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第2話 キングサイズ
しおりを挟む映画会社が準備してくれたこの家に着いたとき、そのデカさに慄いた。
高級住宅街と言っても日本のそれとは桁違い。綺麗な道路の両側に点在する豪邸に圧倒され、美しく整備された芝やオープンガーデンに目を奪われる。
僕らの住処もその中で引けを取らない立派な屋敷だった。
リビングは体操競技ができるくらいの広さに大きなソファーが並ぶ。パーティしても30人くらいは呼べそうだ。
キッチンスペースも広いし、まるでレストランの厨房みたい。バスルームはメインの他に三つもあって、なんだか家の中で迷子になりそうだ。
地下には好きなだけ音が出せるスタジオが用意され、佐山が先に送っていたギターも既にラックに納まっていた。
そんな凄い屋敷に茫然としていた僕らだったけど、とにかく時差ぼけを解消しようとマスタールームに向かった。
「うおおっ。これは凄い!」
住居についての要望を聞かれた時、佐山が要求したのは一つだけ。
『ベッドはでかいのにしてくれ』
佐山が言ったのは、シングルじゃなくてダブルにして欲しい、ってことだったと思う。でも、この国の『でかい』、はダブルじゃないんだ。
佐山が子供みたいにはしゃいでベッドの上で跳ねてる。
「すげえな。ラブホだってこんなでかいベッドはないよっ」
キングサイズのベッドに白一色の寝具が被さっていた。今日イチテンションが上がる佐山。
メインバスルームでも大騒ぎだ。円形のジェットバスがあって、早速湯を張っていた。(余談)ほぼ毎晩ここで遊んでたけど、最近さすがに飽きた模様。
「やっぱり来てよかったなあ。アメリカ最高じゃん」
濡れたままの裸体にバスローブをひっかけ、ベッドに横たわる佐山。時差ぼけは一体どこに行ったんだ。
バスルームも日本家屋のリビングくらいあって、僕はジェットバスで楽しむより不安を覚えてしまったと言うのに。
「倫、おいで……このベッドのスプリング、イイ感じだぞ」
「あ、ああ……」
「どうした? 不安そうだな?」
「なんか色んなものがデカすぎて落ち着かないよ……」
ここ、月々の家賃恐ろしいんじゃないかな。今までの僕らの稼ぎじゃ到底住めないよ。
佐山は全く気に留めてないけど、僕らへの期待値は半端ないってことだよな。そりゃ、あの契約金の額からわかっていたコトだけど……。僕が落ち着かないのはこのためだ。
――――だけど、期待に応えなきゃ。佐山が……。
「俺のもでかくなってる。キングサイズ」
「ああ? そんなのさっきも見たよっ」
バスルームでもビンビンだったのに何を今更。
「見飽きちゃったか?」
ベッドの上で既にあいつはバスローブの帯を解き、見事な肉体美をさらけ出している。確かにあそこは勇ましくなって自己主張してるよ。
「飽きてないよ……」
呆れてるけど。
佐山は嬉しそうに口角を上げると僕の腕を取り引っ張り込んだ。折り重なる体。まだ少し濡れているのを感じる。本当にもう、エロ過ぎるだろ。
すぐに体を入れ違え、あいつは僕の上に乗り愛しそうに見つめた。
「心配するな。俺はあんたを不安になんかさせない」
「佐山……」
やっぱり僕の気持ちわかってくれてるんだ。そうだよな。僕がオロオロしたって、結果を求められているのはおまえだし、おまえは期待を裏切らない。僕は信じてサポートするだけだった。
瞼を閉じると同時に、あいつの唇が降りてくる。僕の全てをとろけさせる必殺のキス。僕はまたズブズブと溺れていく。
「家のデカさなんかに負けないからな。俺のあんたへの愛は」
……なんか違う気が。でも……。
「あ、んんっ」
あいつの熱い愛撫に僕の脳が痺れてく。もうどうでもいいや、おまえの沼にはまっていくよ。こんなに気持ちがいいんだからきっと大丈夫だ。
そんな根拠のない自信が溢れていく僕だった。
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