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第1部
第69話 僕がマネージャーになったワケ 3
しおりを挟む僕は次の日、会社に退職願を出した。
実際には少なくともひと月前に出さないといけないから、すぐには辞められない。それでも僕はもう限界だったんだ。その場で休みを取り、北海道へ飛んだ。
「倫! どうしたんだっ」
昨夜のことなんか全く覚えちゃいない佐山が僕を見て驚いていた。いや、それは一瞬のこと、あいつは僕に突進して抱き着いてきた。
「倫だぁ……倫の匂い……」
僕が仏頂面していることにも気づかず、あいつは涙を流さんばかりに僕を抱きしめる。
場所はライブハウスのホール。リハーサル中だったから、そこにはバンドメンバーやスタッフが普通にいた。僕はみんなの視線に気づき、佐山を宥めようとしたんだけど……。
「さやっ……んんっ」
佐山は僕の言葉を奪うようにキスをした。あいつの熱い思いがあの色気満載の唇から溢れ出てくる。柔らかい舌が僕の舌を探しているのがわかる。僕はもう人目を気にしなかった。
実を言うと、そんなのどっかにいっちゃった。佐山が好きで、好き過ぎて、もう誰にも渡したくなかったんだ。だから、みんな見てろって思った。こいつは僕のことが好きなんだ。僕らは愛し合ってるんだ。邪魔することなんて誰にもできないんだって。
「倫、こっちこい」
佐山は僕の手を引いてホールの奥に入っていった。
「おいっ! みんな邪魔すんなよ!」
ぽかんとしているメンバーやスタッフにそう言い放った。さすがに僕は恥ずかしくなって俯いてしまった。
このライブハウスは合宿所みたいなのが併設されていて、地方から来るミュージシャンが泊まれるようになっていた。佐山はそこの自分の部屋に僕を連れて行った。
「会いたかった……」
乱れたままのベッドに僕を横たわらせ、また熱いキスをする。佐山の逞しい胸が僕を包み込む。僕は背中に両腕を回して、ぐっと力を込めた。
本当は、昨夜のことを問いただしたかった。あの金髪美女は誰なんだって。この乱れたベッドはどういうことなのかって。だけど、僕の体を貪るように愛撫するあいつに、そんな疑問は消えてなくなった。こいつが僕以外の人に触れることなどあるわけないって思えたからだ。
「はぁっ……ああ……」
あいつを欲しがってやまない僕のモノが愛撫されている。それを感じるだけで昇天してしまいそうだ。セクシーな唇と蠢く舌が僕に声を上げさせる。たまらなくて佐山のくせ毛を指に絡ませた。
「ああぁっ……」
まるで初めて愛してもらったときのように、激しい感動のまま僕は上り詰めた。
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