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第1部

第48話 そこに〇〇はあるんか。

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 早朝、雨の音で目が覚めた。かなり強い雨がアスファルトを叩いているのが聞こえる。ブラインドに閉じられた窓から漏れる光も弱々しい。

「どうした?」

 僕が起き上がったのに気付いた佐山が寝ぼけ眼で尋ねる。

「雨が凄く降ってる」
「ふうん。いいじゃないか。今日は遠足も運動会もない」
「ええ? そうだけど」

 相変わらずおかしなことを言う奴だ。僕は口元を緩ませた。
 今日は午後から打ち合わせがある。事務所で佐山をサポートしてくれるメンバーのリスト作りをする。いよいよ佐山のソロデビューの準備が本格化するんだ。

「倫……」

 佐山が僕を背後から抱きしめてくる。いつものことだけど……。

「なに?」
「朝から起ったから、あんたで抜く」

 おい……。朝から起つのはいつものことだろう。でも、その言い方、なんかやだ。

「嫌だ。そんな愛も感じられないエッチは断る」
「ええ? なんだよ。愛はあるよ。いっつも、めっちゃくちゃあるよ!」

 そう言って僕をベッドに押さえつけ、強引にキスをしてくる。

「うわっ……んんっ」

 体重をかけると、すかさず僕の下着を脱がしにかかる。

「よせっ」

 なんだか僕もムキになって抵抗する。でもそれが何かのスイッチ入ったのか、佐山は俄然張り切りだした。

「うーん、抵抗するあんたは、可愛さ倍増だ」

 にやぁとイヤらしい笑みを浮かべると、脱がしたショーツをポイっと投げ捨てた。

「ああっ、このやろっ」

 僕が言う間もなく、あいつは右腕で僕の左足を担ぎあげる。途端にあられもない恰好になってしまった。

「あっ!」

 佐山は攻め手を緩めない。左手の親指で露わになったところをくねくねとなぞられる。

「はあっ……」

 思わぬ快感。体に震えがきてしまった。

「ふふーん、もう逃げられない」
「もう……ばかやろ……」

 結局、僕たちはお互いの朝起ちを大変気持ち良く解消した。



「しかし、マジで凄い雨だな。事務所行けるかな」

 ベランダに続く掃き出し窓から、佐山は外を眺めてそう言った。手には朝食の珈琲を持ち、濡れた髪そのままで立っている。

「だろ? 昼には止むといいけど」

 僕も同じようにコップを持って、佐山の隣に並んだ。窓の向こうには先ほどと変わらぬ様子の強い雨が道路をたたき、まるで川のようになって流れていく。

「倫」
「なんだ?」
「ところで、ちゃんと愛はあったろ?」

 なんだ。まだそんなこと気にしてたのか。

「わかってるよ。おまえの愛なんか、全身から駄々洩れじゃないか」

 佐山は嬉しそうに口角を上げ、僕の乾ききっていない髪にキスをした。

「俺の体はおまえへの愛で出来てるからな」

 恥ずかしくもなくそんなことを言う。僕はそんなおまえが好きだ。
 雨はまだ止まないけれど、おまえのお陰で僕の心はいつも晴れ晴れとしているよ。


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