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第2部

第99話 夢オチ

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 今年のクリスマスは、事務所主催のクリスマスライブに参加する。もちろん大トリだ。今や佐山は、事務所の看板だからな。ま、小さい洋楽系の事務所だけど。

 ということで、今はそのリハーサルが何回か入っている。お祭りと言っても、事務所の顔なんだからしっかりやらないとね。
 昨年のクリスマスライブでは、佐山が僕をステージに上げ、詰めかけてくれたファンのみんなに紹介してくれた。思わぬサプライズプレゼントで僕はそこで号泣しちゃったけど、忘れられないシーンだったよ。



 さて、僕の実家の件だけど、そのリハの合間を縫い、一泊二日で二人で帰った。
 久しぶりに帰った実家。考えてみれば、僕が佐山のマネージャーになることを報告に行ったきりだから、2年以上経ってる。

「そうかあ。じゃあ、来年はツアー難しいんだ」
「すみません。お約束していたのに……」
「でも凄いじゃん、ロスなんてカッコいい!」

 僕らはLA行きを家族に話した。詳しくは語らなかったけれど、あっちでオファーがあったことを伝えると、にわかに座は賑わう。
 親父はライブがないことに残念がっていたけど、米国でのオファーに興奮しているのが見て取れた。

「武志さん、クリスマスライブに行けばいいじゃない。何曲かやるんでしょ?」
「そうだな。まだ正月休み前だから、あっちに出張の仕事作るか」
「ホントですか!? 是非来てください。倫、チケット用意できるよな?」

 マジかよ。まあ、出来なくもないけど。親父が佐山のライブに来てくれる。正直な話、照れくさいけど嬉しいや。



 本当に久しぶりに自分のベッドで眠る。しかも、一人だ。佐山は約束通り客間。というか、親父につかまって多分まだ寝かせてもらってないだろう。

 ――――なんだか夢を見てるようだ。ここで目が覚めたら、今までのこと、全部夢だったってオチだったりして。まさかね。

 起きたら僕はまだ高校生で、正夢ならぬ予知夢を見た。なんて。そしたらきっとめっちゃ焦るだろうな。
 音楽畑の仕事に就くのも予想もしてないことだけど、なんたって、男に恋して男に抱かれてふにゃあんってなるんだから。高校生の僕からしたら、寝耳に水とはこのことだよ。

 バカみたいなこと考えてたらなかなか寝付けなくなった。佐山のことも気になるし。
 でも家中ががしんと静まる深夜、あいつが親父に開放されたころには眠りについたようだ。そして、朝起きたら……普通にあいつが隣で寝てた。



 夢でなかったことに安堵しながら、僕はやっぱり焦った。こんなところを家族に見られたくないっ。

「おい、なんだよ、おまえ。さっさと起きて自分の部屋に行けよ」

 僕は声を抑えて佐山を揺さぶる。隣は澪の部屋だし、絶対気付かれる。

「んんーっ……。もう朝?」
「朝だよ。いつの間に来たんだよ」
「目覚めのキスだけしたくて……」
「え……あんっ……」

 佐山は寝ぼけたまま、僕の唇に自分のを合わせる。ここでバタバタするとそれこそ気付かれてしまう。僕はあいつのエロいキスを受け、おぼれそうになるのを必死に耐えた。

 夢でなくて本当に良かった。高校生の時、こんな予知夢は見なかったけど、おまえと出会う今が、現実で良かったと思うよ。




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