5 / 102
第4話 バスルームクライシス!
しおりを挟む僕らが渡米した当初は、パーティ三昧な日々だった。日本から来た新参者を歓迎してのことだけど、アメリカ人のパーティー好きは病気だね。
でもお陰で佐山の英語力は飛躍的に向上した。やっぱり耳のいい奴は無敵だな。僕はマネージャー兼通訳としてここにいるんだけど、契約の難しい話以外なら僕は必要ないくらいだよ。
「どう? 随分慣れたかな」
何度目かのウェルカムパーティー。ビール瓶を持ってマイケルが声をかけてくれた。
彼は僕らの送迎を含め、身の回りのことを見てくれてる。まだ若いアシスタントディレクターなんだけど、すごく気が利くし頭がいい。
茶色の髪に緑の瞳。体格的には佐山と同じくらいで典型的アメリカ人、フレンドリーなナイスガイだよ。
「うん、お陰様で。あ、今度運転の練習したいから付き合ってよ」
「ボクは構わないけど、リンとドライブなんてサヤマ怒んないかな」
「僕から言っておくから大丈夫だよ。あいつを乗せて練習しても仕方ないから」
国際免許は取得してきたけど、まだここで運転したことはない。たかが左ハンドルで右側通行なだけなんだけど、2、3度は練習したいんだよ。大事な佐山を乗せるわけだしね。
「倫、これうまいぞーっ」
大事な佐山が既に出来上がって、オードブルを手にやってきた。僕らはその辺のソファーに座って美味しい料理を堪能する。
ステージでは即席のバンドが自分たちが好きな曲を演奏している。さっきまではプロっぽいバンドが披露してたんだけど、飛び入りOKだ。
「サヤマ、来いよっ」
誰かが佐山を呼んでいる。ここのメンバーはみなプロ並みの腕前だ。でも、言っておくけど佐山はプロ中のプロなんだからな。
「佐山、魅せてやれよ。おまえの実力を」
「そうだな。倫がそう言うなら……」
なんて僕のせいにしてるけど、実はやりたくて仕方なかったんだろう。嬉しそうに走って行ってしまった。
佐山をスカウトしたロバート監督はあいつのギターと曲に惚れこんでオファーしてくれたんだけど、こっちの連中にあいつのことを深く知る者はいない。ここらで凄腕を見せつけるのも悪くないだろう。
有名な曲が演奏され、佐山のギターソロが始まった。さっきまでざわついていた部屋がしんとする。みんなが息を呑んであいつのギターに聞き入っているのがわかった。
――――やっぱり佐山は最高だな……カッコいい。
僕はいつものように心臓を鷲掴みされ、ふわふわと浮遊する。あいつの演奏が終わると同時に駆け寄りたかったけど、他の連中がそうさせてくれなかった。あっという間に耳の肥えたスタッフたちに囲まれてしまった。
なんだか人いきれにのぼせて、僕はバスルームに向かった。パーティー会場もホテルとかじゃなくて、主催者の家なんだよ。全くどうなってんだろうね、ここの住人の懐具合は。
「ねえ、君の相方。凄いね」
バスルームで手を洗っていたら誰かが入ってきた。スタッフじゃない気がするな。縦も横も大きい人で、広いバスルームも狭く感じた。
「ありがとう。自慢の相方なんで」
「ふうん。なるほどね」
僕の隣に立つと、鏡に向かって髪を整えだした。少し赤みのある茶髪。Tシャツからは筋肉がはみ出るほどだ。ちょっと怖い。
「君はあのギタリストのマネージャーさん?」
「あ、はい。そうです」
「オレは演奏頼まれたバンドのメンバーなんだ。カルロって呼んでくれ」
カルロはでかい右手を差し出した。バンドのメンバー……さっきステージで演奏してた人か。
「リンです。よろしくお願いします」
僕は紙タオルで丁寧に拭いた右手を差し出された右に当てる。すると思いのほか強く握られた。
「いた……わあっ!」
力任せに奴は僕を引き寄せ、反対の手で腕を握りつぶす勢いで掴んできた。
「なにするっ!」
「騒ぐなよ。あんた、あいつのコレだろ?」
自分の体を密着させ、僕を壁に追い詰めた。身長差から見降ろされるのは仕方ないとしても、絶対見下している。
さっきまでの親し気な態度が豹変し、下卑た顔で酒臭い息を僕の額に浴びせてきた。
「目ざわりなんだよ。ちょっと小手先が器用だからってさ」
僕の顎をぐいぐい掴み締め上げてくる。
「やめろ……おまえなんかが佐山に敵うわけない」
「黙れ。あんた、自分の立場わかってんのか? ま、いいか。いい思いさせてやるから、大人しくしてな」
野獣のような男は強引に僕の顎を上に向かせた。迫る鼻息。僕は左手で奴の顎を抑えるが腕力では勝てそうにない。
膨れ上がった奴の股間のイチモツが下腹に当たる。万事休すだよっ!
1
あなたにおすすめの小説
エリート上司に完全に落とされるまで
琴音
BL
大手食品会社営業の楠木 智也(26)はある日会社の上司一ノ瀬 和樹(34)に告白されて付き合うことになった。
彼は会社ではよくわかんない、掴みどころのない不思議な人だった。スペックは申し分なく有能。いつもニコニコしててチームの空気はいい。俺はそんな彼が分からなくて距離を置いていたんだ。まあ、俺は問題児と会社では思われてるから、変にみんなと仲良くなりたいとも思ってはいなかった。その事情は一ノ瀬は知っている。なのに告白してくるとはいい度胸だと思う。
そんな彼と俺は上手くやれるのか不安の中スタート。俺は彼との付き合いの中で苦悩し、愛されて溺れていったんだ。
社会人同士の年の差カップルのお話です。智也は優柔不断で行き当たりばったり。自分の心すらよくわかってない。そんな智也を和樹は溺愛する。自分の男の本能をくすぐる智也が愛しくて堪らなくて、自分を知って欲しいが先行し過ぎていた。結果智也が不安に思っていることを見落とし、智也去ってしまう結果に。この後和樹は智也を取り戻せるのか。
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
BL 男達の性事情
蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。
漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。
漁師の仕事は多岐にわたる。
例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。
陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、
多彩だ。
漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。
漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。
養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。
陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。
漁業の種類と言われる仕事がある。
漁師の仕事だ。
仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。
沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。
日本の漁師の多くがこの形態なのだ。
沖合(近海)漁業という仕事もある。
沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。
遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。
内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。
漁師の働き方は、さまざま。
漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。
出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。
休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。
個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。
漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。
専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。
資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。
漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。
食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。
地域との連携も必要である。
沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。
この物語の主人公は極楽翔太。18歳。
翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。
もう一人の主人公は木下英二。28歳。
地元で料理旅館を経営するオーナー。
翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。
この物語の始まりである。
この物語はフィクションです。
この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。
従僕に溺愛されて逃げられない
大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL!
俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。
その傍らには、当然のようにリンがいる。
荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。
高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。
けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。
当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。
居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。
さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。
主従なのか、恋人なのか。
境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。
従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。
宵にまぎれて兎は回る
宇土為名
BL
高校3年の春、同級生の名取に告白した冬だったが名取にはあっさりと冗談だったことにされてしまう。それを否定することもなく卒業し手以来、冬は親友だった名取とは距離を置こうと一度も連絡を取らなかった。そして8年後、勤めている会社の取引先で転勤してきた名取と8年ぶりに再会を果たす。再会してすぐ名取は自身の結婚式に出席してくれと冬に頼んできた。はじめは断るつもりだった冬だが、名取の願いには弱く結局引き受けてしまう。そして式当日、幸せに溢れた雰囲気に疲れてしまった冬は式場の中庭で避難するように休憩した。いまだに思いを断ち切れていない自分の情けなさを反省していると、そこで別の式に出席している男と出会い…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる