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謎の扉
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私は部屋の片付けをしていた。仕事の都合で引越さなければならなくなったのだ。
地方に1年間の出張である。独り身だからと無茶な要求をしてくるものだ。
引っ越しの荷物をダンボールに詰めている最中、棚の後ろにひとつの扉があることに気づいた。
驚きとともに不思議な感覚が広がり、興味を抱いた。この賃貸アパートに2年以上住んでいるはずなのに、今まで全く気づかなかった。
というか引っ越してきた時には存在しなかったはずだ。
間取り的に1Kの部屋で借りたのだからもう一部屋は無かったはずだ。なんなのだこれは?
扉は古びた木製で、錆びた金具で取り付けられている。周りには埃が積もっており、何年も使われていないような様子だった。私は不思議な感じが募りながらも、好奇心が抑えられず、扉の向こうに何があるのかを確かめたくなった。
ゆっくりと扉を開けると、そこには別の部屋が広がっていた。8畳ほどの自分の部屋より広い一室だ。
その部屋は薄暗い光が微かに差し込んでいるだけで埃っぽい。
壁にはカビが生え、床板は軋むし、ひどく荒れ果てている様子が伺えた。
私は少し躊躇いながらも、その部屋に足を踏み入れた。
おかしい。
静かすぎる。
まるで綿で耳を塞がれたような、全ての音が遠く感じるような不気味な感覚。
どこか嫌な予感がしたが、好奇心が私を突き動かしていた。
部屋の中には古い家具や本が散乱しており、何かしらの生活がされていた形跡があるようだった。本は学術書のような分厚いものから絵本で見た事のある薄く大きなものが乱雑に落ちている。
拾ってみようかとも思ったが、手を伸ばした瞬間から全身に鳥肌がたったのでやめておいた。
しかし、誰かが生活していたにしろ、いつまで続いていたのか、なぜこの部屋にいたのか、私には分からなかった。
奥の方を確認してみると、ひとつの箱が置かれていた。私は箱を開けると、中には古い写真が詰まっているのを見つけた。写真には幼い子供たちや家族の姿が写っており、微かな笑顔が浮かんでいた。
しかし、写真を見ているうちに、気づいてしまった。
子供たちの表情がどこか歪んでおり、家族の笑顔も無理やり口角を上げているように見える。
家族写真なのかと思ったが、写っている子供の顔が毎度違う。それなのに、子供の笑顔は全て同じ方向を向いていて、同じ角度に口角を上げている。
不気味な雰囲気が増し、私はこの部屋から逃げ出したくなった。何かがおかしいと、私の本能が警鐘を鳴らし始めている。
幸い、扉が無くなっているなどということはなく、急いで元の部屋に戻った。
戸惑いと恐怖が私を襲い、部屋の外に出ると息をつくように深呼吸をした。あの部屋は一体何だったのか、あの写真は一体なんだったのだろうか。私には解明する手がかりがなかった。
私はそのまま引越しの準備を続け、以降部屋に入ることは無かった。あの不気味な空間は、私にとって解き明かすべき謎ではなかったのだ。そして、その扉の存在も、ただの偶然の産物だったのかもしれない。
しかし、時折思い出してしまう。あの部屋の不気味な雰囲気と、写真の奇妙な表情。それらがなぜ私の前に現れたのか、答えは知る由もないまま、私の中に深く刻まれている。
地方に1年間の出張である。独り身だからと無茶な要求をしてくるものだ。
引っ越しの荷物をダンボールに詰めている最中、棚の後ろにひとつの扉があることに気づいた。
驚きとともに不思議な感覚が広がり、興味を抱いた。この賃貸アパートに2年以上住んでいるはずなのに、今まで全く気づかなかった。
というか引っ越してきた時には存在しなかったはずだ。
間取り的に1Kの部屋で借りたのだからもう一部屋は無かったはずだ。なんなのだこれは?
扉は古びた木製で、錆びた金具で取り付けられている。周りには埃が積もっており、何年も使われていないような様子だった。私は不思議な感じが募りながらも、好奇心が抑えられず、扉の向こうに何があるのかを確かめたくなった。
ゆっくりと扉を開けると、そこには別の部屋が広がっていた。8畳ほどの自分の部屋より広い一室だ。
その部屋は薄暗い光が微かに差し込んでいるだけで埃っぽい。
壁にはカビが生え、床板は軋むし、ひどく荒れ果てている様子が伺えた。
私は少し躊躇いながらも、その部屋に足を踏み入れた。
おかしい。
静かすぎる。
まるで綿で耳を塞がれたような、全ての音が遠く感じるような不気味な感覚。
どこか嫌な予感がしたが、好奇心が私を突き動かしていた。
部屋の中には古い家具や本が散乱しており、何かしらの生活がされていた形跡があるようだった。本は学術書のような分厚いものから絵本で見た事のある薄く大きなものが乱雑に落ちている。
拾ってみようかとも思ったが、手を伸ばした瞬間から全身に鳥肌がたったのでやめておいた。
しかし、誰かが生活していたにしろ、いつまで続いていたのか、なぜこの部屋にいたのか、私には分からなかった。
奥の方を確認してみると、ひとつの箱が置かれていた。私は箱を開けると、中には古い写真が詰まっているのを見つけた。写真には幼い子供たちや家族の姿が写っており、微かな笑顔が浮かんでいた。
しかし、写真を見ているうちに、気づいてしまった。
子供たちの表情がどこか歪んでおり、家族の笑顔も無理やり口角を上げているように見える。
家族写真なのかと思ったが、写っている子供の顔が毎度違う。それなのに、子供の笑顔は全て同じ方向を向いていて、同じ角度に口角を上げている。
不気味な雰囲気が増し、私はこの部屋から逃げ出したくなった。何かがおかしいと、私の本能が警鐘を鳴らし始めている。
幸い、扉が無くなっているなどということはなく、急いで元の部屋に戻った。
戸惑いと恐怖が私を襲い、部屋の外に出ると息をつくように深呼吸をした。あの部屋は一体何だったのか、あの写真は一体なんだったのだろうか。私には解明する手がかりがなかった。
私はそのまま引越しの準備を続け、以降部屋に入ることは無かった。あの不気味な空間は、私にとって解き明かすべき謎ではなかったのだ。そして、その扉の存在も、ただの偶然の産物だったのかもしれない。
しかし、時折思い出してしまう。あの部屋の不気味な雰囲気と、写真の奇妙な表情。それらがなぜ私の前に現れたのか、答えは知る由もないまま、私の中に深く刻まれている。
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