Campus・Case(キャンパス・ケース)番外編追加しました!

紫紺

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竜崎慎の事件メモ その4

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 藍の写真を欲しがる不届き者を成敗してくれると息まいていたが、それは不可能になってしまった。
 なんと、脅迫者が殺されてしまったのだ。しかも、藍の先輩でもある能代さんだった。
 だからって許すわけじゃないが、自分たちの行動にも問題があったことは否めない。藍が死亡推定時刻のことを話してしまったのは仕方ないとして、俺が知りながら脅迫メールのことを黙っていたのは間違いだった。

 ――――あんな要求してくるから、俺の判断がとち狂ってしまった。

 だが、なんてことのせいにするわけにもいかない。風見刑事の言う通りだ。
 しかしこれで、益々この事件は複雑な大人の事情が絡み合った感じになってきたな。塩谷教授の殺害は計画的だったのに、能代さんの登場で犯人は第二の殺人をせざるを得なくなった。
 藍の言葉で、能代さんは犯人に思い当たった。そしれそれはビンゴだったわけだ。

 ――――殺害があったのが5時から5時半までの間と知り、気付いたのだろうな。

 その時間に塩谷ゼミの部屋に向かう人物を見た。それからあの教授の悪趣味な隠しフォルダだ。能代はパソコンやネットにも詳しい人だったから、ちゃっかりあのフォルダにアクセスしていた。
 そこに、美少年以外のなにかが入っていたのかもしれない。

 ――――まあ、これは俺の妄想でしかないな。どこかで田代さんでも捕まえて聞き出すかな。まさか、大学生探偵とかいってコンサルできるわけじゃないしな。

 そこでなんだか俺はおかしくなって、自分で笑ってしまった。まるで小説のキャラにでもなったみたいだ。人が二人も亡くなっているというのに、不謹慎極まりないな。
 


 そんなある日、土木科で防音をテーマに研究してた奴から連絡をもらった。例の録音データの解析が終ったとのことだ。
 忙しいなか、時間を割いてくれて感謝だよっ。俺は手土産にそいつの好物であるドーナツを買って研究室に向かった。

「竜崎の依頼通りにやっといたぞ。おっ、ドーナツ、サンキュ!」

 USBとの交換にそいつはウキウキとドーナツを受け取る。

「それって、あの事件直後のデータだろ? 臨場感があってドラマみたいで面白かったよ」
「楽しんでくれたなら良かった。けど、内容は事件解決まで内緒にしててくれよな」
「わかってるよ。でも……おまえが美山を好きだってのは言っていい?」
「ああっ?」

 ドーナツを貪りながら、何を言い出すんだこいつは。

「俺がいつそんなこと言ったんだよっ。アホかっ」

 俺もこのデータを2回再生して聞いている。どう聞いたってそんな話は出てこないし(第一これは殺人現場だ)、藍は大事な友人だけど、好きとか考えたことはない……と思う。

「え? なんだ……いや、ごめん。気のせいだったか」

 なんだかあっさり引き下がられた。いや、まあいいんだけど。



 そんなやり取りがあったからか、俺はあいつのバイト先まで迎えに行った。なんとなく気になったんだ。
 俺の帰り道から考えれば『わざわざ』行ったことになる。自分でもなんでこんなことしてんのか意味不明だ。
 でも、そのふんわりした俺の気持ちを藍は全く気付きもしない。

「そうか、なにか話があるんだよね?」

 なんて言う始末。その『なにか』は、もちろん事件のことについてだ。別に改めて藍に話すことはないんだけどな。俺自身の録音データの分析はまだ途中だし。
 とはいえ、そう言われてしまうと話すしかない。俺は今のところで考えてることを藍に話して聞かせた。なのに……。

「自慢じゃないけど、僕、竜崎の考えてること、ぜんっぜんわかんない」

 なんて言われる始末に……。俺はちょっと意地悪したい気分になってしまった。こんなこと、今までなかったことなのに。味わったことのない感情。

『美山が好きだってのは言っていい?』

 甘いドーナツの匂いとともに、あいつの言葉が耳に再び過っていった。



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