20 / 208
第1部
第20話 攻撃的なキス
しおりを挟む旅行から帰ってきて、僕らは日常に戻った。佐山は新たなライブのサポが決まり、今はリハに勤しむ毎日だ。例の僕が依頼を受けた作曲はとうに出来上がっていて、早速相手に送った。感触は良さそうなので、これもまたレコーディングをすることになるだろう。
――――あれ、この人この間レコーディングに来てた人だな。
そんなある日のこと、僕に一通のメールが来た。これは仕事用のアドレス。佐山の仕事依頼はここで受けている。何か仕事のオファーがあるみたいだ。このディレクター、片野さんは業界で顔が利く大物の一人。ついに佐山もこういう人から声がかかるようになったかと、僕は感無量な気持ちになった。
――――詳しくは対面で、とあるな。話の内容がわかるまで佐山には内緒にしておこう。
会ってみて、がっかりな内容だったら話づらいし、逆ならサプライズになる。僕は指定された日に伺う旨の返信をして、佐山には言わずにおいた。
「リハ終わったー。帰ろうぜ」
本日も滞りなく業務が終了した。佐山はすっきりした顔をして僕のところへやってくる。
「お疲れ。あ、僕ちょっと買い物に行ってくるから、先に帰っててくれ」
「ん? そうなの。まあいいけど。じゃあ、後でな」
別に大した買い物があるわけじゃないけれど、嬉しいオファーが来たことで、僕は何かお祝いがしたかった。
前祝ってことかな。美味しいお酒でも買ってこようと思ったんだ。それに合う食材も一緒に。奴には何のこっちゃわかんないだろうけど。
デパ地下の食料品売り場をうろうろして、あいつの好きな酒と食材を見繕って帰路についた。
片野ディレクターからのオファーはどんなのだろう。何か企画ものかな。僕は期待でわくわくした気持ちになった。早く内容がわかって佐山に教えてやりたい。
「ただいまー」
僕は勢いよく玄関の扉を開ける。リビングに行くと、なんだ、モバイル見てたのかな?
「お、おかえり」
何となく様子がおかしい。でもまあ、こいつはいつもこんなものだ。
「今日の晩御飯さ……って、おい、なんだ?」
あいつが凄い形相で僕に突進してきた。待てよ、何事? 僕はまだレジ袋もおいてないのに。
「んむむ……っ」
突然、痺れるほど強く抱きしめられたと思ったら、攻撃的なキスに襲われる。い、息が出来ないっ。舌で気管を塞がられるんじゃないかと思うくらい乱暴だ。
でも……こういうのも悪くない。何が起こったのかわかんないけど、佐山が異常に興奮しているのがわかった。モバイルでエロい動画でも見てたのかな。僕はあいつの背に腕を回す。
――――わっ!
するとあいつは僕をキッチンの床に押し倒す。レジ袋から買ってきたオレンジが転がり落ちてる。僕の洋服をボタン引き千切る勢いで剥がしだし、パンツやショーツも瞬殺だ。
「ああ……っ!」
前戯するのももどかしかったのか、早速いきり立ったものを押し入れてきて。僕は何がなんだかわからないうちに快感の坩堝に……。
それでも、僕も今日はテンション高かったから、あいつの乱暴な愛も受け止められた。逆に可愛く思えたほどだ。
あいつがどんな動画を見たのか、あとで聞いてみることにしよう。
三日後、僕はディレクターに指定された場所へ一人で出かけた。それがとても迂闊だったと、後からめいいっぱい思い知ることとなった。
0
お気に入りに追加
102
あなたにおすすめの小説
スパダリ様は、抱き潰されたい
きど
BL
プライバシーに配慮したサービスが人気のラグジュアリーハウスキーパーの仕事をしている俺、田浦一臣だが、ある日の仕事終わりに忘れ物を取りに依頼主の自宅に戻ったら、依頼主のソロプレイ現場に遭遇してしまった。その仕返をされ、クビを覚悟していたが何故か、依頼主、川奈さんから専属指名を受けてしまう。あれ?この依頼主どこかで見たことあるなぁと思っていたら、巷で話題のスパダリ市長様だった。
スパダリ市長様に振り回されてばかりだけと、これも悪くないかなと思い始めたとき、ある人物が現れてしまい…。
ノンケのはずなのに、スパダリ市長様が可愛く見えて仕方ないなんて、俺、これからどうしたらいいの??
時をかける恋~抱かれたい僕と気付いて欲しい先輩の話~
紫紺(紗子)
BL
大学生になったばかりの花宮佳衣(はなみやけい)は、最近おかしな夢をみるようになった。自分が戦国時代の小姓になった夢だ。
一方、アパートの隣に住むイケメンの先輩が、妙に距離を詰めてきてこちらもなんだか調子が狂う。
煩わしいことから全て逃げて学生生活を謳歌しようとしていた佳衣だが、彼の前途はいかに?
※本作品はフィクションです。本文中の人名、地名、事象などは全て著者の創作であり、実在するものではございません。
幸せの温度
本郷アキ
BL
※ラブ度高めです。直接的な表現もありますので、苦手な方はご注意ください。
まだ産まれたばかりの葉月を置いて、両親は天国の門を叩いた。
俺がしっかりしなきゃ──そう思っていた兄、睦月《むつき》17歳の前に表れたのは、両親の親友だという浅黄陽《あさぎよう》33歳。
陽は本当の家族のように接してくれるけれど、血の繋がりのない偽物の家族は終わりにしなければならない、だってずっと家族じゃいられないでしょ? そんなのただの言い訳。
俺にあんまり触らないで。
俺の気持ちに気付かないで。
……陽の手で触れられるとおかしくなってしまうから。
俺のこと好きでもないのに、どうしてあんなことをしたの? 少しずつ育っていった恋心は、告白前に失恋決定。
家事に育児に翻弄されながら、少しずつ家族の形が出来上がっていく。
そんな中、睦月をストーキングする男が現れて──!?
【完結】嘘はBLの始まり
紫紺(紗子)
BL
現在売り出し中の若手俳優、三條伊織。
突然のオファーは、話題のBL小説『最初で最後のボーイズラブ』の主演!しかもW主演の相手役は彼がずっと憧れていたイケメン俳優の越前享祐だった!
衝撃のBLドラマと現実が同時進行!
俳優同士、秘密のBLストーリーが始まった♡
※番外編を追加しました!(1/3)
4話追加しますのでよろしくお願いします。
シャワールームは甘い罠(R18)
紫紺(紗子)
BL
鮎川真砂は、ちょっとタレ目が可愛いラノベ作家。
惚れっぽくて尻軽なところが災いし、毎回恋愛で痛い目に合っている。
そんな真砂がセレブ御用達のジムに通うことに。
そこで出会ったのは、彼が自らのラノベで描いていたキャラ達にそっくりな
筋肉イケメンたち!
何事もなく終わるわけがない。
※本作はエブリスタ様でも公開中です。そちらでは、スター特典として番外編も公開しています。
僕を拾ってくれたのはイケメン社長さんでした
なの
BL
社長になって1年、父の葬儀でその少年に出会った。
「あんたのせいよ。あんたさえいなかったら、あの人は死なずに済んだのに…」
高校にも通わせてもらえず、実母の恋人にいいように身体を弄ばれていたことを知った。
そんな理不尽なことがあっていいのか、人は誰でも幸せになる権利があるのに…
その少年は昔、誰よりも可愛がってた犬に似ていた。
ついその犬を思い出してしまい、その少年を幸せにしたいと思うようになった。
かわいそうな人生を送ってきた少年とイケメン社長が出会い、恋に落ちるまで…
ハッピーエンドです。
R18の場面には※をつけます。
LAST TORTURE 〜魔界の拷問吏と捕虜勇者〜
焼きたてメロンパン
BL
魔界の片隅で拷問吏として働く主人公は、ある日魔王から依頼を渡される。
それは城の地下牢に捕らえた伝説の勇者の息子を拷問し、彼ら一族の居場所を吐かせろというものだった。
成功すれば望むものをなんでもひとつ与えられるが、失敗すれば死。
そんな依頼を拒否権なく引き受けることになった主人公は、捕虜である伝説の勇者の息子に様々な拷問を行う。
男の子たちの変態的な日常
M
BL
主人公の男の子が変態的な目に遭ったり、凌辱されたり、攻められたりするお話です。とにかくHな話が読みたい方向け。
※この作品はムーンライトノベルズにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる