Campus・Case(キャンパス・ケース)番外編追加しました!

紫紺

文字の大きさ
83 / 113

File No. 77 優しくなんかない

しおりを挟む


 階段教室のドアを開けた時、ふと後ろを振り向いた鏑木と目が合った。
 僕がすかさず右手を上げると、あいつはにんまりと口角を上げ、同じように手を上げた。竜崎と一緒の姿を見て安心したのかも。いい奴だな、鏑木は。



 また二人で事件の捜査が出来る。いや、二人で一緒に居る時間が出来る。それこそが僕は嬉しかった。別々にやったところで楽しくないのに今更気付くなんて、全く僕はアホだな。

「とりあえず、ネットで調べてみるか。大学の年表なんかに載ってるわけないからな」
「そりゃそうだ。12、3年前だから、ネット環境も今とそんなに変わってないんじゃない?」
「ツイッターの利用者も増え始めてたころだしな」

 僕らはランチをさっさと済ませ、図書室でパソコンを開いた。二人、各々のキーワードで探りまくる。

「でも、この自殺騒ぎが今回の事件と繋がりあるのかな。確か、能代さん殺害時には入間教授は海外だったよね」

 連続殺人事件が同一犯なら、入間教授は容疑から外れるのだけど。

「まあ、なにが関係あるかはわからんから。それに、共犯ということもある。お、あった。これだな」

 5分も経たないうちに、僕らはそれらしい事件にあたる。竜崎はニュースよりも当時のブログやツイッターという個人の記録に当たりを付け、それがヒットしたようだ。

「大学で起きた事件をまとめているサイトだ。よく出来ている」

 僕に見えるよう向けられた画面をさっと流し読みすると、人物名は全てイニシャルにはなっているが、かなり詳しく書かれている。

「これ読むと……Rさんは、その前にも自殺未遂してたみたいだね」
「親友でもあったYさんが直前で気付いたから良かったものの……か。これ、吉川先生のことだな。奪われた相手の前で自殺しようとしたのなら、彼女もなかなか気の強い人だったのかもな」

 僕もそれは思った。ここだけ切り取れば、狂言自殺も予想できてしまう。

「けど、それから1ヶ月後だからな。旧研究棟から飛び降りたのは。その間の時間に、狂言では済まされないほどの心労を受けたとも予想できる」

 ブログの記事によると、最初は自殺を自演することで、彼が戻ってくるのではと考えたが、それが絶望的だと知った。返って狂言自殺を疑われて悪化したのだとある。

「引くに引けなくなったのかな。こんなことで命を落とすとは、残念だな」

 竜崎は図書室ということで小声だったが、より声を落として言った。僕もそう思う。
 人を想う気持ちはとても大切だし、大事にしたいものだけど、行き過ぎても相手に負担をかけてしまうだけだ。
 たとえ心底好きな人に裏切られたとしても仕方ない。半分は自分のせいだろうし、いっぱい泣いて明日を待てばいい。

 ――――なんて思うけど、もし竜崎に僕の気持ちがバレて、あっという間にフラれたらどうだろう。正直考えたくないけど、十分に有り得る未来だ。

 だから好きだなんて言えない。友達でいいんだ。友達になれただけで。

「どうした、藍? 急に黙って。同情したのか? 藍は優しいからな」

 僕が優しい? そんなことない。今だって結局自分に置き換えてる。

「優しくなんてないよ。竜崎の方がずっと優しいじゃないか。いつも僕なんかのこと気にかけてくれてさ」
「それはだから、そうじゃなくて……いや、もう……まあいいや」

 なにかまだ言い足らないように見えたけど、竜崎はそこで口噤んだ。代わりに首を軽く左右に振り、小さなため息をついた。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結済】俺のモノだと言わない彼氏

竹柏凪紗
BL
「俺と付き合ってみねぇ?…まぁ、俺、彼氏いるけど」彼女に罵倒されフラれるのを寮部屋が隣のイケメン&遊び人・水島大和に目撃されてしまう。それだけでもショックなのに壁ドン状態で付き合ってみないかと迫られてしまった東山和馬。「ははは。いいねぇ。お前と付き合ったら、教室中の女子に刺されそう」と軽く受け流した。…つもりだったのに、翌日からグイグイと迫られるうえ束縛まではじまってしまい──?! ■青春BLに限定した「第1回青春×BL小説カップ」最終21位まで残ることができ感謝しかありません。応援してくださった皆様、本当にありがとうございました。

不器用に惹かれる

タッター
BL
月影暖季は人見知りだ。そのせいで高校に入って二年続けて友達作りに失敗した。 といってもまだ二年生になって一ヶ月しか経っていないが、悲観が止まらない。 それは一年まともに誰とも喋らなかったせいで人見知りが悪化したから。また、一年の時に起こったある出来事がダメ押しとなって見事にこじらせたから。 怖い。それでも友達が欲しい……。 どうするどうすると焦っていれば、なぜか苦手な男が声をかけてくるようになった。 文武両道にいつも微笑みを浮かべていて、物腰も声色も優しい見た目も爽やかイケメンな王子様みたいな男、夜宮。クラスは別だ。 一年生の頃、同じクラスだった時にはほとんど喋らず、あの日以降は一言も喋ったことがなかったのにどうして急に二年になってお昼を誘ってくるようになったのか。 それだけじゃない。月影君月影君と月影攻撃が止まない。 にこにことした笑顔になんとか愛想笑いを返し続けるも、どこか夜宮の様子がおかしいことに気づいていく。 そうして夜宮を知れば知るほどーー

【完結】君を上手に振る方法

社菘
BL
「んー、じゃあ俺と付き合う?」 「………はいっ?」 ひょんなことから、入学して早々距離感バグな見知らぬ先輩にそう言われた。 スクールカーストの上位というより、もはや王座にいるような学園のアイドルは『告白を断る理由が面倒だから、付き合っている人がほしい』のだそう。 お互いに利害が一致していたので、付き合ってみたのだが―― 「……だめだ。僕、先輩のことを本気で……」 偽物の恋人から始まった不思議な関係。 デートはしたことないのに、キスだけが上手くなる。 この関係って、一体なに? 「……宇佐美くん。俺のこと、上手に振ってね」 年下うさぎ顔純粋男子(高1)×精神的優位美人男子(高3)の甘酸っぱくじれったい、少しだけ切ない恋の話。 ✧毎日2回更新中!ボーナスタイムに更新予定✧ ✧お気に入り登録・各話♡・エール📣作者大歓喜します✧

本気になった幼なじみがメロすぎます!

文月あお
BL
同じマンションに住む年下の幼なじみ・玲央は、イケメンで、生意気だけど根はいいやつだし、とてもモテる。 俺は失恋するたびに「玲央みたいな男に生まれたかったなぁ」なんて思う。 いいなぁ玲央は。きっと俺より経験豊富なんだろうな――と、つい出来心で聞いてしまったんだ。 「やっぱ唇ってさ、やわらけーの?」 その軽率な質問が、俺と玲央の幼なじみライフを、まるっと変えてしまった。 「忘れないでよ、今日のこと」 「唯くんは俺の隣しかだめだから」 「なんで邪魔してたか、わかんねーの?」 俺と玲央は幼なじみで。男同士で。生まれたときからずっと一緒で。 俺の恋の相手は女の子のはずだし、玲央の恋の相手は、もっと素敵な人であるはずなのに。 「素数でも数えてなきゃ、俺はふつーにこうなんだよ、唯くんといたら」 そんな必死な顔で迫ってくんなよ……メロすぎんだろーが……! 【攻め】倉田玲央(高一)×【受け】五十嵐唯(高三)

陰キャな俺、人気者の幼馴染に溺愛されてます。

陽七 葵
BL
 主人公である佐倉 晴翔(さくら はると)は、顔がコンプレックスで、何をやらせてもダメダメな高校二年生。前髪で顔を隠し、目立たず平穏な高校ライフを望んでいる。  しかし、そんな晴翔の平穏な生活を脅かすのはこの男。幼馴染の葉山 蓮(はやま れん)。  蓮は、イケメンな上に人当たりも良く、勉強、スポーツ何でも出来る学校一の人気者。蓮と一緒にいれば、自ずと目立つ。  だから、晴翔は学校では極力蓮に近付きたくないのだが、避けているはずの蓮が晴翔にベッタリ構ってくる。  そして、ひょんなことから『恋人のフリ』を始める二人。  そこから物語は始まるのだが——。  実はこの二人、最初から両想いだったのにそれを拗らせまくり。蓮に新たな恋敵も現れ、蓮の執着心は過剰なモノへと変わっていく。  素直になれない主人公と人気者な幼馴染の恋の物語。どうぞお楽しみ下さい♪

三ヶ月だけの恋人

perari
BL
仁野(にの)は人違いで殴ってしまった。 殴った相手は――学年の先輩で、学内で知らぬ者はいない医学部の天才。 しかも、ずっと密かに想いを寄せていた松田(まつだ)先輩だった。 罪悪感にかられた仁野は、謝罪の気持ちとして松田の提案を受け入れた。 それは「三ヶ月だけ恋人として付き合う」という、まさかの提案だった――。

【完結】I adore you

ひつじのめい
BL
幼馴染みの蒼はルックスはモテる要素しかないのに、性格まで良くて羨ましく思いながらも夏樹は蒼の事を1番の友達だと思っていた。 そんな時、夏樹に彼女が出来た事が引き金となり2人の関係に変化が訪れる。 ※小説家になろうさんでも公開しているものを修正しています。

【完結】大学で再会した幼馴染(初恋相手)に恋人のふりをしてほしいと頼まれた件について

kouta
BL
大学で再会した幼馴染から『ストーカーに悩まされている。半年間だけ恋人のふりをしてほしい』と頼まれた夏樹。『焼き肉奢ってくれるなら』と承諾したものの次第に意識してしまうようになって…… ※ムーンライトノベルズでも投稿しています

処理中です...