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番外編 男たちの野望 ~祥を取り巻く男達の実情を描く!~

エピソード2 美原の気持ち

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 何か趣味を持ちたい。料理なんかどうだろう。黙っていても依頼が矢のように降ってくる。そんな大手弁護士事務所で働いて早7年。忙しさにかまけて趣味らしきものが何もない。僕は生活に潤いを持たすためにもとそう考えた。

 ふと立ち寄った書店で僕はある料理本を手に取った。表紙を飾る男性に惹かれたのだ。
 料理研究家、城山祥。僕は一目で恋に落ちた。


 物凄い倍率を勝ち抜き、先生が新しく始めた『男性限定料理教室』の生徒になれたのは、僕の人生イチの幸運だった。これを何とか活かして先生の気持ちをゲットしたい!

 それにしても、先生の実物は写真の何倍も可愛い! 城山先生の笑顔を見ていると、どんな嫌なクライアントでも難題山積みの案件でもドンと来いと思えてしまう。僕の活力であり癒しだ。いや、女神だ! あ、男だった。

「先生、じゃがいもは男爵とメークイン、どっちがいいですか?」

 同じ班の鹿島だ。刑事だというが、それらしくいい体してるし、彫の深い二枚目だ。はっきり言って、こいつは先生に気がある。見てればわかる。
 それともう一つの調理台にいる沢城って言う奴。やたら先生に馴れ馴れしくてムカつく。多分こいつも隙あらばって狙ってるんだ。

 先生はどう思ってるんだろう。他の妻帯者はともかく、この3人に対する先生の態度は明らかに違う。僕もその中に入っていると信じたいが、ホントのところはどうだろう。


 積極的に行きたい気持ちもあるが、実は僕にはどうしようもない性癖がある。性癖というか、発作というか……。スイッチが入ると、性格が変わってしまう。
 いつもは温和で礼儀正しい紳士。これこそ本当の僕だ。それなのに、突如野獣のようになってしまうのだ。口汚く罵り、荒々しく攻めてしまう……。
 それよりもっと困るのは、途中でそれに気づき、紳士に戻ってしまうことだ。やるなら最後までやればいいのに、なんでか中途半端!

 だから、先生においそれと迫ることも出来ず、二の足を踏んでいた。そしたら! あの鹿島の野郎、どうやら先生と何かあったようだ。先を越された! その気持ちが僕を危険な賭けに出させた。


 先生の前で豹変しないよう気持ちの高ぶりを抑え、紳士な僕のままで何とか告白をした。先生は真っ赤になって僕を見ていた。その可愛さと言ったら、天使か! 
 よくぞ入れなかったスイッチ。僕は自分の自制心を誇りに思った。だが、運命は僕に冷たかった。その翌週、僕に悲劇が襲った。



 その日、鹿島の奴は休みだった。事件かなんか知らんが、先生の教室を休むなんて不届きな奴だ。あんなに先生が寂しそうじゃないか! 
 そうだ。先生はとても寂しそうだった。僕は完敗を認めた。告白の幕引きをしなければ。そう思った僕は先生と話をすることにした。それが間違いだったんだな。


「ごめんなさい」

 レッスン後、僕は先生と二人きりの時間を作ってもらった。でも聞けたのは、告白に対する悲しい返事。わかってたけど、ショックだった。心で号泣しながら玄関に向かう。

 その時、なんの因果か突然停電した。真っ暗になった廊下。僕は胸騒ぎがした。ヤバい! これはヤバい状況だ。そして追い打ちの一言が。

「美原さん、大丈夫ですか?」

 先生の心配そうな声。駄目だ……。もう、我慢できない。

「なんで、停電なんかするんだよっ!」

 僕はすぐ後ろに先生がいることを知っていた。むんずと先生の両腕を掴むと壁に押し付けた。

「えっ? な……」

 先生の言葉を飲み込むように僕は唇を襲う。舌でかき回しながら、先生のシャツのボタンを手探りで外しにかかる。先生はそうはさせじと頑張ってたけど、僕はこうなると止まらない。
 引き千切る勢いでシャツをはだけさせると、首筋や鎖骨に唇を這わす。先生の抵抗が弱くなった。

 ――――もしかして……このまま……

 そう思った時だった。ライトが点灯した……。

 元々、相手が受け入れちゃうと、僕の野獣スイッチは切れてしまう。先生が手を緩めたところで THE END だったんだ。

 僕は平謝りし、逃げるように帰った。それにしても、先生、その気になれば落とせちゃうんじゃないだろうか。
 ワンチャンあるかも。なんて思う僕だった。







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