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TAKE 49 シーズン2
しおりを挟む「そのまま撮影に入ります。こちらのカンペ、見てください」
突然の「シーズン2」決定。ごく限られたスタッフだけが知っていたようで、知らされていなかった面々は揃って大騒ぎだ。
その雰囲気のまま、僕らは告知撮りをする。監督も人が悪いなあ。涙涙(多分)の最終回の後、これを流すらしい。
「俺達のドラマ、『最初で最後のボーイズラブ』を最後まで観てくださりありがとうございました」
僕らは座ったまま、並んで頭を下げる。それから小芝居開始だ。
「相馬さん、僕たちこれからどうなっちゃうんでしょう。二人の気持ちは一つになったようだけど……」
「そうだな、まだまだ難題がいっぱいだな」
「ということで……気になるこの後の展開は……」
自分たちも(少なくとも僕は)興奮冷めやらぬまま、シーズン2の告知する。これは観てる側にもドキドキが伝わるだろう。監督にうまい具合に使われてしまったな。
――――それでも、僕は素直に嬉しい。
ドラマが好評だったからこその続編だし、自分の演技が認められたことでもある。でも、それよりも僕は……。
――――また享祐と一緒の現場にいられる。駿矢になって、相馬を愛することができるんだ。
それこそが僕に幸せの絶頂を感じさせた。ライトが僕の顔を熱を持って照らす。いつもは眩しくて熱いのに、嬉しくて誇らしく感じていた。
シーズン2はすぐ開始するわけじゃない。原作の新刊が夏には出るらしいので、撮影はその後になる。配信は来年の春を目指してるとのことだった。
「スケジュール開けといてくれよー」
監督の声に反応したのは青木女史。早速アシスタントさんと話をしてる。慌てて東さんもその輪の中に入れてもらってた。
「享祐、大丈夫か? 僕の方はカラっ空だろうけど」
「俺は大丈夫だよ。でも、伊織はこれから忙しくなるんじゃないか?」
例の映画のこと言ってるのかな。選ばれたとしても、夏までには終わるだろう。今のところ、それ以外に長期で拘束される仕事はない。これは由々しきことなんだけど。
「全然余裕だよ。あはは」
享祐は何か言いたそうにしたけれど、言葉にはしなかった。代わりに柔らかな笑みと共に、僕の頭をポンポンと撫ぜるように叩いた。
翌日の最終回配信では、今までで最高の視聴者数、再生回数を記録した。日本のドラマの中では歴代ベスト3に入るらしい。
林田監督や享祐のネームバリュー、原作の知名度のおかげではあるけれど、僕もこの数字の一助を担ったはずだ。そう思うと、素直に嬉しさがこみ上げてくる。
「シーズン2への期待度も大きそうだな」
ようやく開催できたキャスト、スタッフ全員参加の打ち上げ。数字は僕らの宴に十分すぎるほどの華を添えてくれた。
――――シーズン2の撮影が始まるまで、僕はもっともっと成長しなくちゃ。享祐のパートナーとして、恥じない演技をするんだ。
「今夜、部屋に来いな?」
グラスを重ね合わせながら、耳元で享祐が囁く。僕は酔ったわけでもないのに頬を赤らめて、『うん』、と頷いた。
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