聖剣使いの乙女は実は魔王の娘だった

桐夜 白

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魔王の娘 と 休戦締約と同盟条約

魔王の娘 と 休戦締約と同盟条約 8

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 *
 
──…人は、どうして争うのでしょう?
魔族は、どうして争うのでしょう?
民は、どうして争うのでしょう?

私は父から預かったコノ書状を渡して、青い空の棚引く白い揺蕩う雲を、外を眺めて想う。

人は、魔族は、民は、いつから争い、そしてどうして憎み合うのでしょうか?
互いに神々を崇め、同じ大地に住みながら、どうして今日も争うのでしょうか?

私は知りたい。
誰もが争わない術(すべ)を。
そして実現したい。
コノ父から受け取った書状を、現実にすべく。

私は父から預かったコノ書状を渡して、外を眺めて想う。

世界が、平和でありますように、と──

私は心の中で歌った。
幼き頃より、伝えられてきた歌を…──。

 *
 
 
「ココは?」

「聖エンテイラー学園です。
人間界の結界の中で、特に結界が強いエンテイラー国いちの、“対魔族学園”です。
…貴女にとっては牢獄ですね。
私達は貴女の見張り役としてつけられた兵士です。
時間制で交代しますが、見張り役の兵士は誰も貴女を信用していないし、何か在れば我々は貴女を取り押さえます」

「ふーん」

「さ、アノ部屋でコノ服に着替えてください。
ソノ赤いドレスはアチラの女性に渡してください。
寮長です。
貴女の部屋に、服は置いてきます。
荷物の中には茶葉と筆記具しか無かったので、特に害はないとみなしてそのまま持っていてもらいます」

「いななきが聴こえるけど、アレ、ペルガルガじゃない!
あんなところで着替えろって?」

「ペルガルガ?」

「カアー!姫様!人間界と魔族の国では言語違う!
ペルガルガは魔族語で、人間界では“馬小屋”って呼ぶ!」

「あ、そっか、言語違うんだっけ。
助かるわぁ~!
ディプ!
ありがとう!通訳してくれてるみたい!」

「なんだ、馬小屋の魔族語か。
ほらとっとと行け!」
 
 
 
大きな城のような白い建物に濃い緑の旗や幕が至るところに掲げられ、ソレら全てに共通する紋が入っていた。
ソレを見上げてエディーリンが問うと、見張り役だという兵士が“最も結界が強い場所で対魔族学園”だと教えてくれた。
嫌味か?
 
 
エディーリンは口に出さないまま返事をすると、槍で示された木製の建物を見る。
側にはプペラ(地球でいう眼鏡のこと)をかけた細くも威厳のある歳を重ねた厳しそうな女性が立っていた。
寮長らしい。
つまりココは寮制度らしい。
ということは許しが無いと出られないわけだ。
まさに牢獄ね。
 
 
エディーリンが馬のいななきに気づき、馬小屋じゃない、と言うと見張り役の兵士が疑問形で復唱した。
ソレにディプスクロスが翻訳してくれて、エディーリンは魔族と人間では言語が違うことを想い出した。
今ココにディプスクロスが居ることに心から彼女は感謝した。
本当に優秀な子だ。
 
 
エディーリンはディプスクロスに頬ずりしてお礼を言うと、見張り役の兵士に背中を強く押された。
まるで囚人を牢に入れるような態度だ。
少し腹が立ったがココは落ち着くとしよう。

彼女は馬小屋に入ると、渡された服に着替える。
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