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第1部
間奏話<倫目線>エピソード0
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※このお話は、倫が初めて佐山のライブに行った時のお話です※
僕はどうしてしまったんだろう。彼女に連れられてきたライブ。ライトを浴びて輝くギタリストに釘付けだ!
オールスタンディングの小さなライブ会場、集まったファンたちが満員電車並みの混雑でひしめき合っている。でも、音楽がひとたび始まると、そんな熱すら興奮に繋がる。
激しいロックがホールに響き渡り観客を魅了している。そしてその音のなかで、最も際立ち攻撃してくるのが彼のギターだ。まるでそれは独裁者のようにこの場を支配し、サウンドの全てを導いているかのよう。
僕はあまり音楽の造詣は深くない。このライブにも彼女に誘われて期待もせずにやってきたのだ。
――――大きな手が滑らかにギターの竿を這っていく。ぞくぞくする。
前から五番目くらいに立っていたのが、どんどん押されて演者の表情まで見える位置まで来てる。音に侵されながらも僕はそれを司るギタリストから目が離せなくなっていた。
大柄な彼は彫りの深い日本人離れした男前だ。イケメンのような軽いイメージではなく、どこか色気もある正統派なんだよ。
筋肉質の肩や腕を剝き出しにして一心不乱に演奏している。その様が僕のなかでクローズアップされ、音が後からついてくるほどだ。少しパーマがかった髪も汗で光り神々しい。僕は息をするのも忘れて魅入ってしまった。
「めっちゃカッコよかったねえ! やっぱりこのバンドは化けるよ」
彼女が興奮気味に僕に話しかけてくる。
「ね、あのギタリストの名前教えて」
隣にいる女性が彼女であること、僕からすっかり抜け落ちている。いやその認識すらないまま問いかけた。終演後も興奮が冷めやらぬ頭の中には彼のことしかなかったんだよ。
「え? ああ、えっと。佐山さんのことね。うん、でも彼はバンドメンバーじゃないんだ。有名な人だけど、サポメンでさ」
「え、そうなの? 佐山……巧」
僕は彼女が持っていたリーフレットを奪い取り、食い入るように目を走らせる。不満そうな彼女の様子など全く気にならなかった(ひどい奴だな、僕は)。
サイン会があると言うので、僕は多くのファンと共にロビーへと流れていく。もちろんお目当てはギタリスト・佐山巧だ。彼の列に並ぶと、ファンと思われる人の会話が聞こえてきた。
「佐山がサインするなんて珍しいよな。これは絶対お宝だぞっ」
「やっぱりあいつのギターは最高だよなあ」
なんだか自分が褒められているようで高揚してくる。やっぱり彼は人気あるんだ。
因みに彼女は、サインのために並ぶと言う僕に冷たい視線を送って帰ってしまった。だけど、当の僕はそんなこともはやどうでも良くなっていた(ホントにひどい奴だな、僕は)。
「君は初めてだね」
「はい! 佐山さんのギターに感動しました!」
ようやく回って来た僕の番。顔が熱い。
間近で見る佐山さんはマジでカッコいい。二重で切れ長の双眸は、瞳がくっきりしてキラキラと輝いている。少し厚めの唇がなんともセクシーだ。がっしりした感じなのに足が長くてモデルみたいっ。
いや、そこじゃないだろ。僕は激しいなかにも哀愁を帯びた誘うようなギターに魅了されたんだ。
――――だけど、彼自身がギターサウンドそのものだ……。
僕は何も用意していなかったので、物販で購入したてのTシャツを差し出した。彼はそこに黒いサインペンを滑らせる。大きな手が男らしくて胸がキュンとする。
――――え?
サインの下に数字が書かれている。えっと……これはなに……。
ぼんやりとペンの先を見ている僕の手を、佐山さんがグッと握った。握手もしてくれるんだから当たり前だけど、胸が跳ね飛ぶ。しかも彼は僕を引き寄せ耳元で囁いた。
「連絡……待ってるから」
心臓が口から飛び出しそうだった。
『倫、こっちへ……好きだよ……』
『佐山さん……あ……っ……』
彼の大きな手が僕の顎にかかる。セクシー過ぎる唇が僕のそれを覆うと、滑らかな舌が絡められて……。
『んん……あう、ん』
そして大きな手はするすると僕の背中を這い、敏感な場所へと……。
「うわああっ!」
僕はベッドの上で跳ね起きた。枕もとには例のTシャツが置いてある。これを見つめながら寝落ちしてしまったのだ。
あれから三日。僕は毎晩のように彼に抱かれる夢を見ていた。男に抱かれるなんてもちろん経験がない。想像でしかないセックスだから、いつも寸でのところで目が覚めてた。下半身はもちろん臨戦状態。あはは……笑えねえ。
―――――死にそう……もう、限界だ。
スマホを手に取る。既に番号は登録済みだ。僕は意を決して通話ボタンを押した。
僕はどうしてしまったんだろう。彼女に連れられてきたライブ。ライトを浴びて輝くギタリストに釘付けだ!
オールスタンディングの小さなライブ会場、集まったファンたちが満員電車並みの混雑でひしめき合っている。でも、音楽がひとたび始まると、そんな熱すら興奮に繋がる。
激しいロックがホールに響き渡り観客を魅了している。そしてその音のなかで、最も際立ち攻撃してくるのが彼のギターだ。まるでそれは独裁者のようにこの場を支配し、サウンドの全てを導いているかのよう。
僕はあまり音楽の造詣は深くない。このライブにも彼女に誘われて期待もせずにやってきたのだ。
――――大きな手が滑らかにギターの竿を這っていく。ぞくぞくする。
前から五番目くらいに立っていたのが、どんどん押されて演者の表情まで見える位置まで来てる。音に侵されながらも僕はそれを司るギタリストから目が離せなくなっていた。
大柄な彼は彫りの深い日本人離れした男前だ。イケメンのような軽いイメージではなく、どこか色気もある正統派なんだよ。
筋肉質の肩や腕を剝き出しにして一心不乱に演奏している。その様が僕のなかでクローズアップされ、音が後からついてくるほどだ。少しパーマがかった髪も汗で光り神々しい。僕は息をするのも忘れて魅入ってしまった。
「めっちゃカッコよかったねえ! やっぱりこのバンドは化けるよ」
彼女が興奮気味に僕に話しかけてくる。
「ね、あのギタリストの名前教えて」
隣にいる女性が彼女であること、僕からすっかり抜け落ちている。いやその認識すらないまま問いかけた。終演後も興奮が冷めやらぬ頭の中には彼のことしかなかったんだよ。
「え? ああ、えっと。佐山さんのことね。うん、でも彼はバンドメンバーじゃないんだ。有名な人だけど、サポメンでさ」
「え、そうなの? 佐山……巧」
僕は彼女が持っていたリーフレットを奪い取り、食い入るように目を走らせる。不満そうな彼女の様子など全く気にならなかった(ひどい奴だな、僕は)。
サイン会があると言うので、僕は多くのファンと共にロビーへと流れていく。もちろんお目当てはギタリスト・佐山巧だ。彼の列に並ぶと、ファンと思われる人の会話が聞こえてきた。
「佐山がサインするなんて珍しいよな。これは絶対お宝だぞっ」
「やっぱりあいつのギターは最高だよなあ」
なんだか自分が褒められているようで高揚してくる。やっぱり彼は人気あるんだ。
因みに彼女は、サインのために並ぶと言う僕に冷たい視線を送って帰ってしまった。だけど、当の僕はそんなこともはやどうでも良くなっていた(ホントにひどい奴だな、僕は)。
「君は初めてだね」
「はい! 佐山さんのギターに感動しました!」
ようやく回って来た僕の番。顔が熱い。
間近で見る佐山さんはマジでカッコいい。二重で切れ長の双眸は、瞳がくっきりしてキラキラと輝いている。少し厚めの唇がなんともセクシーだ。がっしりした感じなのに足が長くてモデルみたいっ。
いや、そこじゃないだろ。僕は激しいなかにも哀愁を帯びた誘うようなギターに魅了されたんだ。
――――だけど、彼自身がギターサウンドそのものだ……。
僕は何も用意していなかったので、物販で購入したてのTシャツを差し出した。彼はそこに黒いサインペンを滑らせる。大きな手が男らしくて胸がキュンとする。
――――え?
サインの下に数字が書かれている。えっと……これはなに……。
ぼんやりとペンの先を見ている僕の手を、佐山さんがグッと握った。握手もしてくれるんだから当たり前だけど、胸が跳ね飛ぶ。しかも彼は僕を引き寄せ耳元で囁いた。
「連絡……待ってるから」
心臓が口から飛び出しそうだった。
『倫、こっちへ……好きだよ……』
『佐山さん……あ……っ……』
彼の大きな手が僕の顎にかかる。セクシー過ぎる唇が僕のそれを覆うと、滑らかな舌が絡められて……。
『んん……あう、ん』
そして大きな手はするすると僕の背中を這い、敏感な場所へと……。
「うわああっ!」
僕はベッドの上で跳ね起きた。枕もとには例のTシャツが置いてある。これを見つめながら寝落ちしてしまったのだ。
あれから三日。僕は毎晩のように彼に抱かれる夢を見ていた。男に抱かれるなんてもちろん経験がない。想像でしかないセックスだから、いつも寸でのところで目が覚めてた。下半身はもちろん臨戦状態。あはは……笑えねえ。
―――――死にそう……もう、限界だ。
スマホを手に取る。既に番号は登録済みだ。僕は意を決して通話ボタンを押した。
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