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第2部

第37話 古都旅情 1

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 大阪、京都の公演も盛況のうちに終わった。あいつは宣言通り、ステージに上がる直前、僕にキスをした。もちろんディープキスじゃないけれど、お互い感情も高ぶってて興奮状態だから、いつも以上に感じてしまう。

 まさかと思うけど、あいつ下半身を元気にしてステージに挑んでるじゃないよな。佐山のことだから、そのほうがいいパフォーマンスが出来るのかもだけど。

 大阪公演では、たまたま袖に残ってた八神さんに目撃された。もしかすると、佐山はそれを計算したのかもしれない。キスの後、彼は僕をちらりと見た。僕は余裕の笑みを返してやったよ。



 関西が終わると、少し間が出来る。次が東海じゃなきゃ、もっとリラックスできるんだけどな。でも、そういうことと全く関係ない佐山は京都で遊ぼうと言い出した。

「京都なんて中学の修学旅行以来だな。うん、二、三日逗留しようか」
「あ、俺もだ。俺は高校の修学旅行だったけど」

 高校時代か。何となくだけど、佐山は僕に自分の過去を話すきっかけを探してるんじゃないかと思えてきた。この間の企画の話も、『ルーツ』だ。撮影はまだだけど、貴重な話が聞けそうで、僕は今からドキドキなんだ。

 と言うことで、僕は急遽、京都に宿を取った。ネットで人気のデザイナーズホテルとかいうの。部屋数が少ないし、隠れ家的なところが僕ら向きかなと思った。

「ずいぶん部屋が広いな。うん、ここならあんたがどんな声出しても大丈夫そうだ」

 なんで、それ限定なんだよ……。そりゃ、ここで泊まるんだから、そういうことも起きるだろうけど。

「まずは荷物を置いて、散策しようよ。祇園はちらっと通っただけだから、ゆっくり回りたい」
「え? そうなの? まだ暑いぞ」

 季節は真夏から残暑に向かう頃だ。京都の夏は暑いっていうけど本当だな。確かに日が落ちてからのほうが歩きやすいかもしれない。

「夕ご飯の場所探しがてら歩けばいい」

 それもそうだな。そう思った僕は荷物を置き、スマホを眺める。店の候補をいくつかあげるためだ。でも、そんな僕の気持ちを佐山が知る由もない。

「そうと決まったら、それまでまだ時間ある。さ、風呂入ろう。シャワーでもいい」
「おい、なんだよ。もう……」
「なんだよって、ナニしかないだろうが。ほらほら、服脱いで」

 佐山は夏が大好きだ。開放的になるからかもしれないけど、一番は着てるものが少なくて、脱がしやすいからだと僕は思っている。僕を万歳させると、瞬殺で上半身裸にした。

「な、おまえはっ! 昨日もしただろう?」

 昨夜も打ち上げの後、あいつはホテルの部屋に戻るなり、僕をベッドの上で堪能した。

「今日はまだしてない」

 嘘つけ。今朝だって、おまえ、僕を押さえつけてたじゃないか。まあ途中でチェックアウトの時間になって、渋々切り上げたんだけど。ふう、その時の物足りなさを思い出しちゃったじゃないか。

「物足りないだろ?」

 僕の心を読んでるのかよっ。かぁっと顔が熱くなるのを、あいつが見逃すはずはない。勝ち誇ったような顔をして、僕に口づけを迫る。

「んん……」

 あいつのエロさ満載の唇が僕のそれを捉える。まるで狩人に魅入られた獲物のように、僕は射抜かれ、早々に降参してしまう。蠢く舌が魂ごと持っていく。鼓動も先を急いで走るよ。
 逞しい両腕に抱きすくめられ、僕は吐息を漏らす。観念したように、あいつのがっしりした背中に腕を回した。

「シャワー行くか?」
「うん……」

 逆らうことなど、端から出来るわけない。無駄な抵抗だ。僕はあいつにお姫様だっこされ、シャワー室へと運ばれる。それから小一時間、僕らは早くもベッドのシーツを皺だらけにしてしまった。


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