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旅館
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旅行で遊びに来た旅館でのんびり酒を飲んでた時、窓ガラスががたんと揺れた。
「えっ、なんだ?」と驚いて窓の外を見ると、何も異変はなかった。ただの風のせいかもしれないと思いながら、再び酒を飲み始めた。
元々だいぶ安いプランだったし、建物自体古いのかもしれない。
しかし、しばらくしてまた窓ガラスががたんと揺れた。今度は確かに風ではないと感じた。誰かが叩いたような音だ。猿でもいるのかと不審に思い、旅館のスタッフに問い合わせてみよう。
お酒を買いにフロントに向かったついでに聞いてみることにする。
「すみません、窓の揺れが何度かありましたが、問題はないですか?」と尋ねると、スタッフは驚いたような表情を浮かべた。
「あ、えっと、実はお客様のお部屋はよくそういったお声があって……良ければお部屋交換しますか?」とスタッフが小声で教えてくれた。
「ああ、別にそこまでじゃないんですけど、そんな良く言われるんですか?」
「はい、実際に泊まられたお客様からのご報告が結構あります。窓の揺れもその一つなんです。おそらく、霊的なものなのかなと……」
「ああ、そうなんですね」
正直な話、霊なんて信じる方ではない。ただの噂に過ぎないと思っていたが、窓の揺れが怪しく感じたので、何かしらの調査をしてみようと思った。
スタッフさんの言い方もなんだか気になるし。
夜も深まり、一人旅館の廊下を歩いていると、急に足元が重くなったような感覚があった。ドロリとした見えない粘液に包まれたような感覚に足を止めると、廊下の向こう側から何かが聞こえてきた。
コツコツ…コツコツ…
その音は、何かが廊下を歩いているような音だった。革靴のような足音が近づいてくるにつれて、どんどん恐怖が膨らんでいく。
声を出すことができず、じっと立ち尽くすしかなかった。
そして、足音が私の前に近づいてきた瞬間、顔を上げる勇気もなく、恐怖で凍りついてしまった。
視界の端に入ってきたのは人間のような影だった。茶色の革靴を履いたスーツの足。なにか声をかけてくる訳でも無く、目の前で足を止めた。
叫びたいのに声が出ない。何かしないとマズイ、でも恐怖で上手く体が動かない。
革靴が1歩、近づいてくる。人が近づいてくる感覚は無い。このままこれとぶつかるのは。本能的にまずい。
もう一歩、革靴が近ずいてきたとき、何も無かったようにスーツの足が霧散した。
呆然と立ち尽くしていると、スタッフが駆け寄ってきて「お客様!?大丈夫ですか!?」と声をかけてくれた。
「あ、あの…何だったんですか?」
スタッフは少し困ったような表情を浮かべて答えた。
「実は、この旅館には幽霊が出るという噂があるんです。でも、今まで実際に幽霊を見たという証言はないんですよ。何かがあるのかもしれませんが、はっきりとしたことはわかりません」
私は深く考え込んだ。この旅館には何かが存在しているのかもしれない。ただの噂では済まされない恐怖が、私の中に広がっていった。
結局、その夜、部屋に戻ったあとも何度か窓ガラスが揺れる現象が続いた。そのたびに私は震えながら、何かに追われるような恐怖に襲われた。
けれど、それ以上のことは何も無かったんだ。
そして、旅館を後にするとき、私はふと思った。もしもあの旅館に実際に幽霊がいたとしたら、それは一体何者なのか。そして、なぜ私へ近づくような行動をするのだろうか。
いまだに解明されていない謎に、私は興味を抱きながらも、後味の悪さを感じながら旅館を去ったのであった。
「えっ、なんだ?」と驚いて窓の外を見ると、何も異変はなかった。ただの風のせいかもしれないと思いながら、再び酒を飲み始めた。
元々だいぶ安いプランだったし、建物自体古いのかもしれない。
しかし、しばらくしてまた窓ガラスががたんと揺れた。今度は確かに風ではないと感じた。誰かが叩いたような音だ。猿でもいるのかと不審に思い、旅館のスタッフに問い合わせてみよう。
お酒を買いにフロントに向かったついでに聞いてみることにする。
「すみません、窓の揺れが何度かありましたが、問題はないですか?」と尋ねると、スタッフは驚いたような表情を浮かべた。
「あ、えっと、実はお客様のお部屋はよくそういったお声があって……良ければお部屋交換しますか?」とスタッフが小声で教えてくれた。
「ああ、別にそこまでじゃないんですけど、そんな良く言われるんですか?」
「はい、実際に泊まられたお客様からのご報告が結構あります。窓の揺れもその一つなんです。おそらく、霊的なものなのかなと……」
「ああ、そうなんですね」
正直な話、霊なんて信じる方ではない。ただの噂に過ぎないと思っていたが、窓の揺れが怪しく感じたので、何かしらの調査をしてみようと思った。
スタッフさんの言い方もなんだか気になるし。
夜も深まり、一人旅館の廊下を歩いていると、急に足元が重くなったような感覚があった。ドロリとした見えない粘液に包まれたような感覚に足を止めると、廊下の向こう側から何かが聞こえてきた。
コツコツ…コツコツ…
その音は、何かが廊下を歩いているような音だった。革靴のような足音が近づいてくるにつれて、どんどん恐怖が膨らんでいく。
声を出すことができず、じっと立ち尽くすしかなかった。
そして、足音が私の前に近づいてきた瞬間、顔を上げる勇気もなく、恐怖で凍りついてしまった。
視界の端に入ってきたのは人間のような影だった。茶色の革靴を履いたスーツの足。なにか声をかけてくる訳でも無く、目の前で足を止めた。
叫びたいのに声が出ない。何かしないとマズイ、でも恐怖で上手く体が動かない。
革靴が1歩、近づいてくる。人が近づいてくる感覚は無い。このままこれとぶつかるのは。本能的にまずい。
もう一歩、革靴が近ずいてきたとき、何も無かったようにスーツの足が霧散した。
呆然と立ち尽くしていると、スタッフが駆け寄ってきて「お客様!?大丈夫ですか!?」と声をかけてくれた。
「あ、あの…何だったんですか?」
スタッフは少し困ったような表情を浮かべて答えた。
「実は、この旅館には幽霊が出るという噂があるんです。でも、今まで実際に幽霊を見たという証言はないんですよ。何かがあるのかもしれませんが、はっきりとしたことはわかりません」
私は深く考え込んだ。この旅館には何かが存在しているのかもしれない。ただの噂では済まされない恐怖が、私の中に広がっていった。
結局、その夜、部屋に戻ったあとも何度か窓ガラスが揺れる現象が続いた。そのたびに私は震えながら、何かに追われるような恐怖に襲われた。
けれど、それ以上のことは何も無かったんだ。
そして、旅館を後にするとき、私はふと思った。もしもあの旅館に実際に幽霊がいたとしたら、それは一体何者なのか。そして、なぜ私へ近づくような行動をするのだろうか。
いまだに解明されていない謎に、私は興味を抱きながらも、後味の悪さを感じながら旅館を去ったのであった。
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