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番外編 城南家の裏事情
第4話 城南晄矢の裏事情 2
しおりを挟む涼とベッドを共にするようになって一週間。ほとんど借りてきた猫状態の涼は、俺が少し動くだけで、警戒して挙動不審に陥っていた。
彼にとっては初対面の相手だ。そりゃあ緊張するよな。しかも家族も含めて同居人には『恋人』ということになってるし、部屋どころかベッドまで共有してんだから。
しかし、そのおろおろしてる姿を眺めるのはなんて役得なんだろう。もう可愛いったらない。
ただそこにいるだけでも、ふんわり天パーやクリっとした瞳が悪魔的に可愛いのに、それが頬を赤らめてドギマギしてるとか、罪深過ぎやろっ。
――――あ、いかん。変態まっしぐらだな。
まあ、そんなこんなで、俺はよく我慢してると思うよ。酔っぱらって帰った時、つい寝顔にキスしちゃったけど、気付かなかったよな? 本当はそのまま無理やり……いや、弁護士たるもの、契約違反を犯してはならん。
『それは契約に入ってない!』
涼にはっきり言われて、ちょっと悲しかったな。そりゃそうだけど……『合意の上』ならいいわけで。でも、まさかそんな一文を入れるわけにいかないしなあ。涼は、俺のこと気になってるのか、ならないのか……。
俺自身も掴みかねてたとき、ちょっと幸運な盗み聞き……いや、ドアの隙間から漏れ聞こえてきただけだ。
『相手は男の人だよ…………だけどその人、僕のこと好きかどうかわかんないんだ。だから……』
ん? と、俺は思う。どうやら実家のおばあさんと話をしているようだ(祖母とそういう話が出来るとはなかなか凄いな、とは俺の率直な感想)。
けど、この『相手』って、もしかして俺のことか? おばあさんに俺とのことを相談してるのか?
――――もしかして、これは脈ありってわけか?
どうも涼は、恋愛経験が皆無といっていいほど無いようだ。あんなに綺麗な顔してモテモテ、バイトもそれでクビになるくらいなのに。
しかし、デートするにも先立つものがいるし、そんなに簡単ではないのかも。
――――じゃあ、自分がゲイかノンケかわからずにいるってことも有り得る?
と、俺は自分の都合の良いように解釈した。
――――少なくとも俺のことは気になってる。よし、行けるかも!
根拠のない自信だけれど、なんだか行けそうな気がしてきた。俺は親父の傍若無人ぶりに反発して涼を迎え入れたんだが、目的がすでに変わってきてしまった。ま、一石二鳥で行ければ一番いい。
ところがそれからすぐ、俺はまさかの幸運に恵まれた。涼が慣れない酒に酔っぱらって、俺に突っかかってきたんだ。酔っ払いなんてうざいだけなのに、涼がやると、これもまた可愛すぎて……。
『だから夜中にキスなんかするんだっ』
あ、やっぱりバレてた。
『僕のこと……どう思ってるんですか?』
俺のすぐ横、体が触れるくらい近くで、頬染めた涼が俺に詰め寄ってきた。
これはもう、しっかり答えなきゃ男じゃないよ。俺は意を決して涼を抱きしめ、唇を重ねた。いきなりディープなものでなく、初めてに相応しい優しいキスだ。
腕のなかで涼が固まっているのがわかる。腕に力を入れたかったけど、壊れてしまいそうでできない。
『涼のことを愛おしいって思ってる』
俺は自分の正直な気持ちを吐露した。震える双眸で俺を見る涼。てっきり甘い時間が始まるかと思ったその途端。
『ぐぐっ!』
突然、変な音が涼の喉元からこぼれたと思ったら、涼は一目散にバスルームに走っていった。
――――えーっ! これは一体どういうこと!?
恋多きとまでは言わないが、今まで日本やアメリカでそれなりに経験を積んできた。
だが、生まれて初めての反応に俺は大いに戸惑っている。この俺をこうも翻弄する涼。もう頭の中はあいつのことでいっぱいだよ……。
つづく
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