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File No. 63 彼氏に言っといて
しおりを挟むまるで少年探偵団みたいだな、僕は。竜崎が僕のことを心配しているのはわかるけど、僕も竜崎と同じ二十歳過ぎの大人だよ。
自分の身くらい自分で……守れるかどうかはわかんないけど、危ない相手かどうかくらいは判断できる。もし、本当に危険な人物に話を聞きに行くなら竜崎に相談するし。
ちょっと前に『強い奴』とか言ってくれたけど、あれも、『思ってたよりも』という枕詞が付いてたんだろう。そんなことにも気付かないとか、僕はやっぱりお子様だな。
けど、あんな態度を竜崎に取るなんて、僕は本物の馬鹿やろうだ。きっと呆れただろうな。そういうことだから、危ないことはさせられないんだ、とか言われそう。
――――嫌われたかもしれない。
そう思うと、やっぱりチキンな僕は後悔の海に沈む。誰だよ、後悔先に立たずとか言ったの。こればかりは絶対覆せない諺だな。
いつもは金曜日が物凄く楽しみなのに、気まずい気分。なんてこった。
そんなブルーな気持ちのままで、木曜日の午後を迎えていた。木曜日はバイトもないので、しっかり研究に励める日なんだけど、モチベーションが上がらない。
気持ちって大事だと思いつつ、僕は自販機コーナーでドリンクを買っていた。
「あら、美山君じゃない」
その背中に、聞き覚えのある高い声が。振り返ると予想していた人が立っていた。
「土屋先生。えっと……こんにちは」
「はい、こんにちは。なに、今日はナイト君もあんたもおひとり様なの?」
ナイト君って……まだ言ってんのか。もう否定するのも面倒。
「竜崎とは学科も違うし、元々そんな一緒にいません」
「あら、そうなの。そんな怒んなくてもいいじゃない」
「怒ってませんよ」
突き放した言い方なのは認めるけど。こういう時は素の自分が出てしまう。大体ナイト君もあんたもってどういう意味だよ。
「そう? こっちだって愉快じゃないのよ。彼、今朝もやって来たんだから。おひとり様で」
「え? そうなんですか?」
だから今日は……なのか。しかし僕には一人で行くなと言っておいて。どういうことだよっ。僕は一瞬、ムッとした表情を作った。
いや、自分ではそのつもりだった。なのに、土屋さんはそんな僕の変化には一向に気付く様子もなく。
「そうよ。こっちは警察にも何度も呼び出されたり、押しかけられたりでウンザリなのに、素人の探偵ごっこにまで付き合えないわ。彼氏に言っといてよっ」
めっちゃ強めの口調と視線で言われてしまった。『彼氏に言っといて』なんて、刺激的な言葉を。
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