135 / 208
第2部
第29話 無人島
しおりを挟むリハの合間のプロモーション。出来るだけ佐山に負担が掛からないようにとは思うけど、ソロでやってる分、何もかも一人で請け負うのでそうもいかない。
ただ、あいつは僕と付き合ってから、風邪はおろか、具合が悪い様子を見せたこと、一度もなかった。本人は、僕とえっちすることが健康の秘訣だとか言って譲らないんだけどね。
「だって、あんたとえっちするためには元気でないとな。だから、俺はいっつも元気なんだ」
おまえのあそこもいっつも元気だよな。
「今日の雑誌のインタビューでさ。無人島に何を持っていくかって聞かれたんだよ」
本日のプロモーションに、雑誌のインタビューがあった。まあ、よく聞かれる題材ではあるけれど、まるでアイドル扱いだな。大丈夫か。
「なんて答えた?」
「もちろん、恋人。つまり、あんただ」
……それは反則だ。それでは無人島じゃなくなるし、第一僕は『モノ』ではない。
「そしたら、『モノ』にしてください、って言われてさ」
「当然だな」
「モノとか思ってないよ。もちろん。でも、俺はあんたと離れることは考えたことないからさ。で、この質問はなかったことになった」
そうか。僕が少し席を外した間にそんなやり取りが。
インタビュアーは馴染みの記者さんだったけど、僕ににやついた表情を向けてたのはそういう理由だったんだ。まあ、彼もこの質問は佐山にとって愚問だったと思い知ったろう。
「でも僕、サバイバルに向いてないから、無人島じゃ役に立たないぞ」
別にお坊ちゃまってわけじゃないけど、キャンプとか苦手だし、あまり経験がない。海外にも、欧米の都市、所謂文明の地を中心に旅行していた。
「そんなの、俺に任せておけ。俺はどこでも生き延びられる」
佐山とキャンプに行ったことはないけど、何となくそれは理解できる。なんでも器用にやれる奴なんだ。
「金がなくて、ほぼホームレス状態のときもあったからな。でも、ちゃんと生活できてた」
「え? それは初めて聞いたな」
佐山は過去の話をしたがらない。だからこれはいい兆候なのかも。高校卒業後、音楽とバイトの日々だったころの話かな。
「そうだっけ? 俺、マッチなくても火を起こせるよ」
どこの原始人だよ。てか、そこまで?
「無人島でも、倫に苦労はさせない。ちゃんと家を建てて、食べるものも調達する。たとえ子供ができても楽しく暮らせる」
「いや、子供はできないだろう」
「例えばだよ。でも、悪くないな。無人島で二人きり。うん、楽しそうだ」
なんだか佐山の思考に僕まで惑わされる。無人島(二人いるところで無人島じゃあないけど)、ヤシの木の下にあいつが作った家があって、僕はそこで料理なんかしてる。佐山は海で釣った魚を持ってきて……、『今日は大漁だったぞー!』と笑顔満載で叫ぶ。
「夜になったら、降るほどの星空が広がって……」
あ、やっぱり、妄想はそこにいきつくよね……。佐山はあがりっぱなしの口角に、三日月みたいな双眸を僕に向けた。僕は生えてもいないのに、髭面の佐山が思い浮かぶ。
「無人島、最高!」
そう雄たけびを上げて、佐山は僕をソファーに押し倒す。おまえさ、それ、無人島でなくてもいいんじゃないか?
「無人島でも、髭剃ってくれ……ん、もう……」
僕の言うことなんて、気にもせず、エロ唇を押し付けてくる。野生と化したおまえを受け入れるのは、多分僕しかいないよな。確かに、無人島には僕を持っていかないと、おまえの死活問題だろう。
「あ……んっ、はあっ」
妄想で火がついたあいつは手が付けられない。乱暴に衣服を脱がすと僕の体に身を沈める。そして、大きな手と柔らかな舌で僕の下腹部で硬くなってるものをもてあそぶ。
あいつの癖っ毛を指に絡ませて僕は喘ぎ声をあげた。やがて僕らは互いに一つになりたがって……。
――――僕も……無人島にはおまえと行くよ。おまえなしでは、生きていけそうにないから。
無人島の妄想は、佐山をより一層元気にさせてくれた。あの記者さんも、そんなことに貢献したとは思いも寄らなかっただろうな。
0
お気に入りに追加
102
あなたにおすすめの小説
スパダリ様は、抱き潰されたい
きど
BL
プライバシーに配慮したサービスが人気のラグジュアリーハウスキーパーの仕事をしている俺、田浦一臣だが、ある日の仕事終わりに忘れ物を取りに依頼主の自宅に戻ったら、依頼主のソロプレイ現場に遭遇してしまった。その仕返をされ、クビを覚悟していたが何故か、依頼主、川奈さんから専属指名を受けてしまう。あれ?この依頼主どこかで見たことあるなぁと思っていたら、巷で話題のスパダリ市長様だった。
スパダリ市長様に振り回されてばかりだけと、これも悪くないかなと思い始めたとき、ある人物が現れてしまい…。
ノンケのはずなのに、スパダリ市長様が可愛く見えて仕方ないなんて、俺、これからどうしたらいいの??
時をかける恋~抱かれたい僕と気付いて欲しい先輩の話~
紫紺(紗子)
BL
大学生になったばかりの花宮佳衣(はなみやけい)は、最近おかしな夢をみるようになった。自分が戦国時代の小姓になった夢だ。
一方、アパートの隣に住むイケメンの先輩が、妙に距離を詰めてきてこちらもなんだか調子が狂う。
煩わしいことから全て逃げて学生生活を謳歌しようとしていた佳衣だが、彼の前途はいかに?
※本作品はフィクションです。本文中の人名、地名、事象などは全て著者の創作であり、実在するものではございません。
【完結】嘘はBLの始まり
紫紺(紗子)
BL
現在売り出し中の若手俳優、三條伊織。
突然のオファーは、話題のBL小説『最初で最後のボーイズラブ』の主演!しかもW主演の相手役は彼がずっと憧れていたイケメン俳優の越前享祐だった!
衝撃のBLドラマと現実が同時進行!
俳優同士、秘密のBLストーリーが始まった♡
※番外編を追加しました!(1/3)
4話追加しますのでよろしくお願いします。
幸せの温度
本郷アキ
BL
※ラブ度高めです。直接的な表現もありますので、苦手な方はご注意ください。
まだ産まれたばかりの葉月を置いて、両親は天国の門を叩いた。
俺がしっかりしなきゃ──そう思っていた兄、睦月《むつき》17歳の前に表れたのは、両親の親友だという浅黄陽《あさぎよう》33歳。
陽は本当の家族のように接してくれるけれど、血の繋がりのない偽物の家族は終わりにしなければならない、だってずっと家族じゃいられないでしょ? そんなのただの言い訳。
俺にあんまり触らないで。
俺の気持ちに気付かないで。
……陽の手で触れられるとおかしくなってしまうから。
俺のこと好きでもないのに、どうしてあんなことをしたの? 少しずつ育っていった恋心は、告白前に失恋決定。
家事に育児に翻弄されながら、少しずつ家族の形が出来上がっていく。
そんな中、睦月をストーキングする男が現れて──!?
シャワールームは甘い罠(R18)
紫紺(紗子)
BL
鮎川真砂は、ちょっとタレ目が可愛いラノベ作家。
惚れっぽくて尻軽なところが災いし、毎回恋愛で痛い目に合っている。
そんな真砂がセレブ御用達のジムに通うことに。
そこで出会ったのは、彼が自らのラノベで描いていたキャラ達にそっくりな
筋肉イケメンたち!
何事もなく終わるわけがない。
※本作はエブリスタ様でも公開中です。そちらでは、スター特典として番外編も公開しています。
僕を拾ってくれたのはイケメン社長さんでした
なの
BL
社長になって1年、父の葬儀でその少年に出会った。
「あんたのせいよ。あんたさえいなかったら、あの人は死なずに済んだのに…」
高校にも通わせてもらえず、実母の恋人にいいように身体を弄ばれていたことを知った。
そんな理不尽なことがあっていいのか、人は誰でも幸せになる権利があるのに…
その少年は昔、誰よりも可愛がってた犬に似ていた。
ついその犬を思い出してしまい、その少年を幸せにしたいと思うようになった。
かわいそうな人生を送ってきた少年とイケメン社長が出会い、恋に落ちるまで…
ハッピーエンドです。
R18の場面には※をつけます。
LAST TORTURE 〜魔界の拷問吏と捕虜勇者〜
焼きたてメロンパン
BL
魔界の片隅で拷問吏として働く主人公は、ある日魔王から依頼を渡される。
それは城の地下牢に捕らえた伝説の勇者の息子を拷問し、彼ら一族の居場所を吐かせろというものだった。
成功すれば望むものをなんでもひとつ与えられるが、失敗すれば死。
そんな依頼を拒否権なく引き受けることになった主人公は、捕虜である伝説の勇者の息子に様々な拷問を行う。
男の子たちの変態的な日常
M
BL
主人公の男の子が変態的な目に遭ったり、凌辱されたり、攻められたりするお話です。とにかくHな話が読みたい方向け。
※この作品はムーンライトノベルズにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる