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第2章
12 性格の違う双子
しおりを挟む宮城県警の納屋と検索しても出てこない。さすが警察組織は素人に名前と顔を探らせるほど甘くはないか。俺にもハッカーの靴下くらい腕があればな。
空がスマホか携帯でも持っていたら、御尊顔を拝する機会があったかもしれないが。
『久遠さんは、刑事さんに似ています』
いつだったか空がそんなことを言っていた。ずっと気になっていたんだが、もうカササギとも連絡してないなら気にすることもないかと放置してた。けど……。
――――あいつ、ちゃっかり連絡とってやがった。
「タカ。仕事してんじゃないのか」
深夜2時。あいつが出没するには珍しくもない時間帯だ。講演会からは既に三日ほど経っていた。ようやく時間が出来て、俺は宮城県警のホームページを眺めていた。
「休憩中だ」
振り向く前に、閲覧していたページをさっと閉じた。
「ふうん」
カササギは空が着ていたパジャマの前ボタンを全部外して、生っ白い肌をちらちらと俺に見せる。金のネックレスも忘れずに付けてくるのは律儀とも言えるな。
「何の用だ。まだお遊びの時間には早い」
「へえ」
カササギは勿体つけるようにウロウロと部屋を歩き回り、結局俺の隣に置かれた椅子に座った。
「『おまえに、話す』てね」
長い脚を組み、くるりと俺の方を向く。はだしの足先で俺の脛あたりを妖しく撫ぜてきた。
「なんだ。その話か」
俺はそれを手ではたくと、届かないところに椅子をずらした。
「オレには話してくれないわけ?」
俺が宗志の夢を見て苦しんでいた夜、空が自分に話してほしいと言った。俺は、『空に話す』と約束したんだ。
「いいだろ? どうせおまえは聞けるんだから。おまえに話しても空には伝わらない。不公平じゃないか」
俺は思った通りのことを言う。
「でも……リアクションはできないじゃん。なんだよ……」
不貞腐れた様子で、カササギは呟く。言われてみればそうだが……。
「まあ、そういうな。おまえにも、ちゃんと話してやるから。空の後だけど」
「ちぇ……つまんねえの……」
今度はふてぶてしく背もたれにどっかりと凭れて天井を見上げる。
「だけど……タカって変わってるな」
「なにが?」
まあ、自分でもそう思わんでもないが。
「オレと空のこと、別の人間として扱ってるからさ。大抵オレたちの関係を知ったら、体は一緒だろうと怒り出すか、嘘つき呼ばわりするのに」
それはある意味仕方ないだろう。誰だって、最初は演技してるのではと疑うに決まってる。俺もそれは今でも頭を過らないことはないんだ。
それを演技じゃないと考えるなら、不確かな情報しかない病気より、違う人物と考えたほうが分かりやすい。
「俺はそうだなあ。性格の違う双子と暮らしてる気分でいるかな」
「へえっ! それは新しい発想だな」
「まあ、それは例えて言ってるだけで本当にそう思ってるわけじゃない」
「ふうん。でもそれなら、3Pできるなっ!」
「な……」
俺は画面に向けていた顔をあいつに向ける。カササギは足を組んだままふんぞり返ってにやにやしながら俺を見ていた。
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