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第1部
第72話 僕がマネージャーになったワケ その後
しおりを挟むこうしてスタートした僕のマネージャー業。任せろと言った手前、やってみせないと。と、かなり気負ったスタートになった。
僕にはあまり貯金がなかったし、二人分の収入を得ないとだめだ。とは言え、佐山を消耗品にしたくない。あいつの実力に見合うよう大事に扱ってもらいたかった。だから、営業にしても安売りだけは絶対にしなかった。
そのやり方は半年もしないうちに結果が付いてきた。質の高い仕事が多く入ってきて、ちょっとした売れっ子ミュージシャンみたいになってきた。これもあいつの腕がいいおかげだけれど、少しは僕の努力も功を奏したかな。
「なんか最近、みんなが俺のことを大物扱いするんだよな。昔は重宝する何でも屋みたいな感じだったのに」
リハーサルの休憩中。楽屋で佐山がそう漏らした時は嬉しかったな。僕が目指していたのはこれだから。
僕は値段や名前ばかりで仕事を選んでいたわけじゃないんだ。やっぱりいい仕事をする人は熱意や準備が違う。そんな人たちの熱い想いを大事にしていけば、人の見る目も変わってくるんだよね。
「おまえの実力がみんなにわかってきたんだよ。認められたってことさ」
「倫のおかげだな。あんたは本当に凄い。他の連中からも評判いいぞ」
「え……ほんと? それは、嬉しいな」
佐山が僕の頭を自分に寄せてキスをする。例え懐具合が厳しくても我慢して良かった。佐山には無理をさせないよう気を配り、節約と知恵で乗り切ってきたけど、佐山は気付いていたかな。
「あんたには無理させてたからな。俺も今までとは心入れ替えて頑張ったよ」
「佐山……」
「でも、お陰で予想外に実力付いたし、やってて楽しいと思えるようになったんだぜ」
楽屋だというのに、佐山は僕を抱きしめてきた。所かまわずの奴だから、焦っちゃうよ。
「キスしていいか?」
「あ、おい……待てよ」
「いいだろ? 今、誰もいない」
リハ中にメンバーたちが話し合いをしだして、僕らは外野なんで席を外したんだ。こんなことは割とよくある話で。まあ、みんなそれだけ音楽に真剣なんだよね。
「誰か来るかもしっ……」
相変わらず僕の話を聞かない。佐山は僕の顔を大きな手で包み込むと唇を押し付けてくる。あいつの弾力のある唇に触れると、僕は思考停止に陥ってしまう。エロくて仕方がない唇といやらしさ満載の舌が僕を夢中にさせる。
「あふっ、うっ……」
息するのがやっとの僕の体を支えるように佐山は抱きしめる。ああ、もう欲しくなるんだけど! どうしてくれるんだよ。
その僕の気持ちが通じるのか、あいつが僕の股間に手を伸ばしてくる。止めないといけないのに、抗えない。
――――んんっ!
「おおい! 佐山!」
誰かが突然扉を開けた。僕らは弾けたように体を離す。知らん顔してその辺にあった雑誌を僕は読んでるふりをする。顔は熱いし心臓バクバクだよっ。
「ど、どした?」
「ああ、ちょっとおまえも話に入ってくれよ。全員勝手なこと言いだしてさ」
「あー。もう仕方ないなあ」
頭を掻きながら、佐山が腰を上げる。部屋に来たメンバーは自分たちのことで頭がいっぱいだったようで気が付かなったみたいだ。良かった。あははっ。佐山は僕に振り向き、ウインクして部屋を出て行った。
こんな感じで僕らの二人三脚は始まったんだ。今や佐山はソロデビューを果たし、僕らの世界は一挙に広がった。だけど、僕らの関係はあの時のまま、ちっとも変わらない。甘々なままだよ。
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