1 / 36
小包
しおりを挟む私は玄関のチャイムが鳴った音にビクッと身を震わせた。
自宅のアパートでのんびりと過ごしていたので、突然の来客に戸惑いながらも玄関に向かった。
「誰かしら…」
心の中で疑問を抱きながら玄関を開けると、そこには小さな小包みを一つだけ持った男が立っていた。彼は黒いスーツに身を包み、真っ赤なネクタイが目立っていた。
「どちらさまでしょうか?」私は男に尋ねると、彼は静かに小包を私の方に近づけた。
「お届け物です」
男は淡々と答える。
「川村さんですね。小包みをお届けに来ました」
私は少し戸惑いながらも、手を差し出して小包みを受け取った。その瞬間、何か違和感を感じた。小包みはなんとも言えない重さを持っているようだった。
「えっと、送り先はどこから?」私は尋ねると、男は微笑んだ。
「きっと、届け先はすぐに見つかるでしょう。では、お疲れ様でした」
男はそう言って、一礼して去っていった。
私は不思議な感覚に包まれながらも、玄関を閉めて中に戻った。
「何だろう、この小包みは…」
私は興味津々で小包みを開くことにした。しかし、言い知れぬ不安がよぎる。心の奥底で、何かが起こる予感がした。
ゆっくりと小包みの包装紙を剥がしていくと、そこには黒い布に包まれたものがあった。寮の手のひらに収まるような、そこまで大きくないものだ。私は少しの勇気を振り絞り、その黒い布を取り除いた。
すると、中には人形が一体だけ入っていた。それは、まるで実物のようなリアルな造りだった。しかし、その表情は不気味で、どことなく嫌な感じがする。
「なんだこれ…」
私はつぶやきながら、人形をじっと見つめた。すると、突然、その人形がぎょろりと私の方を見た。
「ひっ!」
驚いて取りこぼした人形が、地面に落ちる。
ボトリと人形らしからぬ重く柔らかい音がした。
「あっ…」
すごく、嫌な感じがする。どんどん視界が狭まって、世界が黒いものに包みこまれていくような感覚に襲われた。
人形から目が離せないまま、じっと固まったような空間の中で、人形がゆっくりと起きあがりだした。
「嘘…」
コツコツコツ…と人形の足音が部屋中に響き渡った。私は震える手で後ずさりし、どうしていいか分からなくなった。
「止まって…!」
私は叫びながら、逃げ出そうとしたが、人形は私に向かって近づいてくるばかりだった。
「助けて…!」
私の叫び声は部屋中に響き渡るが、誰も助けてくれる者はいなかった。人形は私に迫り、その手を伸ばしてきた。
私は絶望の中で叫び続けた。しかし、その叫び声はただの虚しさだった。人形の手が私の首に触れる瞬間、私の意識は闇へと飲み込まれていった。
ずっとずっとずっとずっと、ずっとずっとずっとずっと、ずっとずっとずっとずっと、ずっとずっとずっとずっと、ずっとずっとずっとずっと、ずっとずっとずっとずっと、ずっとずっとずっとずっと、ずっとずっとずっとずっと、ずっとずっとずっとずっと、ずっとずっとずっとずっと、ずっとずっとずっとずっと、ずっとずっとずっとずっと、ずっとずっとずっとずっと、ずっとずっとずっとずっと、ずっとずっとずっとずっと、ずっとずっとずっとずっと、暗闇の中にいた。
やっと光に出会ったら、私の顔があった。
驚いた顔で私を落とした私。
なんでそんなことをするの、なんで離れていくの。
もっとよく顔を見せて、もっとそばにいて。
闇の中は、寂しいよ。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
【ショートショート】雨のおはなし
樹(いつき)@作品使用時は作者名明記必須
青春
◆こちらは声劇、朗読用台本になりますが普通に読んで頂ける作品になっています。
声劇用だと1分半ほど、黙読だと1分ほどで読みきれる作品です。
⚠動画・音声投稿サイトにご使用になる場合⚠
・使用許可は不要ですが、自作発言や転載はもちろん禁止です。著作権は放棄しておりません。必ず作者名の樹(いつき)を記載して下さい。(何度注意しても作者名の記載が無い場合には台本使用を禁止します)
・語尾変更や方言などの多少のアレンジはokですが、大幅なアレンジや台本の世界観をぶち壊すようなアレンジやエフェクトなどはご遠慮願います。
その他の詳細は【作品を使用する際の注意点】をご覧下さい。
校長先生の話が長い、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
学校によっては、毎週聞かされることになる校長先生の挨拶。
学校で一番多忙なはずのトップの話はなぜこんなにも長いのか。
とあるテレビ番組で関連書籍が取り上げられたが、実はそれが理由ではなかった。
寒々とした体育館で長時間体育座りをさせられるのはなぜ?
なぜ女子だけが前列に集められるのか?
そこには生徒が知りえることのない深い闇があった。
新年を迎え各地で始業式が始まるこの季節。
あなたの学校でも、実際に起きていることかもしれない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる