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第1部
第57話 ずっとぞっこんでいてほしい。
しおりを挟む佐山にたっぷりと可愛がられた翌朝。僕はホテルに備え付けの寝間着を着て、部屋の珈琲を淹れる。テーブルにカップを二つ並べた。
「いい匂い」
佐山がベッドから顔を覗かせる。相変わらず寝起きは悪い。
「珈琲淹れてやったぞ。飲むだろ?」
もそもそと布団から這い出てくる。下着一枚しか履いてないので、僕は丸まったままの寝間着を投げた。
「いらない。まだあんたを抱く」
長い腕を伸ばしてカップを持つと、ベッドに座り、裸のまま珈琲を口にした。
「うまいー。やっぱり朝の珈琲は格別だな」
なんて悦に入っている。
「はい、こっちにおいで。朝食代わりにあんたを頂くんだから」
「わっ……」
カップをベッドサイドに置き、僕の腕を掴んで引き寄せた。そのまま二人でベッドに倒れ込む。
「おはよう」
あいつの少し厚めの唇が目に入る。エロ過ぎて罪づくりなそれがまた僕の唇を襲ってくる。珈琲の香りがするキス。僕はゆっくりと舌を交わらせ、それを味わった。
「朝食は別に食べたいんだけど」
「ええ? 欲張りだな。俺は昨日暴飲暴食したからなあ。あ、これもそのうちか」
へへっと佐山は笑う。それでもこの朝食だけは止めれないらしい。あいつはまた僕の上に覆いかぶさると、寝間着を一気にはぎ取る。
「う……ん……」
佐山は朝のお約束通り、僕の体を貪った。
朝ごはんは食べないという佐山に付き合って、僕はホテルの売店で買ったスコーンを部屋で食べることにした。チェックアウトまでにはまだ時間がある。追加の珈琲を淹れて、ようやくシャワーを浴びて服を着た佐山に話しかけた。
「昨日のライブで販売したCD結構売れたって」
「マジか! よしよし。てか、みんな買ってないんかい!」
「配信で済ませた人も、物が欲しくなったんじゃないか?」
ふんふんと、それでも嬉しそうに頷きながら二杯目の珈琲を飲んでいる。
「そう言えば……」
僕は楽屋に来てくれたり、メールをくれた人たちの話をした。そのついでに、昨夜、三杉さんが来たことを伝える。
「ふうん、あいつ、そんなこと言ってたのか」
「佐山が音楽で本気になったとこ、初めて見たってさ」
「失礼な奴だな。俺はいつでも本気だ」
佐山はそう言うと、僕が座ってる二人掛けのソファーの隣に来て、スコーンを横取りして食べだした。
「あ、なんだよ」
「でも、あいつの言ってること、当たってるよ」
「え?」
スコーンを口に入れたまま、佐山は僕の肩を抱き寄せ髪にキスをした。
「俺が本気になったのは、あんたがいるからさ」
「佐山……」
佐山は僕の方を向いて、ウインクして見せた。そしてゆっくりと立ち上がり、背伸びをしたり体を動かし始める。
「倫にカッコいい俺を見ていてもらいたいからな。俺にずっと、ぞっこんでいて欲しい」
もうずっと、ぞっこんだよ。おまえしか僕は見えないよ。僕は佐山の背中に飛びつく。
「かっこよすぎるよ。おまえは……」
僕よりも背の高い佐山をバックハグする。あいつは僕の手をぎゅっと掴んで唇を寄せてくれた。
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