【R18】僕とあいつのいちゃラブな日々

紫紺

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第1部

第65話 裸にエプロン

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 ここに来てから、僕はキッチンに立つことが多くなった。家にいる日はできるだけ自炊しようと思って、それを実践してるんだ。ネットのお陰で随分レパートリーも増えたし、腕も上がったよ。
 今日は、肉じゃがを作ってる。佐山はこれが好きなんだよ。居酒屋でも大抵頼んでる。

「美味そうな匂いだー」

 でも、必ずこいつが邪魔しにくる。今もまた、おんぶお化けみたいに背後にくっついてきた。しかもバックハグしながら耳を噛んだりして悪戯してくる。

「もう、よせよ」
「いいじゃんか。そそるんだよ、キッチンに向かってる真剣な後姿が。ほら、俺のわかるだろ?」

 と言って下半身を当ててくる。しょうもない変態だ。だいたい、おまえは僕が何してたってそそられてるじゃないか。いや、別にのろけてるわけじゃ。えへへ。

「な、倫、あのさ」

 佐山が僕の耳元で囁くように話す。甘い声だして、何かまた良からぬことを考えていそうだ。

「なんだよ」

 僕はわざとつっけんどんに返す。

「裸にエプロンやってくれないか? いてっ!」

 馬鹿野郎。僕は持っていたお玉で佐山の頭をはたいた。

「何が悲しくて裸にエプロンせにゃならん」
「えー、だってそれは男のロマン……」
「そういうのは、胸が大きくて、腰がキュッとしたロン毛のお姉さんがやるんだよ。僕がやっても誰も喜ばない」
「俺が喜ぶじゃないか」

 マジでどうにかしてくれ。料理を始めてエプロンすると、どうしてこの発想しか思い浮かばないんだろうか。男のロマンって言うけど、じゃあ僕のロマンはどうしてくれる。

「しょうがないな。そうだ、佐山がレコ大取ったらやってもいいよ」

 僕はかなりハードルの高い交換条件を出してやった。佐山がその気になったら、出来ないこともないと僕は本気で思ってるけど、日本音楽レコード大賞なんて全然目指してないし、あそこの評価基準は正直全くわかんない。そういう意味でハードルが高いってことだ。

「ええっ。またむごい交換条件を……」
「だっておまえ、目指せるものなら取ってしまいそうだからさ。例えばグラミーなんかだといけちゃいそうじゃん。そこいくとレコ大は、謎だから」
「グラミー行けるとか思ってんのは、世界中であんただけだろうな。ふうううん。あ、でも、作曲賞や特別賞、アルバム賞とかでもいいんだよな」
「え……」

 そう言えば、そういう賞もあったような……。まあ、いいか。獲ってくれたらそれはそれで嬉しいし。裸にエプロンくらいやってやるよ。

「そうだな。それもアリにしよう」
「ようし! 約束だぞ」

 嬉しそうにそう言うと、僕を抱く腕に力を込める。苦しいよ、もう。

「それはそれとして……」

 佐山は僕の顎を無理やり後ろを向かせると唇を押し付けてきた。首がぐグキっていったよ。でも、あいつのキスは……僕の思考能力をストップさせてしまう。僕は菜箸を持ったまま振り向いて、唇と舌を絡ませる。

「あっ……んんっ」

 炊飯器がメロディーを奏で始めた。ご飯が炊けた。いつもながら、炊き立てのご飯が食べられない。絶対あいつはこのタイミングで僕を抱くんだよね。炊きあがりの時間、もう少しずらそうかなあ。



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