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File No. 48 厚い胸板
しおりを挟む緊張感が漂う……てはいない。ただ僕が変な緊張を強いられているだけだ。僕はその緊張に耐えられなくなって、意味もなくキョロキョロし、竜崎のデスクに目が留まった。
「あれ?」
入った時は気付かなかったけど、パソコンの横に見覚えのあるものが。
「ピラミッドのキーホルダー、竜崎も買ったんだ」
「え? あ、ああ。ほら、あそこああいう商品が有名でさ。俺もついでに」
まあお揃いというつもりでもなかったんだろう。でも、刑事さん、早く返してくれないかな。色々いわくつきになっちゃったけど、竜崎のお土産なんだから。それにお揃いなら余計に嬉しい。
「えっと、話戻していいか」
「え? あ、うん。もちろん」
僕がニヤニヤしてるのに気付くこともなく、竜崎は説明を続けようとする。ちょっと残念な気持ちになったけど、今はそれどころじゃないし、僕は素直に耳を傾けた。
「こんな情報、警察ではとっくにわかってることなんだよな。向こうの分析器の方が優秀に決まってるし」
「そうなのか? まあ、そうか」
「ああ。だから、土屋さんが6時20分ごろにあの部屋の前の廊下を歩いたことは知ってるはずだ。当然、彼女に問い詰めてるだろう」
それがいつのことかはわからないけど、多分、竜崎が土屋さんにインタビューする前のことだろう。
「土屋さん、海外行くみたいだからか、最近姿見ないよね」
「それな。彼女、もしかすると警察から容疑者扱いされてるかもしれん……」
竜崎は所々髭が生え始めている顎を撫でる。なにか思う事あるみたいだ。
「竜崎は土屋さんが犯人だと思ってる?」
思わず僕は問いかけた。
「うーん。実は思っていない」
「そうなのか? あ、僕もそうでないって思いたくて」
嘘かホントかわからないけど、彼女は塩谷教授のゴーストライターだったとして。それが助教授になるための儀式だと彼女も受け入れていたとして。
それなのに教授が意地悪して約束を違えてたのなら、それは優秀な彼女の能力を冒涜する行為だから僕は腹立つし許せないって思う。
でも、だからこそ、そんなことで土屋さんの人生を無駄にしてほしくなかった。
「ああ。まだ俺の頭の中でもまとまってないけど、少なくとも彼女があの部屋に現れた時は、既に教授は死体になってたと思ってる」
右側の口角が少し上がってる。これには自信ありってことかな。
「ど、どうしてそう思うんだ? 根拠は?」
モヤモヤした不安を取り払いたくて、僕は竜崎に突っかかる。
「それは言えん。なにもはっきりしてないうちに、藍に変な固定観念を植え付けたくないからな」
「なんだよ。子供扱いだなっ」
そりゃ、全く僕は根拠なしに土屋さんが犯人じゃない説を唱えてるんだけど。竜崎にはそれなりの根拠があるに違いない。
僕が誰かにペラペラ話すとでも思ってるんだろうか。子供扱いする竜崎に、思わずムッと顔を顰めた。
「あれ? またそんな顔する」
子供扱いされて怒ってるのに、またまた竜崎は満面の笑みで、僕の頭を子供みたいにごしごしと撫でる。
「あっ、もう、よせって!」
結構強い力で、僕は竜崎の腕を取り、払おうとした。んだけど。
「うわあっ!」「ぎゃっ」
なにがどうなったのか。気が付けば、僕は竜崎の厚い胸板の下敷きになっていた。
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