74 / 208
第1部
第68話 僕がマネージャーになったワケ 2
しおりを挟むお互いが一時も離れていられない。そんな恋をしたての高校生みたいな僕らに、社会は優しくない(当然だけど)。
佐山はそれでもフリーランスなので、僕よりかは自由が利く。なのに、頼まれたサポートやライブのリハがいくつも重なることがあった。時々仕事がダブってることすらあって、あたふたしてる。要するに仕事のマネジメントがいい加減なんだ。
「頼まれると、何も考えずに受けるからだよ」
見かねた僕は、佐山の仕事を捌くようになった。仕事中に電話がかかってきたりして、上司に睨まれたことも少なくない。そのうち、これを仕事にしようかと思い始めたんだ。
「倫、俺のところに越してこないか。部屋数は少ないけど、割と広いし」
佐山からは再三誘われていた。でも、あいつの家にいると、絶対朝起きれない。会社に行かしてくれないんだよ。だから、最近は休み前しか泊まらないことにしてる。それって僕らにとって、かなりきついんだけど、そうするしかなかったんだ。
――――もう、今の仕事を辞めて、本格的に佐山のマネージャーをやろうか。でも、食べていけるかな。
同棲すれば、確かに部屋代とかは節約できる。それに、僕が仕事を捌くようになってから、佐山の信用も上がったし、いい感じで収入が増えてきていた。
それでも僕は二の足を踏んでいた。
しかし、その年の夏の終わり、そんな僕をその気にさせる事件が起こったんだ。
佐山がサポートメンバーとしてツアーに帯同することになった。東北から北海道まで回るので、スケジュールでは10日間行きっぱなしだ。ライブハウス中心に活動しているグループだけど、インディーズデビューを果たし、イケイケどんどんのバンドなんだ。
離れるのも辛かったけど、それ以上に佐山を気に入ってるメンバーや追っかけのファンがいて、気が気じゃなかった。
「心配するな、浮気はしないから。というか、俺も心配だよっ」
僕たちはまるで今生の別れさながらの切なさで見つめ合う。出発の前夜は乱れに乱れて求め合った。僕は初めて、壊れるかもって思ったほどだ。
――――一緒に行きたい。付いて行きたい……。
僕はあいつがいない間、佐山の部屋に寝泊まりした。少しでもあいつを感じたかったからだ。毎日会社には行ったけど、全くやる気が起こらなかった。
「元気にしてるか?」
ライブが終わると、必ず佐山から電話があった。
「倫を抱きたくてどうにかなりそうだ」
電話口でそんなことを言われると、つい体が熱くなる。今すぐ傍に行って、あいつのそそり立ってるものに口づけしてやりたい。
ところが、旅立ってから五日後、あいつは驚愕のシーンを送ってきた。恐らく、あいつ自身ではなく、メンバーの誰かがふざけて送ってきたんだろうけれど。
ライブ後の打ち上げ、佐山は上半身裸で酔っ払い、金髪に染めた女性にキスをされていた。
0
お気に入りに追加
102
あなたにおすすめの小説
スパダリ様は、抱き潰されたい
きど
BL
プライバシーに配慮したサービスが人気のラグジュアリーハウスキーパーの仕事をしている俺、田浦一臣だが、ある日の仕事終わりに忘れ物を取りに依頼主の自宅に戻ったら、依頼主のソロプレイ現場に遭遇してしまった。その仕返をされ、クビを覚悟していたが何故か、依頼主、川奈さんから専属指名を受けてしまう。あれ?この依頼主どこかで見たことあるなぁと思っていたら、巷で話題のスパダリ市長様だった。
スパダリ市長様に振り回されてばかりだけと、これも悪くないかなと思い始めたとき、ある人物が現れてしまい…。
ノンケのはずなのに、スパダリ市長様が可愛く見えて仕方ないなんて、俺、これからどうしたらいいの??
時をかける恋~抱かれたい僕と気付いて欲しい先輩の話~
紫紺(紗子)
BL
大学生になったばかりの花宮佳衣(はなみやけい)は、最近おかしな夢をみるようになった。自分が戦国時代の小姓になった夢だ。
一方、アパートの隣に住むイケメンの先輩が、妙に距離を詰めてきてこちらもなんだか調子が狂う。
煩わしいことから全て逃げて学生生活を謳歌しようとしていた佳衣だが、彼の前途はいかに?
※本作品はフィクションです。本文中の人名、地名、事象などは全て著者の創作であり、実在するものではございません。
幸せの温度
本郷アキ
BL
※ラブ度高めです。直接的な表現もありますので、苦手な方はご注意ください。
まだ産まれたばかりの葉月を置いて、両親は天国の門を叩いた。
俺がしっかりしなきゃ──そう思っていた兄、睦月《むつき》17歳の前に表れたのは、両親の親友だという浅黄陽《あさぎよう》33歳。
陽は本当の家族のように接してくれるけれど、血の繋がりのない偽物の家族は終わりにしなければならない、だってずっと家族じゃいられないでしょ? そんなのただの言い訳。
俺にあんまり触らないで。
俺の気持ちに気付かないで。
……陽の手で触れられるとおかしくなってしまうから。
俺のこと好きでもないのに、どうしてあんなことをしたの? 少しずつ育っていった恋心は、告白前に失恋決定。
家事に育児に翻弄されながら、少しずつ家族の形が出来上がっていく。
そんな中、睦月をストーキングする男が現れて──!?
【完結】嘘はBLの始まり
紫紺(紗子)
BL
現在売り出し中の若手俳優、三條伊織。
突然のオファーは、話題のBL小説『最初で最後のボーイズラブ』の主演!しかもW主演の相手役は彼がずっと憧れていたイケメン俳優の越前享祐だった!
衝撃のBLドラマと現実が同時進行!
俳優同士、秘密のBLストーリーが始まった♡
※番外編を追加しました!(1/3)
4話追加しますのでよろしくお願いします。
シャワールームは甘い罠(R18)
紫紺(紗子)
BL
鮎川真砂は、ちょっとタレ目が可愛いラノベ作家。
惚れっぽくて尻軽なところが災いし、毎回恋愛で痛い目に合っている。
そんな真砂がセレブ御用達のジムに通うことに。
そこで出会ったのは、彼が自らのラノベで描いていたキャラ達にそっくりな
筋肉イケメンたち!
何事もなく終わるわけがない。
※本作はエブリスタ様でも公開中です。そちらでは、スター特典として番外編も公開しています。
僕を拾ってくれたのはイケメン社長さんでした
なの
BL
社長になって1年、父の葬儀でその少年に出会った。
「あんたのせいよ。あんたさえいなかったら、あの人は死なずに済んだのに…」
高校にも通わせてもらえず、実母の恋人にいいように身体を弄ばれていたことを知った。
そんな理不尽なことがあっていいのか、人は誰でも幸せになる権利があるのに…
その少年は昔、誰よりも可愛がってた犬に似ていた。
ついその犬を思い出してしまい、その少年を幸せにしたいと思うようになった。
かわいそうな人生を送ってきた少年とイケメン社長が出会い、恋に落ちるまで…
ハッピーエンドです。
R18の場面には※をつけます。
LAST TORTURE 〜魔界の拷問吏と捕虜勇者〜
焼きたてメロンパン
BL
魔界の片隅で拷問吏として働く主人公は、ある日魔王から依頼を渡される。
それは城の地下牢に捕らえた伝説の勇者の息子を拷問し、彼ら一族の居場所を吐かせろというものだった。
成功すれば望むものをなんでもひとつ与えられるが、失敗すれば死。
そんな依頼を拒否権なく引き受けることになった主人公は、捕虜である伝説の勇者の息子に様々な拷問を行う。
男の子たちの変態的な日常
M
BL
主人公の男の子が変態的な目に遭ったり、凌辱されたり、攻められたりするお話です。とにかくHな話が読みたい方向け。
※この作品はムーンライトノベルズにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる