【完結】極貧イケメン学生は体を売らない。【番外編あります】

紫紺

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第45話 スパイ大作戦

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 廊下の隅で密談中の祐矢氏。相手はエプロンを身に着けているようだ。さらに目を凝らすと肩に結んだ髪が見えた。
 
 ――――二宮さんかな……。

 さっきまでキッチンにいたように思ったけど、いつのまに2階に行ってたんだろ。僕らが何をしてなさそう?

『はい。毎日シーツを取り換えていますし、ごみ箱とか見ても……』
『そうか。わかった……二宮、また教えてくれ』
『はい。もちろんです。旦那様』

 おっと下りてくる。僕は急いで階下に降り、何食わぬ顔でもう一度階段に足を掛けた。

「あ、二宮さん、お疲れ様」
「えっ! あ、はい」

 小走りで降りてきた彼女は、驚いた表情から慌てて笑顔を作り頭を下げた。いつだったか晄矢さんが言ってた。どこにスパイがいるかもしれないって。そういうことなんだろうな。

 でも二宮さんのしてることに僕は全く腹は立たない。彼女が裕福な家庭で育ったわけでないことは聞いていたし、旦那様に請われ、もしかしてボーナスとかもらえるなら普通にやるだろう。

 ――――にしても……『そういうこと』は、やっぱりそういうことか。

 そのことで祐矢氏が思うのは一つ。僕らが恋愛関係ではないってことだ。恋人のフリをした、ただのおっさん同士(自分のことをおっさん呼びするのは抵抗あるが)ってわけだ。

 ――――だったら、派手にシーツに皺でもよせとくか。しかし、ごみ箱まであさられてるなら、滅多なもの捨てられないなあ。

 意外に僕は能天気に思う。けど、この話を晄矢さんにしていいものか悩む。

 ――――もしかして、『じゃあ本当にするか』、なんてことになったりして……。

 突然、僕の心臓が壊れるんじゃないかと思うくらい跳ねとんだ。一人で真っ赤になってる。馬鹿だな、僕は。

「おはよー。あれ、なにしてんだ。そんなところで」

 廊下で一人百面相してる僕の前に、突然晄矢さんが現れた。スリッパをひっかけ、部屋を出てきたところだ。いつもの部屋着にタオルを肩にかけている。朝シャワーをしたのだろう生乾きの髪からしずくがきらりと光った。

「え……と。晄矢さんに見とれてる」

 正直な言葉が口から出てしまった。えっ、の口の形のまま数秒。それから二人の空間を飛び越えて晄矢さんが僕を抱きしめた。
 祐矢氏、こんなところを見たら、シーツを調べたりしないでくれるかな。それともこれも芝居と思うだろうか。なんてことを、晄矢さんの腕の中で僕は考えていた。


 しかし、それから数時間後。僕らは立花さんを通じ、恐ろしいミッションを言い渡されてしまった。
 明日の日曜日、なんとあの丸藤証券のトップ二人とゴルフに同行しろってっ。あのおっさん、何考えてんだっ!



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