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File No. 11 怒りの炎
しおりを挟む狭い部屋の中、竜崎は一つ唸っただけで黙り込んでしまった。眉間の皺が有り得ないほど深くなってる。痕が付いてしまわないか、僕は妙なことが気になった。
恐らく全てを話し終えたと思う。あの、教授に迫られてたところは、さすがに詳細には話せなかったけれど。
時刻はもう2時に近い。竜崎は午後が休講になったと言っていたが、本当だろうか。それにもうすぐ4時限めが始まる。僕は元より今日の講義は受けられそうになかったからどうでもいいけど、なにか言わないと。
「あの……」
「許せねえ」
僕が口を開いたのと同時に、竜崎が呻くようにそう吐いた。その隠しようのない迫力に僕は思わず上半身を仰け反らせた。
「か……体とか、触られたのか? あ、いや。答えなくてもいい」
直球で聞かれて、僕は慌てる。さすがに視線はそらせてたけど、答えづらいよ。特に竜崎には。でも……。
「うん……少し。自分でも抵抗できなくて情けなかったけど……体がうまく動かせなくて」
「いいんだ! そんなの仕方ない。ああいう連中はそういうのわかっててやってくるんだから。情けなくなんてない」
今度は驚くほど大きな声で叫んだ。竜崎は怒り心頭というか、目が殺気立ってる。
「でも、そんな酷いことはされてないよ。今のところはだけど」
そんな言い訳は不要だったかもしれない。でも耳にキスされたことなんか言ったら、暴れそうに感じた僕は、そう言い足した。
今のところは、というのは僕の正直な心情だ。次はどうなるかわからない。抵抗できると思っていても、巧妙な罠を仕掛けくるかもしれない。どう考えても、あいつは強者で僕は弱者なんだ。
「藍。呼び出されたのは土曜日だな」
「う、うん」
「俺も一緒に行くから」
「え……でも。そんなわけには」
もちろんその申し出はどんなに僕を安心させたか。でも、それは竜崎に迷惑がかかることだし、教授の命令通りでもない。聞いたら黙っておれないのが竜崎の性格だとわかっていたけど、そこまではさせられない。
「いいんだ。俺に計画がある。土曜日、バイト先まで迎えに行くからな。絶対だぞ」
強い調子で竜崎が吠える。大きな両手のひらで僕の両腕を取ると、グッと引き寄せられた。思わず『ひゃっ』と声が出てしまった。
「藍にそんな非道なことをする奴、俺は絶対許さないからな。心配するな。グウの音も出ないようにしてやる」
1センチもない距離で、竜崎が言う。もう鼻と鼻がこすれ合うくらいの近さだ。けど、僕の目に映った彼の双眸は真剣そのもの。怒りの炎まで湛えているように見えた。
「うん。あ、ありがとう」
僕はそのまま竜崎に抱き着きたかった。多分それは不自然ではないチャンスだったようにも思う。
けれど、僕のことを心底心配し、本気でこの事態に怒ってくれている竜崎に、失礼このうえない行為だと自重した。彼の両腕に手を置き、僕はゆっくりと体を離す。それから座りなおして頭を下げた。
「よろしくお願いします」
と言って。
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