【完結】極貧イケメン学生は体を売らない。【番外編あります】

紫紺

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第11話 俺も入っていいかな。

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 明日からのスケジュールを二人で確認して、とりあえず今日は終了ということになった。僕はいつも通り大学へ行けばいいと(なんと送迎つき)。
 起床時間も自由で構わないと言われたが、忙しい弁護士の皆様の邪魔になってはいけない。彼らが出払うころに朝食をお願いすることにした。それでも十分1時限目に間に合う。彼らの朝は激早だった。

「事務所に来るときは必ずスーツで。それはこっちで用意してるからクローゼット見て」

 そう言われてベッドルームに行くと、僕用のクローゼットが既に準備されていた。

「これ……着ていいの?」
「ああ。昨日慌てて君のサイズをそろえたからまだ3着しかないけど、そのうちきちんとしたのを採寸に行こう」
「いやいや、これで十分です」

 吊り下げのスーツだろうけど、赤山とかウニクロのスーツとは桁が違いそうだ。しかし、僕のサイズよくわかったな。上着を羽織ってみたところぴったりだ。

「じゃあ、先にお風呂入って。バスタブにお湯貯めてもいいし、シャワーでもいい」

 お風呂……。自慢じゃないが夜逃げ以来、僕はお風呂付の家に住んだことがない。
 ばあちゃんちも近所の銭湯に3日に1度通ってた。後の2日は土間に引いた井戸水で洗う(井戸水は食事用には使ってない)。
 もちろん今のアパートにはついてない。銭湯は近くにあるけど滅多に行けなくて。けど、大学ってすごいところだ。体育館の地下に学生用のジムがあって、そこのシャワーを使えるんだ。

 ――――それがここでは、家どころか部屋に風呂があるのか……感激だ。

 バスルームに行くと、脱衣所にウオーターサーバーがコポコポと音を立てていた。晄矢さんが言ってたのはこれのことか。理由なく飲んでみた。美味しい……。

 ――――なにやってんだ。さっさと風呂入ろ。

 僕は早速バスタブに湯を張り、ゆっくり浸かった。うっとり湯舟で泡と戯れていると、ドアのすりガラスに人影が。

「涼、俺も入っていいかな」

 ひえええっ! う、嘘。僕は思わず仰け反り、溺れそうになってバシャバシャと水音を立てて慌てふためいた。

「あ……あのっ」
「冗談だよ。あはは。涼はホントに反応が素直で楽しいな」

 冗談かよっ。あんまりだ。もう少しで溺れるとこだったよ。

「これ、パジャマ置いておくから」
「え? 僕も持ってきたけど」

 パジャマはもちろん高校時代のジャージだ。

「うん。これもキュートだけど、ここではこっちにしておいて。部屋の外にでることもあるだろうから」

 と言われてしまった……。ジャージをキュートと言ってくれた人は初めてだけど、少しだけ恥ずかしい気持ちになった。



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