11 / 93
第10話 恋愛は筋肉に効く
しおりを挟む3回目のジム。とりあえず週に1回と決めて始めたけど、もう1回増やしてもいいかも。僕が九条さんの体に憧れてるのは嘘じゃない。
あんなふうにはなれなくても、週一じゃああまり効果がないように思うんだよね。プロテインも舞原さんに勧められたの飲み始めたけど。
「鮎川さん、なかなか熱心にされてますね。いい感じですよ」
僕がいつものようにマシンと格闘してると、舞原さんがやってきた。あれ、なんかいつもと雰囲気が違うよな。
「舞原さん、髪型変えました?」
「えっ……鮎川さん、目敏いですね。誰も気が付かなかったのに」
全体に軽やかな雰囲気になってる。ミディアムツーブロックに軽くパーマかけたんだよね。なんで誰も気付かないんだ。
「さらにイケメン度が上がってるじゃん。なに、彼女でも出来た?」
たまには揶揄ってやるのもいいだろう。僕は目を細めて軽口を叩いた。
「いやあ、そういうわけでは……。ていうか、鮎川さんこそ九条さんと嬉しい事あったんじゃないですか?」
うっ! 見事に返されてしまった。僕のよりずっといやらしい感じに聞こえるのは、自覚があるせいだろうか。
「別に……ランチご一緒しただけだよ」
「へえっ。それは凄いですね。羨ましいなあ」
羨ましい? おごってもらったわけじゃないぞ。いや、そういうことじゃないか。やっぱり九条さんはモテるなあ。恋愛感情でなくても、一緒にいたいと思わせる人だよね。
「ねえ、舞原さんは何曜日にいるの?」
「平日は火曜、水曜と金曜日、それに土曜日ですけど? もしかして、回数増やすんですか?」
「うん。もっと鍛えて体つくりたいんだ」
「ほお。それはいい心がけですねっ! ぜひぜひ!」
ぱあっと花が咲いたような笑顔だ。掛け値なしに喜んでくれてる。
「いいですね。やっぱり恋愛は筋肉に効く」
「なにそれ、面白い」
くすくすと僕は笑う。けど笑うとすぐ力が抜けちゃって、また盛大な金属音をフロアに響かせてしまった。
エアロバイクから九条さんと合流。彼は僕よりずっと負荷の高いマシンで鍛えてるから、同じフロアでも場所が違うんだ。でも、最後はバイクで整えるので合流できる。それから……僕らのジムはシャワーで締めくくる。
「う……ん……あ、ああ」
湯気が立ち込めるなか、僕は九条さんの責めに翻弄され続けている。ついついため息交じりの喘ぎ声が出てしまうよ。
「は……んん」
「感じてるか?」
僕の耳に舌を這わせながら、そんなことを聞いてくる。
「意地悪……わかってるくせに……」
ふっと鼻で笑ってる。僕は九条さんに体を預け、締まった腰に両手をかける。
「欲しいだろ?」
「欲しいよ……欲しい……」
まだ2回目なのに、自分でも信じられないくらい大胆になってる。九条さんの俺さまな上から目線が心地良すぎるんだ。相性がいいのが嬉しい。
「いい子だ……真砂……」
僕らはこの日も、極上のシャワータイムを味わった。
0
お気に入りに追加
58
あなたにおすすめの小説

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
Sweet☆Sweet~蜂蜜よりも甘い彼氏ができました
葉月めいこ
BL
紳士系ヤクザ×ツンデレ大学生の年の差ラブストーリー
最悪な展開からの運命的な出会い
年の瀬――あとひと月もすれば今年も終わる。
そんな時、新庄天希(しんじょうあまき)はなぜかヤクザの車に乗せられていた。
人生最悪の展開、と思ったけれど。
思いがけずに運命的な出会いをしました。
消えない思い
樹木緑
BL
オメガバース:僕には忘れられない夏がある。彼が好きだった。ただ、ただ、彼が好きだった。
高校3年生 矢野浩二 α
高校3年生 佐々木裕也 α
高校1年生 赤城要 Ω
赤城要は運命の番である両親に憧れ、両親が出会った高校に入学します。
自分も両親の様に運命の番が欲しいと思っています。
そして高校の入学式で出会った矢野浩二に、淡い感情を抱き始めるようになります。
でもあるきっかけを基に、佐々木裕也と出会います。
彼こそが要の探し続けた運命の番だったのです。
そして3人の運命が絡み合って、それぞれが、それぞれの選択をしていくと言うお話です。

オッサン、エルフの森の歌姫【ディーバ】になる
クロタ
BL
召喚儀式の失敗で、現代日本から異世界に飛ばされて捨てられたオッサン(39歳)と、彼を拾って過保護に庇護するエルフ(300歳、外見年齢20代)のお話です。
【完結】相談する相手を、間違えました
ryon*
BL
長い間片想いしていた幼なじみの結婚を知らされ、30歳の誕生日前日に失恋した大晴。
自棄になり訪れた結婚相談所で、高校時代の同級生にして学内のカースト最上位に君臨していた男、早乙女 遼河と再会して・・・
***
執着系美形攻めに、あっさりカラダから堕とされる自称平凡地味陰キャ受けを書きたかった。
ただ、それだけです。
***
他サイトにも、掲載しています。
てんぱる1様の、フリー素材を表紙にお借りしています。
***
エブリスタで2022/5/6~5/11、BLトレンドランキング1位を獲得しました。
ありがとうございました。
***
閲覧への感謝の気持ちをこめて、5/8 遼河視点のSSを追加しました。
ちょっと闇深い感じですが、楽しんで頂けたら幸いです(*´ω`*)
***
2022/5/14 エブリスタで保存したデータが飛ぶという不具合が出ているみたいで、ちょっとこわいのであちらに置いていたSSを念のためこちらにも転載しておきます。
【完結】嘘はBLの始まり
紫紺
BL
現在売り出し中の若手俳優、三條伊織。
突然のオファーは、話題のBL小説『最初で最後のボーイズラブ』の主演!しかもW主演の相手役は彼がずっと憧れていたイケメン俳優の越前享祐だった!
衝撃のBLドラマと現実が同時進行!
俳優同士、秘密のBLストーリーが始まった♡
※番外編を追加しました!(1/3)
4話追加しますのでよろしくお願いします。
サプライズ~つれない関係のその先に~
北川とも
BL
上からの命令で、面倒で困難なプロジェクトを押し付けられた先輩・後輩の間柄である大橋と藍田。
大らかで明るく人好きする大橋とは対照的に、ツンドラのように冷たく怜悧な藍田は、互いに才覚は認めてはいるものの、好印象は抱いてはいなかった。しかし、成り行きで関わりを持っていくうちに、次第に距離を縮めていく。
他人との関わりにもどかしいぐらい慎重な三十半ばの男同士、嫌でも互いを意識し始めて――。
表紙イラスト:ぬるめのおゆ。様
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる