『ショート怪談』訪れるもの

窓辺の猫

「最近、うちの猫が夜中に騒がしいんだよなぁ。一時頃になると窓際で必ず唸ってるんだ。何かあるのかな？」

そんな疑問を抱えながら、私は夜の寝室に足を運ぶことにした。いつものように猫は窓際に座っていた。月明かりが差し込む中、猫の目が怪しげに輝いているように見えた。

「どうしたんだ、お前。なにか見えてるのか？」

私が声をかけると、猫は不安げな鳴き声を上げた。その瞳には、恐怖と緊張が交差しているように見えた。

「ねえ、何かいるのか？」

私が問いかけると、突然猫は身を起こし、窓の方に向かって飛びかかった。その瞬間、窓がガラスを叩く音が響き渡った。

「ガチャッ！」

私は驚き、慌てて窓を開けて外を見た。しかし、何も見えなかった。ただ、外の闇がじわりと寒気を運んでくるような感覚があった。

「なんだろう、これは…」

その夜から、猫が窓際で唸ることはますます増えていった。私は何度も窓の外を確認したが、何も見つからない。しかし、猫の目には明らかな恐怖が宿っていた。

ある晩、私は友人を招いて猫の様子を見せた。友人もまた、猫の様子に驚きを隠せなかった。

「なんだか、この部屋には何かいるような気配がするね。」

友人の言葉に私は不安を感じたが、同時に興味も湧いてきた。果たして、この部屋には何かしらの存在があるのだろうか。

翌日、私は古い写真や文書を調べることにした。この家には昔から何かがあったのかもしれないと思ったからだ。

すると、写真アルバムの中に一枚の古びた写真があった。それは、この家の建てられる以前の景色だった。

「これは…」

写真には、この家のあった場所に昔からある森が写っていた。しかし、その森は不気味な雰囲気を醸し出しているように見えた。

そこには、枯れた木々や薄汚れた道が写っていた。何かが潜んでいるような、そんな予感が私の胸を襲った。

そして、私はあることに気づいた。写真の中には、窓際に座る私の猫の姿が写っていたのだ。その猫は、何かを見つめているかのように写っていた。

「もしかして、この写真と猫の様子には何か関係があるのかもしれない…」

私は思い切って、猫と一緒にその森に足を踏み入れることにした。

森の中は薄暗く、足元には落ち葉や枯れ枝が散乱していた。不気味な沈黙に包まれる中、私は猫に従って進んでいった。

すると、突然猫が立ち止まり、背筋を伸ばした。その目が何かを見つけたかのように輝いている。

「ねえ、どうしたんだ？」

私が声をかけると、猫は一瞬私を見つめた後、一気に全速力で逃げ出した。

その瞬間、私は何かの存在を感じた。不気味な気配が私を包み込んでいく。そして、私の背後から聞こえる音がした。

「コツコツコツ…」

私は身を振り返ると、そこには人の形をした影が立っていた。

「誰…誰だ！」

私が叫ぶと、影はにやりと笑いながら近づいてきた。

「お前が私の家を奪ったな…」

その言葉と共に、影は私に襲いかかってきた。私は必死に逃げ回りながら、助けを求める叫び声を上げた。

しかし、誰も私の声には気付かなかった。

影の手が私の体に触れる瞬間、私は恐怖に震えながら意識を失っていった。

それから数日後、私の家で私の姿のない猫が見つかった。周りには血の匂いが漂っていた。

「あいつ…何をしたんだ？」

友人が呟く。私はただただ、恐怖に震える猫を見つめながら、自分の行動の結末を後悔した。

「何か…何かがあの家に潜んでいたんだ…」