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第2話 隣の先輩
しおりを挟む緊張の入学式や大騒ぎの部活勧誘会を経て、僕の大学生活は無事スタートしていた。講義もぼちぼち始まっている。
「花宮―! こっち、こっちだ」
入学式から数日経っても、僕はまだキャンパスで迷子になった。あまりに広すぎるんだよ。
結局は、この広いキャンパスのごく一部でしかうろうろしないことになるのだろうけれど。
「あ、上白石。1限目、こっちだっけ」
「ここの階段教室だよ。2階から入るんだぜ」
初日に友人となった『上白石秋良』だ。東京人だから、実家住まい。僕が一人暮らしなのをすごく羨ましがっている。
身長は僕とあまり差がないけど、スリムでやっぱ垢ぬけてる。合格してすぐ美容院で施したらしいパーマと茶髪は今時のツーブロックでカッコいい。
僕は……普通にストレートのマッシュ。高校生から変わらない。春休み中に明るい色に染めたのが精いっぱいだよ。
「でも、階段教室で講義とか、めっちゃ大学って感じだよな」
こいつも僕と同様、ウキウキしているようだ。そりゃそうだよな。辛く重たい受験生活から一気に解放されたんだ。初めての講義に僕らは期待と興奮で頬を紅潮させた。
「今度さ、花宮んとこ遊びに行っていい?」
だが、カチカチに緊張してた講義も、10分もすればダラケテくる。別にそんな凄いことが演じられるわけではないのだ。
「いいよ。もう少し片付いたらな」
「やった。花宮んとこ、大学生協の斡旋だろ? 隣近所に同級生いるんじゃないのか?」
地方出身者が滞りなく、リーズナブルなアパートに入れるよう、大学は手を尽くしてくれる。ありがたいことだ。
僕の実家もそんな余裕があるわけでなし、御多分に漏れず、斡旋されたところに入居した。倍率が高いのでこれも大変なんだよ。
「ああ……確か右隣がそうだし、1階にも二人いるみたいだな。下の奴は挨拶できていない」
「そうか。俺の知ってる奴ならいいな」
そう言えば……僕の左隣、大学が始まってるにも拘らず、まだ帰ってきてないようだ。管理人さんの話では3年生。つまり2学年上の人らしいけど。なんか難しい人じゃないといいな。
先輩風を吹かせて威張るような人だと困る。このキャンパスにそんなタイプがいるとは思えないけれど。
総合国立大学でも、ここのキャンパスは理系中心だから、チャラい人や体育会系の人は少ない。それもこの大学を僕が選んだ理由だった。小心者なんだよ。
その日、僕はバイトの面接を終え、すっかり我が城になったアパートに帰った。廊下を歩いていると、手前のドアがふいに開いた。そこは例の左隣の部屋だ。
――――あ……。先輩、帰って来たのかな。
僕は脚を止め、現れた影にぺこりと頭を下げた。
――――あれ、なんの反応もない。
僕は恐る恐る頭を上げる。気難しい人だったんだろうかと、ビビっていた。
けれどそこには、僕よりずっと長身で黒髪長髪の、モデルのように脚の長い男性が、僕を見てただただ唖然と立ち尽くしていた。
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