【R18】僕とあいつのいちゃラブな日々@U.S.A.

紫紺

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第89話 腕の中

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 瞼を開けると、すぐそこにあいつの少し厚めの唇が見えた。僕はまた安心して瞼を閉じる。
 するとその瞼に柔らかな感触が降り、頬を通過してそのままキスへと移っていく。しばらくお互いの唇を食み合い、佐山は僕を抱き寄せる。

「倫……」

 今度は耳元に移って耳たぶを甘噛みしだした。僕はあいつの大きな体にセミみたいに取り付いてる。

「んんっ……こら……それ以上は……」

 佐山のキスが首筋へと落ちていく。息が荒くなって声が上ずる。

「なにしてんですかっ! あなたはまた何度言っても!」
「うわあっ、いてっ!」

 そろばんをご破算したみたいなカーテンの音とともに、褐色の太い腕がもつバインダーで佐山が叩かれた。看護師さんだ。

「とっととベッドから出なさいっ。あなたもすぐ中に入れないで!」
「すみません……」

 僕と佐山は素直に謝る。佐山はすごすごとベッドから出て脇に置いてある椅子に座った。
 お預けをくらった犬みたいに僕の目を見つめてる。僕だって急に広くなったベッドが寒々してくて嫌だよ。

「はい、血圧測りますよ」
「お願いします」

 あれからすぐ、僕は救急車で搬送された。同乗した佐山はずっと僕の手を握りながら、ボロボロ泣いてたんだ。
 最初は大泣きしてた僕のほうが慌てちゃって。涙も引っ込んで、あいつを慰めることになった。



 僕が居なくなったことはすぐに気が付いたらしく(マイケルが僕とレイモンドが出ていく姿を見ていた)、程なくサボテンの上で伸びてるレイを見つけた。
 手荒な扱いで目覚めさせられた気の毒なレイは、一部始終を話した。

『ビルはギャンブルで借金こさえて、危ないスジに目を付けられてしまった。で、リンを誘拐して映画会社を強請ゆすろうとしたんです。言うことを聞かないと自分のところにも被害が及ぶと脅されて……ボクには結婚したばかりの奥さんがいて云々(あとはカット)』

 嫌がらせだけじゃなくて、相当切羽詰まっての犯行だった。エリク達三人は、元からビルのギャンブル仲間。
 羽振りが良かったときは、いいように使っていたらしい。例のアイスクリーム屋の事件もビルの仕業。

 ビルの居所を突き止めるとすぐ、佐山はあいつを締め上げ場所を吐かせた。ビルはこれから監督のロバートを強請るつもりだったみたい。
 レイがさっさと暴露したおかげでロバートが強請られることもなかったし、危ないスジが出張ってくる余裕も与えなかった。

『警察に届けて任せようとしたんだけど、サヤマがさっさと車走らせちゃってさ。仕方なく助手席に乗りこんでた僕は死ぬかと思ったよ……。まあ、そのおかげで間に合ったんだけどね』

 これは冷静なマイケルのお言葉。だから警察より早く着いたんだね。
 でも、彼の言う通り助かったよ。もし少しでも遅かったら、僕はこのお顔に重傷を負ってただろう。こわっ。
 カリフォルニアは米国でも銃規制が厳しいところだ。連中が銃を持っていなくて良かった。

 因みにカルロはビルとは知り合い程度だったらしいけど、僕らを痛い目に合わせられるならと軽い気持ちで参加したみたいだ。
 あいつがどうなるかは知らないけど、一応助けてくれたことは言っておいた。


「ジェフはおまえが呼んだのか?」

 看護師さんがいなくなって、性懲りもなく僕のベッドに潜り込んだ佐山に聞いた。

「ん? まあな。あいつには貸しがあるし」

 素直じゃないな。頼りになる仲間が必要だったからだろう。でも、二人で扉をぶっ飛ばして突入してきた時、ホントに嬉しかったよ。
 何が起こったかわかんなかったけど、おまえの黒髪とジェフの金髪が見えて、助かったって思ったんだ。

「そんなことより……」

 佐山が僕を抱きしめる。細かい切り傷や打撲はあったけど、レントゲンの結果で幸い骨折なんかはなかった。
 あいつが動くと病院のベッドが軋む。あまり派手にやるとまた看護師さんに怒られるかな。でも……。

「もう1回……」

 あいつの腕の中にいることが、これほどに安心で幸せなことなのだと改めて思う。
 僕は佐山の色気漂う唇に自分のそれを重ね合わす。シーツに包まり、何度も何度もキスを繰り返した。




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