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第2部
第65話 愛しい変態
しおりを挟む7月に始まったツアーも残すところ3公演となった。千葉、東京、横浜の3か所だ。
時は移り、いつの間にか九月になっている。あっという間だったな。まだまだ暑い日が続くけど、陽が落ちるのは早くなったし、夜になると風が涼しい。
「そう言えばさ、あんた、俺のこと『変態』って言ったんだってな」
次の千葉公演まではちょっとだけ間が空く。だけど、力技で乗り切った福島はともかく、残りの3公演ではそれは通用しない。
急遽リハを2回入れているんだけど、今日はオフだ。リビングのソファーの上、あいつは僕の膝枕で寝転がっている。
「あ、あいつそんなこと言ってた? いや、あはは……つい……」
「ん? いや、全然怒ってない。ヤツを引かせるためだろ? 引いてなかったけど」
え? 今なんか違和感が……。
「僕はホントのこと言っただけだよ」
「えっ! あんた俺のこと変態だと思ってたのか!?」
何を驚いてんだよ。僕はおまえに自覚がなかったことに驚きだよ。
僕にビキニパンツ履かせたり、電車でお触りしてきたり、エレベーターで迫ったり、バスタブに沈めたり、所かまわず発情するおまえを他にどう形容したらいいんだよ。
「変態以外のなにものでもないだろう? でも安心しろ。僕はちゃんと受け入れてるし、そういうのも含めておまえが好きなんだから」
「倫―!」
膝枕から起き上がり、あいつは形のいい両目をうるうるさせて僕を見た。
「俺はあんたを喜ばせるために生きてるんだ。いっつもあんたをどうやってイかせようか、喜ばせようかと考えてる。それが俺の喜びなんだ」
うん。そういうとこ、紛れもないよな。
「それを変態と呼ぶなら甘んじて受けよう」
なんてよくわからないことを言いながら、僕の腕を取った。
「なんだよ。痛いよ」
「めっちゃムラムラしてきた。襲う」
来たよ。いきなり。言っておくけど、今日はオフだ。つまり昨夜、僕らはいい感じに燃え上がった。エレベーター発バスタブ経由ベッド着だ。今朝だって……。
「わぁっ!」
オフなんだから、パジャマみたいな部屋着を着てる。あいつは僕の足をすくってひっくり返す。そしてサクッとハーフパンツを脱がしてしまった。
「だっ! ちょっと待て……きゃっ!」
佐山に『待て』が通用しないことは重々わかってる。僕の必死の抵抗なんか、ものともしない。体ごと僕に預け、支配してしまう。
「うんうん、抵抗するあんたもそそられてたまんねえ」
「んだよっ! 変態のうえに絶倫とか、始末に負えないなっ」
「誉め言葉として受け取ろう」
「褒めてねえっ、んにゅっ」
僕の手首を万歳させたまま抑え、唇を奪う。乱暴な舌が口の中で暴れて、僕から理性を吹っ飛ばした。
ビキニパンツが窮屈になってきた。僕の股間が膨らむのを押さえつけてるんだ。
そうと知ったあいつは自分のを器用に当てて擦りつけてくる。腰を上下させる度に僕の方こそたまらなくなっていく。思わず声が出てしまった。
「んん……ううっ」
佐山のエロ唇に塞がれているので、のどの中で呻く。これもあいつの大好物だ。火が付いたようにあいつは僕を食い尽くす。
結局、僕の抵抗むなしく、あいつの希望通り僕は喜ばされてしまった。脱がされた服が床に散らばってるのを眺めながら、僕は吐息を漏らす。始末に負えない奴だけど、たまらなく好きなんだ。
あいつのくせっ毛を指で梳く。僕にくっついてウトウトしている愛しい変態。その額にそっとキスをした。
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