『ショート怪談』訪れるもの

見崎志念

文字の大きさ
上 下
2 / 36

血まみれの女

しおりを挟む

 その夜、彼は一人で家にいた。窓の外には雨が降っていた。台風が近づいていたのだ。

 ガタガタと風邪で窓が揺れる中、彼はテレビを見ていたが何も面白い番組がない。彼は退屈していた。

「出前でも取るか……」

 突然、玄関のベルが鳴った。彼は誰が来たのかと不思議に思った。彼はドアを開けると、そこには血まみれの女性が立っていた。彼女は彼に向かって叫んだ。

「助けてください!私を殺そうとしている人がいます!」

 彼は驚きながらも、女性を家に入れた。彼女は血まみれの姿でありながら、どこか美しく思える不思議な雰囲気をまとっていた。
 彼は彼女の手を取り、慌ててキッチンへと案内した。彼はタオルを取り、彼女の傷を拭いた。傷口は小さな刃物で何度も切られたような細かいものだった。

「大丈夫ですか?どうしてこんなことになったんですか?」
 
 彼は心配そうに尋ねた。

 女性は息を切らしながら、話し始めた。
「あいつから逃げてきたの。あいつは私を殺そうとしているのよ。あのままだと本当に危なかった。助けてくれてありがとう。」

 彼は彼女の言葉に驚き、同時に背筋が凍るような感覚がした。彼は窓の外を見ると、闇の中に何かがいるような気がした。彼は彼女を連れてリビングルームに戻り、窓のカギを改めて確認した。うん、閉まっている。

「警察に連絡しよう」

 彼は携帯電話を取り出し、警察に通報した。

「はい、事件ですか、事故ですか」

「あ、えっと、事件です。殺さそうな女性を保護しています。場所は」

「はい、事件ですか、事故ですか」

「え、あの、聞こえてますか」

「はい、じけんですか、じこですか。はい、じけんですか、じこですか。はい、じけんですか、じこですか。はい、じじじじじじけんですか、じここここおこここですか。ははははっは、はははははははははははは」


 音が割れ、信じられない音量になっていく。

「なんだよ、今の。番号間違えたっけ」 

 スマホの画面を確認しようとして、彼は再び異変に気づいた。リビングルームの明かりが点滅し始めたのだ。

 彼は恐怖に震えながら、女性に近づいた。

「え、台風の影響ですかね」

 女性は彼を見つめて答える。

「彼がここに来たのよ。もう遅いわ、彼はもうここにいるの。」

 彼は言葉に詰まり、理解することができなかった。
 すると、窓を叩く音が彼らの後ろから響いた。

 風で何かが飛ばされてきたのではないと直感的に分かった彼は、ゆっくりと振り返る。
 血まみれの男が窓越しに立っている。異様に長い手足と窓に触れる手から伸びた爪は極端に長い。

 彼は恐怖に満ちた目で彼女を見つめた。

「なんですかあいつ……」

 女性は微笑みながら言った。
「彼は私の夫なのよ」

「は?」

「お腹が空いたっていうから、新しいエサが必要になったの。」

 彼の心臓はドクンドクンと激しく鼓動し、彼は絶望と恐怖に押しつぶされそうになった。彼は逃げ出すこともできず、ただ彼女の言葉を受け入れるしかなかった。

「優しい人、ありがとうね。これで夫は満足してくれる」

 彼は絶望的な思いで彼女を見つめた。

 慈愛に満ちたようで、悪魔のような笑顔を見つめ、窓ガラスが割れる音を最後に、彼の意識はなくなった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

バベル病院の怪

中岡 始
ホラー
地方都市の市街地に、70年前に建設された円柱形の奇妙な廃病院がある。かつては最先端のモダンなデザインとして話題になったが、今では心霊スポットとして知られ、地元の若者が肝試しに訪れる場所となっていた。 大学生の 森川悠斗 は都市伝説をテーマにした卒業研究のため、この病院の調査を始める。そして、彼はX(旧Twitter)アカウント @babel_report を開設し、廃病院での探索をリアルタイムで投稿しながらフォロワーと情報を共有していった。 最初は何の変哲もない探索だったが、次第に不審な現象が彼の投稿に現れ始める。「背景に知らない人が写っている」「投稿の時間が巻き戻っている」「彼が知らないはずの情報を、誰かが先に投稿している」。フォロワーたちは不安を募らせるが、悠斗本人は気づかない。 そして、ある日を境に @babel_report の投稿が途絶える。 その後、彼のフォロワーの元に、不気味なメッセージが届き始める—— 「次は、君の番だよ」

夜に融ける。

エシュ
ホラー
短編ホラーです。

【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】

絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。 下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。 ※全話オリジナル作品です。

悪夢

ちゃっぷ
ホラー
後味の悪い話、何となく思いついた話、昔見た夢の話などをポツポツと思いついた時に書いていきます。

ゾンビと片腕少女はどのように死んだのか特殊部隊員は語る

leon
ホラー
元特殊作戦群の隊員が親友の娘「詩織」を連れてゾンビが蔓延する世界でどのように生き、どのように死んでいくかを語る

だんだんおかしくなった姉の話

暗黒神ゼブラ
ホラー
弟が死んだことでおかしくなった姉の話

本当にあった怖い話

邪神 白猫
ホラー
リスナーさんや読者の方から聞いた体験談【本当にあった怖い話】を基にして書いたオムニバスになります。 完結としますが、体験談が追加され次第更新します。 LINEオプチャにて、体験談募集中✨ あなたの体験談、投稿してみませんか? 投稿された体験談は、YouTubeにて朗読させて頂く場合があります。 【邪神白猫】で検索してみてね🐱 ↓YouTubeにて、朗読中(コピペで飛んでください) https://youtube.com/@yuachanRio ※登場する施設名や人物名などは全て架空です。

怪異語り 〜世にも奇妙で怖い話〜

ズマ@怪異語り
ホラー
五分で読める、1話完結のホラー短編・怪談集! 信じようと信じまいと、誰かがどこかで体験した怪異。

処理中です...