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TAKE 22 トレンド入り
しおりを挟むどうしよう。僕は本気で享祐のことが好きだ。芝居なんかどうでもいい(いや、どうでも良くはない)。
このまま、体を重ねることを願ってはダメだろうか。盛り上がった気分のまま、縋ってはいけないだろうか。抱いてと言っては……。
――――何考えてる。駄目に決まってる。これは嘘の関係なんだ。享祐は僕の役作りに協力してくれてるだけだ。その思いに、期待に応えなくてどうする。
僕が暴走したら、困惑どころか迷惑をかけてしまう。享祐の腕の中で呼吸を整えながら、僕は動けないでいる。離れなければとわかっていても、離れがたかった。
けれど、このタイミングで僕のスマホが振動した。物凄く取りたくなかったけど、そんなわけにはいかない。
体を起こし小さな吐息をついてから手に取った。東さんだ。
――――なにか問題でもあったのかも。
急に現実に引き戻された。罵声の嵐だったりしたらどうしようっ。
「はい……東さん、どうしたの?」
恐々に声を出す。隣で享祐がどういうわけかふっと笑う音がした。
『どうしたじゃないですよ! 伊織さん、ツイッタ見てないんですか?』
「え? ツイッタ?」
そう言えば、配信と同時にツイッタを連動するとか言ってた。
配信サービスの場合、いつでも観られるから視聴数の動向が瞬時にはわかりにくい。だからこんなふうに、感想を共有するツイッタ企画を立ち上げ、動向や評判を測るんだ。
『ハッシュタグ最初で最後。トレンドランキング入りしてますよ!』
「えええーっ!!」
僕は掛け値なしに驚いた。思わず大声を出し、享祐の顔を見上げる。あいつは自分のスマホを僕に見せた。
「ほんとだ……トレンド入りしてる……」
『しかも、総じて高評価ですよ! やりましたね、伊織さん! まずは第一関門突破、いや、もう大成功と言っていい!』
それは言い過ぎだろう。でも、第一関門突破は間違いない。次も見てくれる人が多ければ、好スタートと言っていい。
「享祐」
「当然の結果だ。だけど、やったなっ!」
口角がすっと上がる。僕はもう一度享祐の胸に飛び込んだ。でも、今度は俳優、三條伊織としてだ。
それでも心臓がバクバク言ってる。体中に熱が巡って今にも爆発しそうだよ。
「良かった……よかったぁぁ」
涙が溢れて流れていく。
「あ……ごめんなさいっ」
享祐の洋服を汚しちゃ大変だ。僕は慌てて離れ、顔をティッシュで拭いた。
興奮、感激、安堵。全ての感情がぐるぐると回り、安堵に落ち着いていく。僕は大きな息を吐き、ソファーの背もたれに体を預けた。
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