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開けてはいけません

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 なんかある。

 ドアの前に小さな箱が置いてある。
 私はいつものように仕事を終えて帰ってきて、その存在に気が付きました。

 長方形の小さくはない木箱です。
 その箱は不思議な雰囲気を醸し出していて、なぜか私を引き寄せるような感覚がありました。



 箱には達筆な文字で

「開けてはいけません」


 と書かれていました。
 なぜこんな物が家の前にあるのか。私は好奇心に負けて、ついつい手を伸ばして箱を開けてしまいました。

 鍵のついていなかった箱の中には、何も入っていませんでした。
 私は少し安心しながら、箱を閉じようとした瞬間、私の携帯電話が鳴りました。少し驚きつつも、携帯電話を取り出し、表示は見たことのない番号からでした。

「もしもし?」

 恐る恐るでてみると、電話の向こうから、冷たい声が聞こえました。

「あなたは箱を開けてしまったのですね。それでは、あなたにお伝えしなければなりません。あなたは今から...」

 その時、突然、電話が切れました。私は戸惑いながらも、何が起こるのかを知るために折り返しかけ直そうと画面を見ました。しかし、画面には何も表示されないのです。
「え、ウソ、壊れた?」
 画面に触れても反応はありません。
 不気味な沈黙が部屋に広がりました。私は不安を感じながらも、このままではいけないと思い、電話をかけ直そうとしました。しかし、音が出ることなく、画面は暗い沈黙を貫くばかり。

 私は携帯電話を握りしめながら、不安な気持ちを抱えて部屋を見回しました。すると、突然、部屋の明かりが一瞬消え、再び点灯しました。

「な、何?」

 私の声が部屋に響くと、その直後、床の向こう側からコツコツという音が聞こえてきました。
 コツコツ、コツコツ、コツコツ。

 誰かが歩いている音だとわかり、それがだんだんと近づいてきている。そう理解したとき、私は背筋が凍るような恐怖を感じながら、音のする方向から視線をはずすことができませんでした。

 すると、壁のから少女が現れました。何事でもないかのようにするりと、壁から現れたのです。少女は青白い肌をしており、目は赤く光っていました。幽霊らしいその姿に、私は声を出すこともできませんでした。

 少女はゆっくりと私に近づいてきました。

「あなたは箱を開けてしまったのですね。それでは、私もあなたに伝えなければなりません。あなたは今から...」

 彼女の声は冷たく、不気味な響きを持っていました。

 私は恐怖で身体が硬直し、動くことができませんでした。彼女が私に近づき、顔を近づけると、その瞬間に私は意識を失いました。

 目を覚ますと、私は自分のベッドの上にいました。部屋は静かで、何も起こっていなかったかのように思えました。しかし、私の体には冷たい汗が滲んでおり、心臓の鼓動が早くなっていました。

 あれは一体何だったのだろうか。私はまるで狐につままれたような気持ちになりつつも、その恐怖の体験が現実だったのかどうかを確かめるため、再び携帯電話を手に取りました。

 すると、画面には不気味な笑みを浮かべた少女の写真が表示されました。

「まだ終わりじゃないよ」

 という文字が添えられていました。

 私は携帯電話を放り投げて、身体を震わせながら叫びました。

「誰!何をしたいの!」

 しかし、部屋には私の声だけが響き渡り、少女の姿はどこにも見えませんでした。
 私は恐怖に包まれながらも、何が起こるのかを知るため、その後も携帯電話を手放すことができませんでした。

 それからというもの、私は携帯電話に届く不気味なメッセージや写真に悩まされ続けました。
 届く時間はまちまちで、写真だけのときもあればただただどこか森の中のような音だけが聞こえる電話が来ることもありました。

 少女の存在は私の心に常に引っかかり、恐怖で眠ることもできなくなりました。

 私はこの恐怖から逃れる方法を探し続けましたが、どうしても手がかりを見つけることができませんでした。
 少女の恐怖は私の心を蝕んでいき、日常生活もままならなくなっていきました。

 そして、ついに私は限界を迎えました。ある晩、私は自分の部屋で泣き崩れながら、少女に訴えかけました。

「なぜ私を苦しめるの!何が欲しいの!」

 すると、突然、すべての電気が消えて、部屋の中が暗闇に包まれました。私は恐怖に震えながらも、何が起こるのかを知るため、部屋の中を見渡しました。

 すると、壁の一部が剥がれ落ち、その後ろには壮絶な光景が広がっていました。
 折り重なるようにいる幽霊たちの真っ赤な目が無数にこちらを見つめているのです。

 彼らは、私の名前を呼びました。
「あなたは箱を開けてしまったのですね。それでは、私たちもあなたに伝えなければなりません。あなたは今から...」

 幽霊たちの声が私の耳に響き渡りました。
 私は恐怖で身体が麻痺し、逃げ出すこともできませんでした。

「あなたは箱を開けてしまったのですね。それでは、私たちもあなたに伝えなければなりません。あなたは今から...」


 彼らの声はますます大きくなり、私の意識は闇に飲まれていきました。

 それからというもの、幽霊たちの声が頭の中に響き渡り、私は永遠に苦しむ運命に縛られることとなったのです。

 結局、あの箱は私を呪いに陥れるための罠だったのだと思います。私の好奇心が私の人生を狂わせることになったのです。

 ああ、わかっています。ですからどうか、方っておいてください。

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