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第18話 またすぐ会える

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 疲れ果てて意識ないレベルで眠った。乱れに乱れたシーツ同様、僕も九条さんもベッドの上で乱れまくった。
 九条さんはわざと荒々しく僕を扱う野獣を演じ、僕は抗うふりをしてさらに彼の欲望をそそり立たせた。本当に相性がいいと思ったよ。

 寝室の小さな窓から朝陽が漏れてきた。その光に目覚めると、隣からは規則正しい寝息が聞こえる。体のどこかが触れ合ってるだけで、どうしてこんなに幸せな気分になるんだろう。

 ――――シャワー浴びて……珈琲淹れよう。マジで夜明けの珈琲だよ。

 昭和歌謡のような朝。昨夜の淫乱な夜をすっかり洗い流してキッチンに立った。


「おはよう、風呂借りるな」
「あ、はい。タオルは置いてあります」
「さすが、気が利く」

 珈琲の香りに誘われたのか、九条さんも起きてきた。ほぼ全裸の彼はまるでイタリアの有名な彫像のよう。美しい体とは、こういうことを言うんだよね。今まで何度も見たけど、やっぱりため息が出るほど素敵だ。



 簡単な朝食を食べ、九条さんは帰っていった。運転手は九条家のお抱え運転手さんらしい。毎回思うけど、只者じゃないな。九条さんは玄関を出るとき、もう一度僕を抱きしめてキスをしてくれた。

『じゃあ、火曜日な。午後から会議があるから、ジムでしか会えないけど……』

 残念そうに言う。だからかな、昨夜無理しても来てくれたのは。

『大丈夫だよ。またすぐ会えるよ』

 応じた僕に、九条さんは何か言いたそうな仕草。けど、結局口角を少し上げ、僕の額にキスをして出て行った。

 ――――またすぐ会える。そうか。もう来月になったら、九条さんは海外に行っちゃうんだよね。

 それがいつからで、いつまでか。僕ははっきりと聞いてない。出会ったばかりで、付き合い始めたばかりで、1時間も経たないうちにまた会いたくなって。
 声を聞いただけで触れたくなる。そんな時に会えなくなるのは辛いな。
 けど仕方ない。子供じゃないんだ。恋心はいつまでも子供だとしても。



 昨夜の九条さん襲来で途中になった僕のお仕事。気を取り直してPCに向かった。アライジャを描くとき、どうしても昨夜の九条さんの姿が重なって……。

『真砂は一体何人の男を食ったんだ? 良すぎだろ、ここっ』

 なんて僕の繊細なトコを撫ぜまわして……。

「ひゃっ」

 思い出してるだけで変な声出ちゃった。いかんいかん、ラノベが官能小説になりそうだよ。
 恋愛軸を出し過ぎるのは絶対に良くない。僕の読者様はそんなこと望んでない。けど、セクシーでカッコいいアライジャには恋して欲しいんだ。この匙加減が大事だよね。

『俺以外の男とはもう寝るな。これは俺のモンだからなっ』
『う、うん。約束するよ』

 演技なのかマジなのか。多分マジだよね。顎をぐっと掴まれて本気ですごんでた。

 ――――そういうの逆に可愛い。

 仕事しようと画面を睨むのだけど、昨夜の反芻が止まらない。午前中、僕の指はほとんどキーボードの上で止まっていた。


 
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