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第1部

第75話 期待を裏切らない奴

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 朝だ。最近、少しひんやりとしてきた。毛布を足した方がいいかな。
 ところで、朝から僕の股間を弄る奴がいるんだが。そんなの一人しかいないけど。今朝はあいつの方が早く起きたんだな。先手を取られてしまった。

「おい……やめろよ」

 本心ではないが、一応そう言ってみる。

「ん? でも、かなり固くなってるぞ」

 わかってるよ。気持ちいいもん……。すると、あいつはショーツを脱がそうとする。

「わっ、何するんだよ!」
「何って……ナニしかない……あっ、そうか。こっちが先だよな」

 佐山が僕の目の前に現れた。少し寝ぐせが付いている髪がなんだか可愛い。

「おはよ」

 そのまま腕立て伏せでもやるように僕の唇目掛けて体を落とす。重なると、体ごと預けて僕の息を塞ぐ。

「んん……あふっ」

 両腕で僕の頬から首の後ろを固め、少し顎を上げさせる。あいつの丁度良い角度にして僕の舌を貪る。朝というのに随分濃厚なキスだ。僕の腹の上で、あいつのモノが硬くなってるのがわかった。

 ――――なんだよ。自分のだって相当臨戦状態じゃないか。

 なんて、あいつのはほぼ常時そうなんだけどね。

「いい朝だ」

 佐山がようやく唇を離してくれた。僕はほうっと息を吐く。で、ここで反撃。ヤツの固くなってるのを両手でつかむ。

「わっ」

 僕は起き上がり、あいつの下半身に突撃。佐山はあえなくベッドに沈んだ。さくっとボクサーパンツを剥がして反り立ってるものを愛撫した。

「んんっ……やられた」

 形勢逆転。僕はあいつに髪の毛をくしゃくしゃにされながら、十分に愛してやった。



 防音室、つまり佐山の作業部屋から今日もあいつのギターが漏れ聞こえてくる。昨日何度も弾きなおしていたところが、どうやら決まったようだ。ワンコーラス通しで弾かれている。

 ――――いい曲だな。転調されるところがめっちゃカッコいい。

 依頼のあった曲はほとんど提出済みだから、これは新しいアルバム用のかな。何の制約もないなか自由に作れるその楽曲達は、やっぱりあいつらしくて僕は好きだ。

 曲の骨格のようなものを幾つか作って、佐山は旅行先に持っていくつもりなんだ。景色だけじゃなく、そこで吸う空気や匂い、生まれる感情なんかを吸収して、骨組みに肉を付け、よりよいものへと昇華させる。
 だから、あいつが『南の島に行く』っていうのは、何も無理なお願いなんかじゃないんだよ。事務所からいい返事が来るといいな。


「南の島かぁ。いいよなあ。こういうところであんたを抱いたら、また違う味がするんだろうなぁ。それが楽しみで仕方ない。俺達の希望、叶えてくれるかといいなあ」

 作業部屋から出てきた佐山が、僕が広げていた旅行のパンフを見て言った。鼻息も荒く、頬を紅潮させて。

 ……だよな。おまえの目的はそっちだよな。僕の甘い想像はただの妄想となった。だけど、色んな意味で期待を裏切らない奴だな。
 僕はパンフを眺め見ている佐山の肩に、こてんと頭を乗せた。



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