33 / 36
番外編 男たちの野望 ~祥を取り巻く男達の実情を描く!~
エピソード2 美原の気持ち
しおりを挟む何か趣味を持ちたい。料理なんかどうだろう。黙っていても依頼が矢のように降ってくる。そんな大手弁護士事務所で働いて早7年。忙しさにかまけて趣味らしきものが何もない。僕は生活に潤いを持たすためにもとそう考えた。
ふと立ち寄った書店で僕はある料理本を手に取った。表紙を飾る男性に惹かれたのだ。
料理研究家、城山祥。僕は一目で恋に落ちた。
物凄い倍率を勝ち抜き、先生が新しく始めた『男性限定料理教室』の生徒になれたのは、僕の人生イチの幸運だった。これを何とか活かして先生の気持ちをゲットしたい!
それにしても、先生の実物は写真の何倍も可愛い! 城山先生の笑顔を見ていると、どんな嫌なクライアントでも難題山積みの案件でもドンと来いと思えてしまう。僕の活力であり癒しだ。いや、女神だ! あ、男だった。
「先生、じゃがいもは男爵とメークイン、どっちがいいですか?」
同じ班の鹿島だ。刑事だというが、それらしくいい体してるし、彫の深い二枚目だ。はっきり言って、こいつは先生に気がある。見てればわかる。
それともう一つの調理台にいる沢城って言う奴。やたら先生に馴れ馴れしくてムカつく。多分こいつも隙あらばって狙ってるんだ。
先生はどう思ってるんだろう。他の妻帯者はともかく、この3人に対する先生の態度は明らかに違う。僕もその中に入っていると信じたいが、ホントのところはどうだろう。
積極的に行きたい気持ちもあるが、実は僕にはどうしようもない性癖がある。性癖というか、発作というか……。スイッチが入ると、性格が変わってしまう。
いつもは温和で礼儀正しい紳士。これこそ本当の僕だ。それなのに、突如野獣のようになってしまうのだ。口汚く罵り、荒々しく攻めてしまう……。
それよりもっと困るのは、途中でそれに気づき、紳士に戻ってしまうことだ。やるなら最後までやればいいのに、なんでか中途半端!
だから、先生においそれと迫ることも出来ず、二の足を踏んでいた。そしたら! あの鹿島の野郎、どうやら先生と何かあったようだ。先を越された! その気持ちが僕を危険な賭けに出させた。
先生の前で豹変しないよう気持ちの高ぶりを抑え、紳士な僕のままで何とか告白をした。先生は真っ赤になって僕を見ていた。その可愛さと言ったら、天使か!
よくぞ入れなかったスイッチ。僕は自分の自制心を誇りに思った。だが、運命は僕に冷たかった。その翌週、僕に悲劇が襲った。
その日、鹿島の奴は休みだった。事件かなんか知らんが、先生の教室を休むなんて不届きな奴だ。あんなに先生が寂しそうじゃないか!
そうだ。先生はとても寂しそうだった。僕は完敗を認めた。告白の幕引きをしなければ。そう思った僕は先生と話をすることにした。それが間違いだったんだな。
「ごめんなさい」
レッスン後、僕は先生と二人きりの時間を作ってもらった。でも聞けたのは、告白に対する悲しい返事。わかってたけど、ショックだった。心で号泣しながら玄関に向かう。
その時、なんの因果か突然停電した。真っ暗になった廊下。僕は胸騒ぎがした。ヤバい! これはヤバい状況だ。そして追い打ちの一言が。
「美原さん、大丈夫ですか?」
先生の心配そうな声。駄目だ……。もう、我慢できない。
「なんで、停電なんかするんだよっ!」
僕はすぐ後ろに先生がいることを知っていた。むんずと先生の両腕を掴むと壁に押し付けた。
「えっ? な……」
先生の言葉を飲み込むように僕は唇を襲う。舌でかき回しながら、先生のシャツのボタンを手探りで外しにかかる。先生はそうはさせじと頑張ってたけど、僕はこうなると止まらない。
引き千切る勢いでシャツをはだけさせると、首筋や鎖骨に唇を這わす。先生の抵抗が弱くなった。
――――もしかして……このまま……
そう思った時だった。ライトが点灯した……。
元々、相手が受け入れちゃうと、僕の野獣スイッチは切れてしまう。先生が手を緩めたところで THE END だったんだ。
僕は平謝りし、逃げるように帰った。それにしても、先生、その気になれば落とせちゃうんじゃないだろうか。
ワンチャンあるかも。なんて思う僕だった。
0
お気に入りに追加
44
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる