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第1部
第52話 タイアップ
しおりを挟むウィチューブでの先行配信が好調だ。MVは撮ってないので(予算の都合)、メインの2曲、サビの部分だけだけど、これが好調なのは嬉しい。
ジャケ写もカッコいいし、CDの方も売れるといいな(めでたく円盤化も配信と同時にできることになった)。5曲も入ってるんだから、絶対手に取って欲しいよ!
「市原さん、タイアップの件、決まりましたよ」
事務所の担当さんから嬉しい連絡が入った。応募していたCMのタイアップ曲に選ばれたんだ。
「ホントですか? ありがとうございます!」
これはマジで嬉しい。早速佐山に教えないと! 深夜ラジオにゲスト出演した佐山は、まだベッドの中だ。でも、こんな嬉しいニュースなら起こしても平気だろう。
「佐山! ビッグニュースだよ!」
「んー、なに……」
発売前にCMのタイアップが決まるなんて願ってもないことだ。実はシュウさんの例の楽曲もタイアップされてるので、それもきっと参考になったんだろうな。
「CMのタイアップ来たんだよ! ほら、あのビールの!」
「え? ほんとか?」
寝起きの悪い佐山も、さすがに目が覚めたらしい。佐山の隣で跳ねる僕を見開いた目で見上げる。
「ほんとだよ、やっぱり……わっ!」
予想してたことだけど、あいつは僕を組み伏して、覆いかぶさってきた。でもって、音がするほどキスをする。
「息、息できないからっ」
こっちもかなり興奮してたから、息が上がってる。必死で腕を突っ立てて唇を剥がした。
「落ち着け、まずは喜ぼう」
「喜びの舞だ!」
もう一度同じことを繰り返す。もう……仕方ないな。今度は息を整えて、あいつの唇を受けた。お祝いの言葉も言わせないのか、おまえは……。
だけど、あいつが喜んでいるのは手に取るように分かった。僕はしばらく、あいつの好きなようにさせてやった。
「改めて、おめでとう。まだ昼だけど、乾杯しよう」
シャワーを浴びてすっきりした僕らは祝杯を挙げる。順調すぎて怖いくらいだ。いや、佐山が本気を出せばこれくらい当たり前だったんだ。
「これは倫の手柄だよ。俺はあの曲、別に狙って作ったんじゃないんだ。それをあんたがあそこに応募しようって言うから」
「それこそたまたまだ。おまえの実力だよ」
やはり、インストルメンタルの楽曲は派手ではないけど、それなりの強みがある。カラオケで歌えないのが寂しいけどね。けど、これでMVも撮らせてくれるかも。色々期待が膨れるなあ。
「SNSでファンの皆に報告しなくちゃ」
「マネージャー日記は?」
佐山のオフィシャルサイトのコーナーだ。結構閲覧してもらって有難い。
「そうだな。お祝いに美味しいものでも食べに行くか。それを上げよう」
「いいなそれ。じゃあ、焼き肉!」
そう言えば、最近食べてなかったな。僕も食べたかったので早速予約を入れた。ちょっとお高めの焼き肉屋だ。こういう日は、贅沢してもいいよね。
「よし! これで元気を付けて、今夜も頑張ろう」
佐山は僕にウィンクしてそう言った。焼肉食べなくてもおまえ(の股間)はいつも元気だろうが。そう喉まででかかったけど、曖昧な笑みを浮かべるだけにしておいた。
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