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第1部
第16話 底なし沼
しおりを挟む背中から佐山が包み込むようして抱きしめる。耳に口づけをすると、荒い息遣いが僕の鼓膜を刺激した。
「あっ」
佐山の右手でぐっと掴まれた僕のものは既に固くなっている。それを指でこすられるので、思わず声がでてしまった。
そしてあいつの、もう復活して元気になっているのを僕の中に挿入してきた。
「あああ!」
どうしても体が反って逃げてしまう。それを佐山が大きな手で腰をつかみ、逃がさないと言わんばかりに引き戻した。
――――景色見るって、出来ないかも……。
瞳には多分映っている。美しい海と白く光る浜辺。だけど、それはめくるめく高揚にはただの背景に過ぎない。それに、ここは外だから、見えないまでも声は聞こえるんじゃないかな。僕はそう思うと迂闊に声が出せなかった。
「大丈夫だ。聞こえても構やしない」
その気持ちが伝わったのか、佐山がそう僕に囁く。僕の背に乗っかるように佐山が体を預けている。耳の中を舐めまわす。
「ぼ……くが構う……よ」
ようやくそう口に出す。
「これでも、声出ないか?」
再び体を起こすと、佐山は僕目掛けて強く突き出した。
「わあ! む、無理無理! ああ!」
腰を両手でしっかりと持たれて、ぐいぐいと押し込まれる。強い衝撃が僕の体を貫く。どうにもならなくなり、僕はため息まじりに声を上げた。
「ああ……いいっ……あっ」
いつの間にか佐山の右手に握られる。真っ白になった僕の目の前がゆっくりと色を成していく。目映いばかりの海が広がっていた。
風呂から上がって、僕は500mlペットボトルの水を飲み干した。脱水症になりそうだ。隣で佐山もエアコンの風に当たりながら水をあおるように飲んでいる。その横には缶ビールも置かれているので、水の後に飲むつもりなのだろう。
「ふう。水が美味い」
「はあ、もうきっつい」
僕は体を投げ出すように佐山の横にうつ伏せた。二人とも部屋着の浴衣をひっかけるようにして着ている。割としっかりした浴衣で、このまま外にも出られそうだ。
「もうのぼせたのか?」
「のぼせてはいないけど、おまえの愛が野蛮なんだ」
本心ではないけれど、腰が砕けそうなのは本当だ。
「またまた冗談を。今夜は寝かせないつもりなんだから、そんなことでへばるなよ」
恐ろしいことを言っている。
「こ……壊されそうだ……」
佐山はうつ伏せている僕の後頭部に手を置き、優しく撫ぜる。
「大丈夫だ。あんたのキャパは承知している」
「僕のキャパ?」
僕は顔を起こして佐山を見上げる。奴は黒曜石みたいな瞳を輝かせ、口角を上げてこう言った。
「底なし沼仕様」
「ふ、ふざけるな。それはおまえの方だろう。絶倫野郎!」
そう抗議すると、あいつは声をあげて笑いだした。
「だから、相性がいいんだな、俺達は。夕食はまだだろう。少し散歩しないか?」
今からゆっくり歩けば、夕日が見れるだろうか。僕は佐山とこんなふうに過ごしたことがない。考えてみれば一年付き合っていて、ツアー以外で旅行したのは初めてだ。ツアーでは観光するのは無理があるので、散歩なんてすることはなかった。
「うん。行く」
「機嫌治った?」
機嫌は元々悪くない。おまえといるんだもの、ずっと楽しいに決まってるだろ。
「ああ、とっても機嫌よくなった」
それでも僕はそう言って、浴衣の襟を直した。
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