【完結】極貧イケメン学生は体を売らない。【番外編あります】

紫紺

文字の大きさ
上 下
12 / 111

第11話 俺も入っていいかな。

しおりを挟む


 明日からのスケジュールを二人で確認して、とりあえず今日は終了ということになった。僕はいつも通り大学へ行けばいいと(なんと送迎つき)。
 起床時間も自由で構わないと言われたが、忙しい弁護士の皆様の邪魔になってはいけない。彼らが出払うころに朝食をお願いすることにした。それでも十分1時限目に間に合う。彼らの朝は激早だった。

「事務所に来るときは必ずスーツで。それはこっちで用意してるからクローゼット見て」

 そう言われてベッドルームに行くと、僕用のクローゼットが既に準備されていた。

「これ……着ていいの?」
「ああ。昨日慌てて君のサイズをそろえたからまだ3着しかないけど、そのうちきちんとしたのを採寸に行こう」
「いやいや、これで十分です」

 吊り下げのスーツだろうけど、赤山とかウニクロのスーツとは桁が違いそうだ。しかし、僕のサイズよくわかったな。上着を羽織ってみたところぴったりだ。

「じゃあ、先にお風呂入って。バスタブにお湯貯めてもいいし、シャワーでもいい」

 お風呂……。自慢じゃないが夜逃げ以来、僕はお風呂付の家に住んだことがない。
 ばあちゃんちも近所の銭湯に3日に1度通ってた。後の2日は土間に引いた井戸水で洗う(井戸水は食事用には使ってない)。
 もちろん今のアパートにはついてない。銭湯は近くにあるけど滅多に行けなくて。けど、大学ってすごいところだ。体育館の地下に学生用のジムがあって、そこのシャワーを使えるんだ。

 ――――それがここでは、家どころか部屋に風呂があるのか……感激だ。

 バスルームに行くと、脱衣所にウオーターサーバーがコポコポと音を立てていた。晄矢さんが言ってたのはこれのことか。理由なく飲んでみた。美味しい……。

 ――――なにやってんだ。さっさと風呂入ろ。

 僕は早速バスタブに湯を張り、ゆっくり浸かった。うっとり湯舟で泡と戯れていると、ドアのすりガラスに人影が。

「涼、俺も入っていいかな」

 ひえええっ! う、嘘。僕は思わず仰け反り、溺れそうになってバシャバシャと水音を立てて慌てふためいた。

「あ……あのっ」
「冗談だよ。あはは。涼はホントに反応が素直で楽しいな」

 冗談かよっ。あんまりだ。もう少しで溺れるとこだったよ。

「これ、パジャマ置いておくから」
「え? 僕も持ってきたけど」

 パジャマはもちろん高校時代のジャージだ。

「うん。これもキュートだけど、ここではこっちにしておいて。部屋の外にでることもあるだろうから」

 と言われてしまった……。ジャージをキュートと言ってくれた人は初めてだけど、少しだけ恥ずかしい気持ちになった。



しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。

しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。 基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。 一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。 それでも宜しければどうぞ。

【完結】元騎士は相棒の元剣闘士となんでも屋さん営業中

きよひ
BL
 ここはドラゴンや魔獣が住み、冒険者や魔術師が職業として存在する世界。  カズユキはある国のある領のある街で「なんでも屋」を営んでいた。  家庭教師に家業の手伝い、貴族の護衛に魔獣退治もなんでもござれ。  そんなある日、相棒のコウが気絶したオッドアイの少年、ミナトを連れて帰ってくる。  この話は、お互い想い合いながらも10年間硬直状態だったふたりが、純真な少年との関わりや事件によって動き出す物語。 ※コウ(黒髪長髪/褐色肌/青目/超高身長/無口美形)×カズユキ(金髪短髪/色白/赤目/高身長/美形)←ミナト(赤髪ベリーショート/金と黒のオッドアイ/細身で元気な15歳) ※受けのカズユキは性に奔放な設定のため、攻めのコウ以外との体の関係を仄めかす表現があります。 ※同性婚が認められている世界観です。

鈍感モブは俺様主人公に溺愛される?

桃栗
BL
地味なモブがカーストトップに溺愛される、ただそれだけの話。 前作がなかなか進まないので、とりあえずリハビリ的に書きました。 ほんの少しの間お付き合い下さい。

隣人、イケメン俳優につき

タタミ
BL
イラストレーターの清永一太はある日、隣部屋の怒鳴り合いに気付く。清永が隣部屋を訪ねると、そこでは人気俳優の杉崎久遠が男に暴行されていて──?

【完結】冷血孤高と噂に聞く竜人は、俺の前じゃどうも言動が伴わない様子。

N2O
BL
愛想皆無の竜人 × 竜の言葉がわかる人間 ファンタジーしてます。 攻めが出てくるのは中盤から。 結局執着を抑えられなくなっちゃう竜人の話です。 表紙絵 ⇨ろくずやこ 様 X(@Us4kBPHU0m63101) 挿絵『0 琥』 ⇨からさね 様 X (@karasane03) 挿絵『34 森』 ⇨くすなし 様 X(@cuth_masi) ◎独自設定、ご都合主義、素人作品です。

祝福という名の厄介なモノがあるんですけど

野犬 猫兄
BL
魔導研究員のディルカには悩みがあった。 愛し愛される二人の証しとして、同じ場所に同じアザが発現するという『花祝紋』が独り身のディルカの身体にいつの間にか現れていたのだ。 それは女神の祝福とまでいわれるアザで、そんな大層なもの誰にも見せられるわけがない。  ディルカは、そんなアザがあるものだから、誰とも恋愛できずにいた。 イチャイチャ……イチャイチャしたいんですけど?! □■ 少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです! 完結しました。 応援していただきありがとうございます! □■ 第11回BL大賞では、ポイントを入れてくださった皆様、またお読みくださった皆様、どうもありがとうございましたm(__)m

騎士団で一目惚れをした話

菫野
BL
ずっと側にいてくれた美形の幼馴染×主人公 憧れの騎士団に見習いとして入団した主人公は、ある日出会った年上の騎士に一目惚れをしてしまうが妻子がいたようで爆速で失恋する。

不幸体質っすけど、大好きなボス達とずっと一緒にいられるよう頑張るっす!

タッター
BL
 ボスは悲しく一人閉じ込められていた俺を助け、たくさんの仲間達に出会わせてくれた俺の大切な人だ。 自分だけでなく、他者にまでその不幸を撒き散らすような体質を持つ厄病神な俺を、みんな側に置いてくれて仲間だと笑顔を向けてくれる。とても毎日が楽しい。ずっとずっとみんなと一緒にいたい。 ――だから俺はそれ以上を求めない。不幸は幸せが好きだから。この幸せが崩れてしまわないためにも。  そうやって俺は今日も仲間達――家族達の、そして大好きなボスの役に立てるように―― 「頑張るっす!! ……から置いてかないで下さいっす!! 寂しいっすよ!!」 「無理。邪魔」 「ガーン!」  とした日常の中で俺達は美少年君を助けた。 「……その子、生きてるっすか?」 「……ああ」 ◆◆◆ 溺愛攻め  × 明るいが不幸体質を持つが故に想いを受け入れることが怖く、役に立てなければ捨てられるかもと内心怯えている受け

処理中です...