16 / 98
第15話 実家の問題
しおりを挟む布団の上でぐずぐずしていたらスマホが振動した。よっこらしょと画面を見ると妹からの着信だ。あーあ、面倒だなあ。
「はい、どうした?」
『お兄ちゃん、ああ、生きてるようで良かったわ』
現在ピカピカ? のJK様である。
「生存確認ならたまに母さんにはラインしてるよ」
向こうからの返信だけど。
『連休帰ってこないから、父さんも叔父さんたちもガッカリしてたよ』
「帰んないよ、当分。おまえだってわかってるだろ?」
『んー。まあね。ま、元気ならいいよ。でも今度遊びに行ってもいい? 東京、行きたいとこだらけだよ』
なんだ。珍しく電話してきたと思ったらそういうことか。夏休みにでも遊びにくるつもりなんだろう。
「わかった、わかった。僕の小汚いアパートで良ければ泊まりにくればいい」
『全然大丈夫。でも布団は干しといてね』
布団って、一人分しかない。この間上白石が来たときは、あいつ寝袋持参だったんだから。
「了解」
でも真実を言って長引かせることはない。僕は生返事をして電話を切った。
――――実家か。父さんもおじさんもガッカリしてたって? 別に僕の顔が見たいわけじゃないだろうに。
僕の実家は東海地方の田舎だ。父は平凡な会社員で極平均的な家族。それが……今はあることで揺れ動いている。
――――じいちゃんが……生きていたらな。
それは半年前、母方の祖父が突然亡くなったことから始まった。祖父の笠松将也は田舎ではそこそこ土地やら山やら持つ元学校教師。
教職の傍ら農業と趣味を勤しむ粋なじいちゃんで、田舎のでかい屋敷に住んでたとはいえ、そんな財産があるなんて思ってもいなかった。
だから、遺産問題なんて僕の生活には関係ないと思ってたんだけど、そうでもなかったらしい。今までじいちゃんの家に寄り付きもしなかったおじさんやおばさんたちが、ハイエナみたいにたかってきた。
じいちゃんは優しくて暖かくて、僕はずっと大好きだった。たまたま同じ県に住んでいたこともあり、僕と妹の麻衣はよく遊んでもらった。
骨董品を集めるのが趣味で、絵や掛け軸、謎のツボなんかがあちこちに置いてあった。その周りで遊ぶと怒られたな。でも全然怖くないから、またすぐ同じことやって。
庭の蔵にも、同じようなものが山のようにあって、ばあちゃんが金のかかる道楽だってぶつくさ言ってた。それが……今の胸糞悪い事態の元凶になってるわけだから、やっぱりばあちゃんは正しかったんだと思ってる。
1
お気に入りに追加
15
あなたにおすすめの小説
怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人
こじらせた処女
BL
幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。
しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。
「風邪をひくことは悪いこと」
社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。
とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。
それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?
魔術師の卵は憧れの騎士に告白したい
朏猫(ミカヅキネコ)
BL
魔術学院に通うクーノは小さい頃助けてくれた騎士ザイハムに恋をしている。毎年バレンタインの日にチョコを渡しているものの、ザイハムは「いまだにお礼なんて律儀な子だな」としか思っていない。ザイハムの弟で重度のブラコンでもあるファルスの邪魔を躱しながら、今年は別の想いも胸にチョコを渡そうと考えるクーノだが……。
[名家の騎士×魔術師の卵 / BL]
男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。
偽夫婦お家騒動始末記
紫紺
歴史・時代
【第10回歴史時代大賞、奨励賞受賞しました!】
故郷を捨て、江戸で寺子屋の先生を生業として暮らす篠宮隼(しのみやはやて)は、ある夜、茶屋から足抜けしてきた陰間と出会う。
紫音(しおん)という若い男との奇妙な共同生活が始まるのだが。
隼には胸に秘めた決意があり、紫音との生活はそれを遂げるための策の一つだ。だが、紫音の方にも実は裏があって……。
江戸を舞台に様々な陰謀が駆け巡る。敢えて裏街道を走る隼に、念願を叶える日はくるのだろうか。
そして、拾った陰間、紫音の正体は。
活劇と謎解き、そして恋心の長編エンタメ時代小説です。
フローブルー
とぎクロム
BL
——好きだなんて、一生、言えないままだと思ってたから…。
高二の夏。ある出来事をきっかけに、フェロモン発達障害と診断された雨笠 紺(あまがさ こん)は、自分には一生、パートナーも、子供も望めないのだと絶望するも、その後も前向きであろうと、日々を重ね、無事大学を出て、就職を果たす。ところが、そんな新社会人になった紺の前に、高校の同級生、日浦 竜慈(ひうら りゅうじ)が現れ、紺に自分の息子、青磁(せいじ)を預け(押し付け)ていく。——これは、始まり。ひとりと、ひとりの人間が、ゆっくりと、激しく、家族になっていくための…。
護国の鳥
凪子
ファンタジー
異世界×士官学校×サスペンス!!
サイクロイド士官学校はエスペラント帝国北西にある、国内最高峰の名門校である。
周囲を海に囲われた孤島を学び舎とするのは、十五歳の選りすぐりの少年達だった。
首席の問題児と呼ばれる美貌の少年ルート、天真爛漫で無邪気な子供フィン、軽薄で余裕綽々のレッド、大貴族の令息ユリシス。
同じ班に編成された彼らは、教官のルベリエや医務官のラグランジュ達と共に、士官候補生としての苛酷な訓練生活を送っていた。
外の世界から厳重に隔離され、治外法権下に置かれているサイクロイドでは、生徒の死すら明るみに出ることはない。
ある日同級生の突然死を目の当たりにし、ユリシスは不審を抱く。
校内に潜む闇と秘められた事実に近づいた四人は、否応なしに事件に巻き込まれていく……!
早く惚れてよ、怖がりナツ
ぱんなこった。
BL
幼少期のトラウマのせいで男性が怖くて苦手な男子高校生1年の那月(なつ)16歳。女友達はいるものの、男子と上手く話す事すらできず、ずっと周りに煙たがられていた。
このままではダメだと、高校でこそ克服しようと思いつつも何度も玉砕してしまう。
そしてある日、そんな那月をからかってきた同級生達に襲われそうになった時、偶然3年生の彩世(いろせ)がやってくる。
一見、真面目で大人しそうな彩世は、那月を助けてくれて…
那月は初めて、男子…それも先輩とまともに言葉を交わす。
ツンデレ溺愛先輩×男が怖い年下後輩
《表紙はフリーイラスト@oekakimikasuke様のものをお借りしました》
いとしの生徒会長さま
もりひろ
BL
大好きな親友と楽しい高校生活を送るため、急きょアメリカから帰国した俺だけど、編入した学園は、とんでもなく変わっていた……!
しかも、生徒会長になれとか言われるし。冗談じゃねえっつの!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる