うのと、「ねぇ!兵士様!」と少女が言うのは同時で、兵士はあろうことか、「ああ、そうだな、今まさにソノ魔族がシスターに」とありもしないことを言い出し、レイラとエディリーンは兵士と少女達を見やる。
紅葉舞う美しい中庭では、何事だ?と言わんばかりに他のシスター科の生徒達がこちらを見始めていた。
「いえ、わたくしは…!」
レイラが違うと言おうとすると、「だったら、これは正当防衛だよなぁあ!」という声と共に、ブウン!と何かを振る音が聴こえ、エディリーンとレイラはソチラを見やった。
食堂の方から普通科の生徒達がぞろぞろと出てきて、中には金属棒を持ったガラの悪い男達が先頭に立ち、気の弱そうな男子達も何人か金属棒を持っていた。
「尊き神の御声を聴けるシスターを虐めるなんて、許されねぇなあ?
コイツぁ、ちょっと、いや死ぬまでいたぶらねぇとな!」
ガラの悪い普通科の生徒がそう言い、レイラが立ち上がるも、エディリーンが手で制した。
「エディー!」
そもそもコノ者達は“結界の中では魔族は何も出来やしないと、思い込んでいる”んだった。
そう…、そう信じて疑っていないのだ。
そう信じて疑っていないのだった。
ソレが……、結界の中、結界の力が強く響く場所であっても、“さしたる影響を受けない者が居る”、ソノ存在を、まだ彼らも、人間というのは誰も知らないのだった。
「うっふふふ」
「なっ、なによ!」
エディリーンはついにこらえきれず笑ってしまった。
口元を優雅に押えるも、手を離して紅い双眸でゆらりと強気なグループを見たら、ソノ者達は萎縮した。
自身は魔素が強く、結界の中でも本当は少しの魔術や召喚は使える。
でも黙っていた。
「話すようなことではありませんわね」そう想っていたから。
「席に着け!
ホームルームを開始する!」
そんな時だった。
扉を開けて担任の男の先生が入って来た。
強気だったグループはソノ瞬間散り散りになって自分達の安全区域に逃げて行った。
担任の先生がエディーリンを睨む。
エディリーンは優雅に微笑んで見せた。
そう。
そもそもコノ者達は“結界の中では魔族は何も出来やしないと、思い込んでいる”んだった。
そう…、そう信じて疑っていないのだ。
そう信じて疑っていないのだった。
ソレが……、結界の中、結界の力が強く響く場所であっても、“さしたる影響を受けない者が居る”、ソノ存在を、まだ彼らも、人間というのは誰も知らないのだった。
エディリーンは魔素が強く、結界の中でも本当は少しの魔術や召喚は使える。
でも黙っていた。
「話すようなことではありませんわね」そう想っていたから。
でもソレをそもそも、人間という種族は知らなかった。
なんと滑稽なことだろう。
エディリーンが“ソノ気”になれば、コノ国一つ陥落させることくらい容易なのだった。
ソノ時だった。
机に座していたディプスクロスが「姫様」と呼んだ。
ソコでエディーリンの思考は正常に戻る。
──いけない、今、私は何を考えていた…?
私は、御父様の……、魔族達全員の願いとなった、人間と魔族の休戦締約と同盟条約実現の為に、コノ人間界にやってきたのだ。
御父様も仰っていたじゃない、全てを許せる寛大な心を持て、と。
私は今、……何を考えていた?
エディリーンは自身の心の中で絶句し、自身の、自身について深く落胆した。
──私は……
*
紅葉舞う美しい中庭で、エディリーンが昼食のパンを持ったまま、舞う紅葉をただただ見つめる。
「そう…、そんなことがありましたのね」
時は昼休み、食事の時間だった。
エディリーンの隣にはレイラが座しており、エディリーンは今朝起きたことと自身がしようとしたことの全てを、信じれる者に話した。
ディプスクロスがエディーリンのパンをつまみ、口に頬張る。
「エディー、│主《しゅ》は望んでいます。
コノ大陸──リ・テラの…、魔族と人間の平和を。
でも…」
レイラはそう言って、食堂の方へと目をやった。
「私達シスター科と違って、普通科の方々は主の御声を聴くことが出来ない。
主が心から魔族との平和を望んでいても、……彼らにとっては、まだ…」
エディリーンは視線を地面へと落とした。
レイラがエディーリンの背中に手を回す。
「とても、お辛い想いをされましたね、エディリーン」
レイラの言葉に、エディリーンはレイラの肩に頭を預けた。
「私は、とても情けないわ…。
人間と魔族の休戦締約と同盟条約、ソノ実現の為に送り出されたのに……、心の中で、争いのことを考えてしまった。
なんて、……情けない……」
今は兵士達はエディーリンの側ではなく、レイラの鶴の一声で少し離れたところに居た。
ソレにより、エディリーンのこの小声はレイラとディプスクロスにしか届くことがなかった。
風が靡く。
エディリーンの黒い髪とレイラの淡い金髪を風は靡いた。
「でも」
エディリーンは一度目を閉じて、そして開いて、レイラの肩から頭を起こし、立ち上がってレイラを見下ろした。
「落ち込んでいる場合ではありませんわね」
「ええ」
レイラがそうエディリーンの気持ちを言い、エディリーンが強く頷いた。
「もう二度と、同じことは考えない。
今考えるべきは、どう人間達との溝を埋めるかであって…──」
「シスター!」
そんな時だった。
食堂の方から少女達数人、ソレも今朝絡んで来た者達だった。
「大丈夫ですか⁈
お可哀想に!
魔族に虐められていましたのね!
私達、全て見ていましたわ!」
「「え?」」
レイラとエディリーンが同時に言うのと、「ねぇ!兵士様!」と少女が言うのは同時で、兵士はあろうことか、「ああ、そうだな、今まさにソノ魔族がシスターに」とありもしないことを言い出し、レイラとエディリーンは兵士と少女達を見やる。
紅葉舞う美しい中庭では、何事だ?と言わんばかりに他のシスター科の生徒達がこちらを見始めていた。
「いえ、わたくしは…!」
レイラが違うと言おうとすると、「だったら、これは正当防衛だよなぁあ!」という声と共に、ブウン!と何かを振る音が聴こえ、エディリーンとレイラはソチラを見やった。
食堂の方から普通科の生徒達がぞろぞろと出てきて、中には金属棒を持ったガラの悪い男達が先頭に立ち、気の弱そうな男子達も何人か金属棒を持っていた。
「尊き神の御声を聴けるシスターを虐めるなんて、許されねぇなあ?
コイツぁ、ちょっと、いや死ぬまでいたぶらねぇとな!」
ガラの悪い普通科の生徒がそう言い、レイラが立ち上がるも、エディリーンが手で制した。
「エディー!」
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