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拉致から始まる友情も一部地域で提供される
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この学園には関わってはいけない人間がいる。
平和で平凡な学生生活を送りたいなら、絶対に目をつけられてはいけない人物たち。
別に目をつけられたからと言って、いじめられるとか学校に居ずらくなるとかそういうことじゃない。
それよりもっとたちが悪い。
むしろいじめの方が対処法もある分、いくらか気楽だろう。
しっくりくる表現に無理やり奴らを当てはめるなら、あいつらは「規格外」だ。
「だから、この子にはあたしの手伝いをしてもらうつもりよ!」
そして俺、秋山真代の平和で平凡な学生生活は、現段階で終わりを告げられた。
「愛依ちゃん、あなたの意見はわかったわ。でもなんでこんな人なの?」
親指と中指で挟むようにメガネの位置を直しつつ俺を睨んでくるのは、赤いメガネが特徴的な大人びた女子。
「別にいいんじゃねー? 確かにイケメンじゃねぇけどお嬢が選んできたんならうちは問題ないと思うよー」
それに返事をしたのは、椅子に体重を預けてプラプラと揺れているボーイッシュな印象の女子だ。
「そういう事ではなくて。確かに軽犯罪者みたいな顔してますけど。今後の活動にとって必要な方なのかというーー」
俺の処遇についてなにやら姦しく話してるあいつらこそ、この学園で関わってはいけない「規格外」だ。
というかしれっと悪口言ってなかった?
たしかに悪人ズラの自覚はあるけど、せめて聞こえないとこで話してくれないか。
「フワちゃん、見た目で判断しちゃダメよ? この子の才能はあたしたちの活動にとって、最重要と言っても過言ではないわ!」
褒めてくれてるんだと思うけど、頭を鷲掴みにしながらブルンブルン振って言うセリフじゃないよ。
ちなみに、現状腕を縛られてるんで抵抗のしようも無いのでされるがままってやつです。
想像していたよりも不快だな、これ。
事の発端は三十分ほど遡る。
本日最後の授業も終わり、さて今日はどの部活を見学しようかとアクティブ系帰宅部の俺が教室を出たところで、元凶が現れた。
「こんにちは!貴方か秋山真代ね?」
彼女は夏空の下の向日葵みたいな笑顔で声をかけてきた。手には手錠をたずさえて。
「…………」
ビシャリ
見なかったことにした。
取りあえず教室の入口を閉めて、逆側から出よう。
「お、ほんとにこっちに来たんすね。やっぱりお嬢はすげぇな」
荒縄をピンと伸ばしたボーイッシュ系女子が朝顔みたいな爽やかな笑顔で道を塞いでいる。
「多少手荒でもいいって話だったんで、失礼!」
「いや、何言って……痛って!痛い痛い!」
気づいたら後ろから固められて身動き出来なくされてた。にちじょうけいの人の動きじゃないよ今の!? 残像的なの見えたよ!?
待って、それ以上持ってかれたら多分肩外れる!
「ん、身体硬いっすねー」
「絶対そういう問題じゃねぇ!」
「サクラちゃんナイス! さ、連れてくわよ」
「ういっす!」
向こうにいた向日葵がニコニコしながらこっちにきやがった。
両手を極められながら縛られ、ベルトの隙間に縄を通されたらしくて上がりすらない。完璧に身動き封じられてる。
どこで覚えたんだその技。全く情報になかったんだが。
「昨日教えただけなのにこうも手際よくやるなんて、サクラちゃんは流石ねー」
「ぅふへへ。お嬢の頼みならなんだってうちはやるっすよ!」
「ありがとう、頼りにしてるわね」
目の前で突然百合展開が始まったんだけど、この場合俺は帰った方がいいと思うんだ。
リアルで顎クイからのなでなでする女子を生で見れたのは眼福以外のなんでもないんだけどさ。そこに挟まる位置に俺がいたら多分エルフの剣士辺りに切り殺される自信がある。
いいぞもっとやれ。俺は認識されないラインまで離れるんで続きよろしく。
「あ、どこ行くんすか。逃がしたらお嬢に叱られるんで」
「いででで!待ってギブ!マジで外れるって!わかった、着いていく!着いてきますから!」
そして学生の移動が多い下校時間の中、腕に縄をされながら連れてこられた。
なかなかにひどいと思うんだけど、確信犯なんだろうな。一切わるびれる様子がない。
なんなら喋りながら俺の頭ずっとわしゃわしゃやってくる。距離感どうなってんだこいつ。別種のコミュ障じゃねぇか。
「とにかく。この子は我が部活で活動をしてもらうわ。あなた今部活はやってるの?」
「いや、やってないけど……」
「なら良かったわ!他にやってたら支障でちゃうからやめてもらわなきゃいけなかったし」
さも当然のように言いきった後、わしゃわしゃやっていた手を離して、握手を求めるように右手を突き出してきた。
「これから我が部活の同士としてじゃんじゃん働いてもらうから!よろしくね!」
平和で平凡な学生生活を送りたいなら、絶対に目をつけられてはいけない人物たち。
別に目をつけられたからと言って、いじめられるとか学校に居ずらくなるとかそういうことじゃない。
それよりもっとたちが悪い。
むしろいじめの方が対処法もある分、いくらか気楽だろう。
しっくりくる表現に無理やり奴らを当てはめるなら、あいつらは「規格外」だ。
「だから、この子にはあたしの手伝いをしてもらうつもりよ!」
そして俺、秋山真代の平和で平凡な学生生活は、現段階で終わりを告げられた。
「愛依ちゃん、あなたの意見はわかったわ。でもなんでこんな人なの?」
親指と中指で挟むようにメガネの位置を直しつつ俺を睨んでくるのは、赤いメガネが特徴的な大人びた女子。
「別にいいんじゃねー? 確かにイケメンじゃねぇけどお嬢が選んできたんならうちは問題ないと思うよー」
それに返事をしたのは、椅子に体重を預けてプラプラと揺れているボーイッシュな印象の女子だ。
「そういう事ではなくて。確かに軽犯罪者みたいな顔してますけど。今後の活動にとって必要な方なのかというーー」
俺の処遇についてなにやら姦しく話してるあいつらこそ、この学園で関わってはいけない「規格外」だ。
というかしれっと悪口言ってなかった?
たしかに悪人ズラの自覚はあるけど、せめて聞こえないとこで話してくれないか。
「フワちゃん、見た目で判断しちゃダメよ? この子の才能はあたしたちの活動にとって、最重要と言っても過言ではないわ!」
褒めてくれてるんだと思うけど、頭を鷲掴みにしながらブルンブルン振って言うセリフじゃないよ。
ちなみに、現状腕を縛られてるんで抵抗のしようも無いのでされるがままってやつです。
想像していたよりも不快だな、これ。
事の発端は三十分ほど遡る。
本日最後の授業も終わり、さて今日はどの部活を見学しようかとアクティブ系帰宅部の俺が教室を出たところで、元凶が現れた。
「こんにちは!貴方か秋山真代ね?」
彼女は夏空の下の向日葵みたいな笑顔で声をかけてきた。手には手錠をたずさえて。
「…………」
ビシャリ
見なかったことにした。
取りあえず教室の入口を閉めて、逆側から出よう。
「お、ほんとにこっちに来たんすね。やっぱりお嬢はすげぇな」
荒縄をピンと伸ばしたボーイッシュ系女子が朝顔みたいな爽やかな笑顔で道を塞いでいる。
「多少手荒でもいいって話だったんで、失礼!」
「いや、何言って……痛って!痛い痛い!」
気づいたら後ろから固められて身動き出来なくされてた。にちじょうけいの人の動きじゃないよ今の!? 残像的なの見えたよ!?
待って、それ以上持ってかれたら多分肩外れる!
「ん、身体硬いっすねー」
「絶対そういう問題じゃねぇ!」
「サクラちゃんナイス! さ、連れてくわよ」
「ういっす!」
向こうにいた向日葵がニコニコしながらこっちにきやがった。
両手を極められながら縛られ、ベルトの隙間に縄を通されたらしくて上がりすらない。完璧に身動き封じられてる。
どこで覚えたんだその技。全く情報になかったんだが。
「昨日教えただけなのにこうも手際よくやるなんて、サクラちゃんは流石ねー」
「ぅふへへ。お嬢の頼みならなんだってうちはやるっすよ!」
「ありがとう、頼りにしてるわね」
目の前で突然百合展開が始まったんだけど、この場合俺は帰った方がいいと思うんだ。
リアルで顎クイからのなでなでする女子を生で見れたのは眼福以外のなんでもないんだけどさ。そこに挟まる位置に俺がいたら多分エルフの剣士辺りに切り殺される自信がある。
いいぞもっとやれ。俺は認識されないラインまで離れるんで続きよろしく。
「あ、どこ行くんすか。逃がしたらお嬢に叱られるんで」
「いででで!待ってギブ!マジで外れるって!わかった、着いていく!着いてきますから!」
そして学生の移動が多い下校時間の中、腕に縄をされながら連れてこられた。
なかなかにひどいと思うんだけど、確信犯なんだろうな。一切わるびれる様子がない。
なんなら喋りながら俺の頭ずっとわしゃわしゃやってくる。距離感どうなってんだこいつ。別種のコミュ障じゃねぇか。
「とにかく。この子は我が部活で活動をしてもらうわ。あなた今部活はやってるの?」
「いや、やってないけど……」
「なら良かったわ!他にやってたら支障でちゃうからやめてもらわなきゃいけなかったし」
さも当然のように言いきった後、わしゃわしゃやっていた手を離して、握手を求めるように右手を突き出してきた。
「これから我が部活の同士としてじゃんじゃん働いてもらうから!よろしくね!」
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