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File No. 26 進展
しおりを挟む僕らはそのまま3時限目の講義に向かった。僕は入間教授のゼミだ。入間教授は塩谷教授より年は少し上。
なんだけど、生家がお金持ちなのか、〇クサスみたいな超高級車に乗っててスーツも趣味のいいオーダーだ。
それが板についてる感じなので塩谷教授より学部長に相応しいかも。そう言えば、今度の学部長選の有力候補だと土屋さんが言ってたな。
『土屋さんを揺さぶるって、まさか竜崎は土屋さんを疑ってるの?』
友達確認した後、僕は今さっきの土屋さん訪問の意図を竜崎に尋ねた。
『ん? いや、そういうわけではない。俺はあの日の教授のスケジュールが聞きたかったんだ。刑事には聞けないからね。けど土屋さん、それだけじゃなくて色々知ってそうだからさ』
などと言う。竜崎が知りたい教授のスケジュールとは、僕が呼び出された6時過ぎより前の話だ。
『5時には帰れ』は、能代さんからも聞いていたので、5時から6時までに誰かと会う予定があったのではないかと竜崎は考えたようだ。
ただ、その答えは。
『スケジュールは空白だったわよ。人払いの時間? そんなの知らないわ。とにかく言われた時間以降は翌朝までゼミ室には行かないから。ああ、そのとおり、最後に見た時は死体と一緒であの白シャツにネクタイだった』
と言われて終わりだった。僕は竜崎がなにを狙ってるのか、なにがわかってるのかさっぱりだけど、今回の土屋さん訪問は、それなりに収穫はあったように感じた。別れ際の笑みは土屋さんに対したような作られたものではなかったから。
それから10日ほど、5月の連休が始まる直前まで、事件の真相も僕と竜崎の関係も大きな進展はなかった。
事件の真相いついては警察が進めてるかもだけど、当然僕らにはなんの目新しい情報も入ってはこなかった。もちろん、誰かを逮捕したなんてことはない。
時々、風見さんや田代さんの姿を見かけたけど、僕のことはもう誰かも忘れたみたいに無視された。いや、不満なんかはない。注目されるよりずっといいからね。
でも、竜崎が色々気になることを彼らに伝えたのに、それについて結果を知らせるつもりが全く見られないのはどうなんだろう。竜崎に聞いたけど、あれ以来、風見さんたちと話してないと言う。
「なにもないってことは、お門違いだったのかもな」
連休前の火曜日の学食で、竜崎はこともなげに言う。別に不満そうでもない。
「そうかなあ。なんかわかってもちゃっかり自分の手柄にしてるんじゃない?」
なんて少し口を尖らせてみせる。
「え? はは。まあ、そういうのあっても驚かないが。ちょっとその仕草、可愛すぎるぞ」
竜崎の人差し指の腹が、僕の唇近くまで迫って来た。
――――うおおおおっ!
と、思わず寄り目になる僕。その様子にくくっと笑い出す竜崎。そっちだってあざといよ。
でも、ちょっと嬉しかった。可愛いって言われるの嫌だったけど、竜崎になら嬉しいかも。
もしかしてこれは少しは進展したってことか? と、僕は午後の講義もその後のバイトもずっと足元が地に着かない感じでフワフワしてた。
けれど……それは束の間の平穏だった。連休初日の金曜日、予想もつかない、しかも僕には寝耳に水の出来事が降りかかってきたんだ。
夜のバイトが終わって、エプロンをロッカーに仕舞ってすぐのこと。僕はまた、奈落の底に突き落とされた。
『ピラミッドのキーホルダー、教授の遺体の横に落ちていた』
見覚えのないアドレスから、身に覚えのないメールが届いたからだ。
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