時をかける恋~抱かれたい僕と気付いて欲しい先輩の話~

紫紺

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第78話 家族の事情

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 叔父が遺産に固執したのは、じいちゃんにはもっと隠し財産があると思っているからだった。
 相場師笠松将也が稼いだ金額はこんなもんじゃない。もし骨董に使ったのなら、もの凄いお宝があるはずだと。

「だが、そうだとすると、叔父さんのあては外れているかもしれませんね」

 ここでようやく冬真が口を開いた。

「なんで? 君は本当に骨董を見る目があるのか?」

 ぞんざいな口の利き方に、僕はぎろりと睨む。それに気付いてか、叔父は首を竦めた。

「もしお疑いなら、明日、鑑定に同席されたらどうですか? それで気がすむなら」
「冬真、そんなこと……」
「いいんだ、ケイ。その方がすっきりするだろう」

 そうなんだろうか。冬真が言うように、あの茶碗に金銭的な価値はないと……まあ、僕も実はそうだと思ってるけど。
 金が入っていたとしても、茶碗の重さから考えて最大でも200グラムくらいだと持田さんも言ってた。なら今の相場で150万円くらいなんだ。

「いいのか? 佳衣。俺が行っても」
「う……ん。冬真が言うならいいよ」

 叔父は少しホッとしたような顔をした。叔父にとっても、このゲームは早く終わらせたいのかもしれない。借金の返済は別にしても。

「それと……断言はできないけど、佳衣たちを襲ったのは、多分良枝姉ちゃんとこの、剛士じゃないかな」
「え? そりゃ、叔父さんじゃなきゃあっちかとは思ったけど。根拠はあるの?」

 他人に罪を擦り付けるつもりじゃないよな。ああ、僕はどこまで疑い深くなってるんだ。これも全部じいちゃんの変なゲームのおかげだよっ。

「剛士は、こっちで事業をやってた時、そういう連中と付き合いができたって話でね。兄さんや姉さんも心配してた。俺も良枝姉ちゃんが暴力奮われてないかって気になって」
「嘘っ! そんなことあったのか?」

 叔母さんに、というか、女性に手を上げるなんて絶対許せないよ。

「そこはわからんかった。姉ちゃんは、自分には優しい人だって言ってたから」

 けれど、この遺産ゲームが始まってから、剛士さんの素行がどうも怪しい。強面の連中が家にやってくるようになって怖がっていたという。

「だから、1日も早く遺言の『骨董品』を見つけて1件落着したかったんじゃないかな」
「そうだったのか……」

 じいちゃんちで捜索してるとき、しきりに僕に尋ねていた姿を思い出す。やっぱり、大人は大変なんだな。

「さすがに将大兄貴が見かねて間に入ってるらしいよ。多分別れるんじゃないかな。だから最近は、親父の家に来てない」
「え……マジで」

 意外にも和重叔父さんは、兄弟想いのようだ。豆に情報を入れているのは、遺産のためだけじゃないだろう。

「香菜姉さんとこも落ち着いたし、金に困ってんのは俺だけだよ……」

 香菜姉さん? 母さんのことだ。

「叔父さん、落ち着いたってなんの話だよっ?」

 僕は再び、和重叔父に迫った。



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