96 / 111
第95話 アナログ電話帳
しおりを挟む僕は単刀直入に問う。何故ばあちゃんが倒れたことを知っていたのか。どうやって僕の居場所が分かったのか。
「うーん。それなあ……」
しかしその問いに、晄矢さんは答えるのに難色を示した。
「言うと、涼に怒られそうだし」
僕が怒る? やっぱり、よからぬことを……。
「いいから教えて。おかげで凄く助かったんだから」
「怒らない?」
なに? そこ言質《げんち》取るの? うーん……。僕は腕組みをしてみせる。けど結局。
「わかった。怒らない」
応じると、晄矢さんはしたり顔で口角を上げる。なんだかなあ。
「涼の居場所がわかったのは簡単なんだ。スマホ、見てみろ」
「スマホ?」
言われて僕はポケットから取り出す。
「別になにも……あ、もしかして!」
正直、スマホの便利機能のほとんどを使用したことがない。一番安いプランを契約してるから、動画とかまず見ないんだ。だからアプリも初期設定のまま。
「あ……やっぱり」
見慣れないアプリがいつの間にかインストールされていた。
「そ、それな。GPSアプリ。これで電源さえ入っていれば涼のいる場所がわかる」
「いつの間にこんなっ!」
なんてことしてんだ。この人はっ! まじストーカーかよっ!
「待て待て、怒んなよ。実際使ったのは今回が初めてだったんだ。深い意味はない」
「深い意味はないって……」
僕は鼻息荒く晄矢さんに詰め寄る。
「ほんの出来心です。ほら、誰かに攫われたら大変だから」
「誰が攫われるんだよ……全く……」
「怒らないって約束だろ?」
「う……」
そう言われてしまうと何も言えない。ホントに今回が初めてなんだろうな。全く油断も隙も無い人だよ……。
「じゃ……じゃあ、最初の疑問は?」
「それね。これは俺も驚いた。てか、ありがたかったけど。居間の電話のとこ行ってごらんよ」
居間の電話? 僕は言われるまま、居間と玄関の間に置かれた電話のところに足を向けた。
今時珍しいアナログな固定電話は、僕が中学生の時、授業で作った四つ脚の台の上に乗っている。ごく普通の台だけど、まあちゃんと垂直に立ってるんだから上出来だろう。
「その後ろに貼ってある紙だよ」
電話の後ろの壁に、ばあちゃんが書いたであろう数字が並ぶ紙が貼ってあった。言うまでもなく電話番号だ。
ばあちゃんが電話を掛ける相手は多くない。一番上には僕の携帯の番号があり、その下に……。
――――立花さん? 誰? 聞いたことない……。
「ま、まさかっ!?」
僕は目も口も開いたまま晄矢さんを見た。
7
お気に入りに追加
143
あなたにおすすめの小説
【BL】男なのになぜかNo.1ホストに懐かれて困ってます
猫足
BL
「俺としとく? えれちゅー」
「いや、するわけないだろ!」
相川優也(25)
主人公。平凡なサラリーマンだったはずが、女友達に連れていかれた【デビルジャム】というホストクラブでスバルと出会ったのが運の尽き。
碧スバル(21)
指名ナンバーワンの美形ホスト。博愛主義者。優也に懐いてつきまとう。その真意は今のところ……不明。
「僕の方がぜってー綺麗なのに、僕以下の女に金払ってどーすんだよ」
「スバル、お前なにいってんの……?」
冗談? 本気? 二人の結末は?
美形病みホスと平凡サラリーマンの、友情か愛情かよくわからない日常。
【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】
彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』
高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。
その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。
そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?
推しの完璧超人お兄様になっちゃった
紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。
そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。
ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。
そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。
ハイスペックストーカーに追われています
たかつきよしき
BL
祐樹は美少女顔負けの美貌で、朝の通勤ラッシュアワーを、女性専用車両に乗ることで回避していた。しかし、そんなことをしたバチなのか、ハイスペック男子の昌磨に一目惚れされて求愛をうける。男に告白されるなんて、冗談じゃねぇ!!と思ったが、この昌磨という男なかなかのハイスペック。利用できる!と、判断して、近づいたのが失敗の始まり。とある切っ掛けで、男だとバラしても昌磨の愛は諦めることを知らず、ハイスペックぶりをフルに活用して迫ってくる!!
と言うタイトル通りの内容。前半は笑ってもらえたらなぁと言う気持ちで、後半はシリアスにBLらしく萌えると感じて頂けるように書きました。
完結しました。
陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
まったり書いていきます。
2024.05.14
閲覧ありがとうございます。
午後4時に更新します。
よろしくお願いします。
栞、お気に入り嬉しいです。
いつもありがとうございます。
2024.05.29
閲覧ありがとうございます。
m(_ _)m
明日のおまけで完結します。
反応ありがとうございます。
とても嬉しいです。
明後日より新作が始まります。
良かったら覗いてみてください。
(^O^)
【完結】父を探して異世界転生したら男なのに歌姫になってしまったっぽい
おだししょうゆ
BL
超人気芸能人として活躍していた男主人公が、痴情のもつれで、女性に刺され、死んでしまう。
生前の行いから、地獄行き確定と思われたが、閻魔様の気まぐれで、異世界転生することになる。
地獄行き回避の条件は、同じ世界に転生した父親を探し出し、罪を償うことだった。
転生した主人公は、仲間の助けを得ながら、父を探して旅をし、成長していく。
※含まれる要素
異世界転生、男主人公、ファンタジー、ブロマンス、BL的な表現、恋愛
※小説家になろうに重複投稿しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる