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第30話 双璧
しおりを挟む本日も筋トレは滞りなく終了。食事について教えて欲しいことがあったので、舞原さんとフロアに据えてあるテーブル席についた。
「そうかあ。やっぱりプロティンはジムのがいいんだ」
「ですね。僕も監修に関わりましたから、間違いないです」
監修に? 舞原さん、一体何者だよ。
「そうなんだ……。あ、ところで……」
神崎さんも火曜日に来ることがあるのか尋ねようとした瞬間。
「あ、ここにいた。私を避けたってわけですか?」
噂をする前に神崎さんがやってきた。
「別にそういうわけでは……」
そういうわけだよ。ホントのところは。
「そう? あ、舞原さん。今日、九条さんいないね。仕事忙しいのかな」
えっ! と叫びそうになった僕は、思わず息を呑みこんだ。
――――知ってるんだ。九条さんのこと。ということは、九条さんも神崎さんのこと知ってる?
「それは……僕よりも……」
舞原さんが僕の方をちらりと見る。なに言い出すんだよ、舞原さんっ!
「え? どういうこと? 鮎川さんが九条さんの予定を知ってるってこと?」
軽やかで明るいトーンだった声質が、一瞬で闇落ちしてる。僕の背後にいる神崎さんのオーラが陽から陰に変わったような……多分気のせいじゃない。
「いえ、まさか。ただ、出張するとは言われてました」
あくまでジム内での会話に過ぎない。そういう印象にしたかった。舞原さんは知らん顔してる。絶対確信犯だな。
「へえ。どれくらいなんだろ」
「さあ、来週にはまたジムに来られるんじゃないですか?」
とまあ、曖昧に応えておく。
「ふううん。邪魔したね。シャワー浴びて上がるよ。じゃ、また金曜日に」
今度は僕の顔が見えるところまで移動し、いつものウィンク。僕はぺこりと頭を下げる。無駄に心拍数が上がるから、もう僕の前には現れて欲しくないよ……。
「へえ。どうやら神崎さんも鮎川さんに興味津々みたいですねっ。面白くなりそう」
両目が三日月を横にしたような形になってる。どこかのアニメみたいだ。僕は憮然として言い返す。
「なんも面白くないよ。なんだよ、焚きつけるみたいな言い方して」
「えへ。すみません」
「それより二人は仲がいいの? 僕はてっきり、お互いを知らないと思ってた」
「ああ。それは」
舞原さんがきらきら瞳を輝かせて話したことには(なんでキラキラさせる必要があるのか知らんが)、元々お互いは別々の日にジム通いしていたので、知り合うはずはなかったのだと。
けれど、お喋り好きなご婦人が、このジムのイケメン双璧と噂していたのがお互いの耳に入ったそうだ。
「それ、舞原さんじゃないの。耳に入れたの」
「ち、違いますよ。僕はなにも言ってません」
どうだか。この慌てぶりも怪しい。
結局、相手がどんな奴が確かめたい好奇心には勝てなかった。最初は神崎さんが、それに呼応したように九条さんが、お互いの曜日に顔を出した。
九条さんが金曜日に出かけた時、二人は初めて会話を交わしたそうだ。
「いやあ、あの日のお客様はラッキーだったですよ。二人並んでトレッドミルを走る姿、めちゃくちゃカッコよかったですよっ!」
頬を紅潮させ、興奮気味に話す舞原さん。それは確かに……僕も拝みたかった。
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