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第2部
第19話 動画配信
しおりを挟むインスタやツイッタは僕が撮った写真を上げれば良いので、結構真面目に更新してる。バリ島に旅行してたときも、風景の写真を合わせて何枚も投稿した。フォロワー数も増えたよ。
だけど、動画配信のウイチューブは佐山がやらないとどうにもならない。ミニアルバムのティーザー映像から何も更新してないんだ。
これは良くない。せめてファンでいてくれるみんなにはお届けしないと。
ということで、レコーディングの最中ではあるけれど、撮影を敢行することにした。
「どの曲いくかな」
ニューアルバムの新曲をアコースティックバージョンにして演奏する。アルバムを心待ちにしてくれるみんなには嬉しいはずだ。
「ラストの曲がいいんじゃない? 僕もこれ好きだ」
水口さんからは、配信の評判が良ければ初回特典に動画を付けてもいいと言われてる。内製できるならそれに越したことはない。頑張らなきゃ。
「ん。じゃ、それでいこう」
夕食後、自宅の作業場から使わないギターなんかを運び出す。ここが撮影場所だ。
僕はスタンドにスマホをセットして角度を調整。あいつがカッコよく見える位置とか、多分僕が一番分かってる。ま、どっから見てもカッコいいけどね。
その曲はバリのウブドで生まれたものだ。アルバムではパーカッションを入れて南国情緒満載だけど、アコースティックになると、ウブドの田園風景が浮かんでくる。
僕は佐山のスマホも使って動画を撮った。あとは編集次第だけど、良いものが出来そうだ。再生回数伸びるといいな。
「あ、片付けるの待った」
「え? 別バージョンも撮るか? 別の曲でやってみたいなら大歓迎だけど」
僕がスタントからスマホを外そうとしたら佐山が待ったをかけた。いつも非協力的な奴だから、自分から撮影を志願するなんて凄い進歩だ。
「違う。別のを撮るんだよ。あんたもたまには被写体になれ」
「わっ、なんだよっ」
佐山は僕を自分の方に引き寄せた。そしてリモートボタンをポチっと押す。
「や、やめっ! 変な動画撮るな……ううんっ」
訴えてやる、この変態野郎っ。
佐山のキスを受けながら僕はそんなことを思う。あいつは自分の曲をBGMみたいに流して演出する。舌を絡ませ僕を黙らせると、器用に服を脱がした。
「待てっ、あんっ!」
カメラの前で脱がされるのはやっぱりハズイ。抵抗するんだけど、あいつの巧妙な愛撫に思考がショートする。
「後で二人で見よう。俺は見たいんだ……あんたの、乱れる様を」
熱い吐息を吐きながら佐山が囁く。
「いつも……見てるくせに……」
「まだまだ足りないんだ……ほら、座って」
佐山は僕を椅子に座らせると、いよいよ本気になって僕を襲う。
「ああっ……やめ……」
ヤバい。気持ちよくなってきた。でも、映像に残されるのは恥ずかしすぎる。僕は喘ぎながらもリモコンのボタンを押そうと手を伸ばす。だけど、佐山はそれを、部屋の外にぽーんと投げてしまった。
――――だあっ。もう、馬鹿やろう。
僕は観念した。こうなったらもう存分に楽しもう。あいつの少しくせ毛の髪を指に絡め、僕は貪欲な獣になる。
これから動画配信する度に、こんなのを要求されたらたまらない。あいつが『もう充分』と白旗あげるまで、求めてやることにした。
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