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第1部
第47話 沖縄編 おまけ
しおりを挟む数日後、完成したばかりのMVを見ることができた。有名な監督さんだけあって、MVそのものも素晴らしかったし、なにより演奏と映像がリンクしてて胸躍る展開だった。佐山の楽曲がより一層格別なものになる。
「やっぱりカッコいい……」
波しぶきが上がる画を背にしてギターをつま弾く佐山の男っぷりの良さと言ったら。そこらのムービースターなんかお呼びじゃないよ。心臓鷲掴みされてきゅんきゅん鳴ってる。
「いいなあ。この表情。たまらない」
隣で佐山がつぶやく。それは僕のシーンだ。ワンカットくらいだと思っていたそれが、意外に長く使われてて僕は焦った。なんだかそこに映っているのは、自分なんだけど、別人のようだ。メイクのせいか肌も白いし、プロがやってくれた髪型は、海風に関わらず自然な感じで流れている。
恥ずかしくて直視できない僕に反して、あいつは涎を垂らさんばかりに身を乗り出して見てるんだ。ここが自宅で本当に良かった。上映会なるものに招待されていたんだけど、都合で行けなくて。メールで映像を送ってもらったんだ。
「俺の天使がみんなに気付かれてしまった!」
MVが終わると、佐山は僕をぎゅっと抱きしめてそう叫んだ。
「誰が天使だよ」
僕は鼻で笑う。
「倫、そっちの話あるなら受けてもいいんだぞ?」
「やめてくれ、冗談じゃない。てか、おまえ、それ本気で言ってるんじゃないだろな?」
僕は意地悪く聞いてみる。話だって、なかったわけじゃないけど、軽いノリくらいなものだ。それも全部断った。でもまさか、収入源になるならってことか?
「いや、全然本気じゃない。誰の目にもあんたの姿を写させたくない。エゴだろうが、それが俺の本心だ。実はもう、あんたをこの家に監禁しようかとすら思ってる」
おいおい……物騒だな。でも、嬉しいよ。おまえになら監禁されても僕は幸せだ。
「それを聞いて安心した。おまえになら、いくらでも監禁されてやる。僕は、佐山しか見えないんだ。知ってるだろ?」
佐山の頬に手のひらをあてる。でも、監禁するならその代価は当然もらわないとな。
「いつもの熱いキス……」
僕がそうせがむと、佐山は僕の髪を掻き上げ、両手で顔を包むようにして唇を寄せてくれた。やつの弾力のあるそれが僕の少し薄い唇を食み、舌で味わうように絡ませる。
熱くて甘い佐山のキスに僕は何度も魅せられる。僕はあいつの背中に腕を回し力を入れる。それに呼応するように佐山の愛撫が始まると、僕の全ては溶けていく。
「ああ……んんっ」
シャツのボタンを外しながら、僕の体を侵していく奴の指と舌。僕は押されるようにソファーに横たわり、おまえの全てを受け入れる。
ソファーの上は今日も天国に変わる。心配しなくても僕はおまえのそばを離れない。とっくに心も体も監禁されているのだから。
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