『ショート怪談』訪れるもの

見崎志念

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髪の長い女性

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　テレビを見ていたら、知らない番組が流れ始めた。
　この時間は確か情報番組をやっていたはずなのに、なんだこれ？
　見たことの無い山の中を写していて、何故か目が離せない。

　画面には、深い緑の森が広がっている。鮮やかな青空が広がり、風が木々を揺らしている様子が映し出されている。しかし、それだけではない。
　なぜか、この光景には異様な魅力がある。まるで、何かが待ち構えているかのような、仏像を始めてみた時のような言いしれない感覚が漂っている。

　私は不思議な気持ちでテレビを見つめ続ける。すると、突然画面が切り替わり、音楽が流れ始めた。それは、どこかで聞いたことのあるメロディーだった。だが、どこで聞いたのかは思い出せず、懐かしい気持ちだけが呼び起こされるようだった。

　次の瞬間、映像が変わった。今度は、山の中に佇む古びた洋館が映る。
　パッと見た限りはツタが絡まった古めかしさに目が行く。だが、気味が悪い。見える窓ガラスがインクで塗られたように真っ黒なのだ。
　なんなのだこれはと考える前に再び画面が切り替わった。
　頭をたれた女性がボソボソと何かを言っている。
　全身が映し出された女性は髪が長く、そのまま地面につきそうな程だ。
　彼女に対して何か声をかけようとした。しかし、その瞬間、画面が一瞬真っ暗になり、次の瞬間には元の情報番組に戻っていた。

　私は息を呑みながら、テレビを見つめたまま固まってしまった。あれは一体何だったのだろうか。普段は平凡な日常を送っている私には、そんな不思議な光景が目の前に広がったことに戸惑いを感じていた。

　しかし、その後も私は何度もテレビを見て、あの番組がもう一度流れることを期待していた。あの不気味な雰囲気や、女性の姿に引き込まれた感覚が忘れられず、なんとかしてもう一度見たいという思いが強くなっていった。

　しかし、それからというもの、私のテレビではあの番組は二度と流れることはなかった。

　あの日の出来事は、私の中に深い疑問と興味を残したまま、過去の出来事として残っていくのだろう。しかし、私の心の中には、いつまでもあの不気味な番組のことが引っかかっている。なぜあの番組が流れたのか、あの女性は何を伝えようとしていたのか。私には、それらの謎を解き明かす手がかりがないまま、日々を過ごしているのだった。

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