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第1部

第68話 僕がマネージャーになったワケ 2

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 お互いが一時も離れていられない。そんな恋をしたての高校生みたいな僕らに、社会は優しくない(当然だけど)。
 佐山はそれでもフリーランスなので、僕よりかは自由が利く。なのに、頼まれたサポートやライブのリハがいくつも重なることがあった。時々仕事がダブってることすらあって、あたふたしてる。要するに仕事のマネジメントがいい加減なんだ。

「頼まれると、何も考えずに受けるからだよ」

 見かねた僕は、佐山の仕事を捌くようになった。仕事中に電話がかかってきたりして、上司に睨まれたことも少なくない。そのうち、これを仕事にしようかと思い始めたんだ。

「倫、俺のところに越してこないか。部屋数は少ないけど、割と広いし」

 佐山からは再三誘われていた。でも、あいつの家にいると、絶対朝起きれない。会社に行かしてくれないんだよ。だから、最近は休み前しか泊まらないことにしてる。それって僕らにとって、かなりきついんだけど、そうするしかなかったんだ。

 ――――もう、今の仕事を辞めて、本格的に佐山のマネージャーをやろうか。でも、食べていけるかな。

 同棲すれば、確かに部屋代とかは節約できる。それに、僕が仕事を捌くようになってから、佐山の信用も上がったし、いい感じで収入が増えてきていた。
 それでも僕は二の足を踏んでいた。

 しかし、その年の夏の終わり、そんな僕をその気にさせる事件が起こったんだ。


 佐山がサポートメンバーとしてツアーに帯同することになった。東北から北海道まで回るので、スケジュールでは10日間行きっぱなしだ。ライブハウス中心に活動しているグループだけど、インディーズデビューを果たし、イケイケどんどんのバンドなんだ。
 離れるのも辛かったけど、それ以上に佐山を気に入ってるメンバーや追っかけのファンがいて、気が気じゃなかった。

「心配するな、浮気はしないから。というか、俺も心配だよっ」

 僕たちはまるで今生の別れさながらの切なさで見つめ合う。出発の前夜は乱れに乱れて求め合った。僕は初めて、壊れるかもって思ったほどだ。

 ――――一緒に行きたい。付いて行きたい……。

 僕はあいつがいない間、佐山の部屋に寝泊まりした。少しでもあいつを感じたかったからだ。毎日会社には行ったけど、全くやる気が起こらなかった。

「元気にしてるか?」

 ライブが終わると、必ず佐山から電話があった。

「倫を抱きたくてどうにかなりそうだ」

 電話口でそんなことを言われると、つい体が熱くなる。今すぐ傍に行って、あいつのそそり立ってるものに口づけしてやりたい。


 ところが、旅立ってから五日後、あいつは驚愕のシーンを送ってきた。恐らく、あいつ自身ではなく、メンバーの誰かがふざけて送ってきたんだろうけれど。
 ライブ後の打ち上げ、佐山は上半身裸で酔っ払い、金髪に染めた女性にキスをされていた。





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